百二十話:スケスケのほうが裸体を見るより興奮するといったな? だがそれは嘘だ!
「はぁ……気持ちいぃ……」
「……」
薄いお風呂用カーテンにミサの影が移る。
上の隙間からシャワーホースを使って人力シャワーを浴びている。
さすがにお湯を沸かすのは面倒だったから水だが、最近は気温も上がってきているので問題ない。
それゆえに乙女の汗のにおい問題が発生したのだが。
俺はバトラータキシードのおかげか常に快適である。
常時『清潔』と『適温』の魔法でもかかっているような感じだ。
まぁ温泉には入りたいのだが。
あのとろけるような至福感にはかてない。
「ふぅぅ……」
グシャグシャと結構勢いよく頭を洗っていたミサ。
なんか女子のイメージとして優しく洗うのかとおもったが、そんなことはないらしい。
まぁ人によるか。
シャワーがカーテン側にあり勢いが弱いので濡れている。
近くによって浴びているのでスケスケです。
なぜだろう。
裸体をみるよりも興奮する。
「ありがと、そろそろ出るね?」
「うむ」
カーテンの端から顔をだしたミサ。 短いポニテを解いて濡れた髪がペタリとくっついている。
拝借した白いバスタオルを渡してやる。
「シ、鬼頭もシャワー浴びる? ……もつよ?」
せっかくシャワーを浴びたのに重たいポリタンクを持って立っていたら汗だくになるぞ。
あと身長が足りないからカーテン使えないし。
なんかいけない格好で水浴びする絵が幻視できた。
「あー……柔らかいベッド、久しぶり……」
今俺たちは結構な高級ホテルにいた。
魚頭狩りを早めに切り上げて少し休憩だ。
中継拠点を潰すのを止めたので食料探しとミサの汗のにおい対策だ。
俺的には別に気にならなかったのだが、さすがに2日間汗だくのにおいは乙女のプライドが許さなかったらしい。
東雲東高校やお嬢様学校にいっても良かったのだが、なんとなく面倒になりそうでやめた。
『闘争地域』
この辺りはどこの支配地域にもなっていないようだ。
ちょうど三勢力がぶつかり合って外れた場所のよう。
入り口で戦闘の跡があったから、なにかしらはあったようだけど。
上の階の方は無事だった。
客や従業員は避難したようで入り口も施錠されており屋上から失礼する形になった。
シャワーは出なかったが、屋上の貯水槽に水を入れれば使えるようになるかも。
まだ外は明るく電気の点かない部屋でも明るい。
落ち着いた内装、それでいて高級感はある。
ちょっと大人な部屋だ。
ベッドは二つ。
一つにゴロンと横になったミサ。
バスタオルを巻いただけ。
引き締まってそれでいて女性特有の柔らかさのある太ももが露わになっている。
「ふにゃぁ……」
ミサは最初のころに比べてだいぶ警戒心がなくなった。皆無といってもいい。
チラリとバスタオルの隙間から日焼けしていないうちももが見える。
えろい。
お気に入りのチョコ羊羹の非常食を食べてだらけている。
小さいのに一つ200キロカローの優れもの。 しかも美味しい。
肉体的にも精神的にも癒してくれる。
(さすがに無茶だったな)
なにかに取りつかれたように狩りをしなければと思っていたが、少し冷静になれた。
ガチャの魔力が高すぎる。
いや排出率UPの魔力か。
祝福といいつつ神々なら試練を与えかねん。
「ぅ……ん……」
ベッドから吐息が聞こえてきた。
枕に横向きで寝ているミサ。 ベッドの柔らかさに勝てなかったか。 まあ普通に徹夜してたせいだろうけど。
しかしバスタオル一枚で男の前で寝るとは良くないぞ。
紳士の中の紳士である俺じゃなかったら、美味しくいただかれている。
「んん……」
「……」
横向きから寝返ったミサ。
仰向けではだけたバスタオルから見えてはいけないスジが見えている。
薄い毛は守ってくれない。
日焼けした肌と白い肌のコントラストにピンク色のラインが光る。
「ビークール……」
理性を失う前に俺はメタルマジックハンドでバスタオルを戻した。
誰だ?
スケスケのほうが裸体より興奮するとかいってたのは?
チラ見えが一番エロいよ!
(はぁ……ガチャ回すか)
溜め過ぎは良くない。
適度に発散しておかないと暴走する。
ガチャ欲も解消しておいたほうがいいだろう。
ここらで少し回させていただく。
ミサが起きるまで狩りにいけないしね。
「黒のガチャ」
一回100魂魄。
すでに保有魂魄は2万ポイントを超えている。
200回はガチャれるぞ!
「ハァアアアアアアアア――――セィッ!!」
気合を入れガチャをタップする。
あまりにも気合が入っているせいか、風圧でミサのバスタオルが捲れそうになった。
ちなみにベッドは二つあり隣のベッドでガチャをしている。
「おお!」
いきなりキタ!
黒のガチャの筐体がガタガタと揺れて力を溜め込むようなエフェクトを発生させている。
R以上確定。
さらにどこからか出てきた黒い羽根が舞い散る。
SR以上確定!
「SRか!」
排出された黒いカプセルを、イケメンシャム猫さんが高速の剣技で一閃。
打倒死神を果たしたその剣に狂いはない。
「なに!?」
SRランクのアイテムのはずだが、俺の体に粒子となって纏わりつかない。
つまり具現化されたアイテム。
しかもこれは……ポーション?
ベッドの上に現れたソレは、緻密な意匠の施されたガラス瓶に紫色に輝く液体が揺れている。
むぅ、まさかほんとうに、巨乳薬でも出たか?
わからない。
猫の手で見てもらうまでマジック手甲に入れておこう。
「ふぅ……」
さて後199回は引けるぞ。
神々の祝福、SR以上排出率UP(3日)の恩恵をいきなり引いてしまったが、本命はUR。
SR排出率5倍、SSR排出率10倍、そしてUR排出率50倍ッ!
この神の奇跡を逃すわけにはいかないぞ!
気合だ。
気合を籠めろッ!
「カァアアアアアアアアア!」
ガチャをタップする指先を額に当て集中する。
「ハァッッ!!」
全身全霊の一撃だ!
黒のガチャをタップすると同時に、ミサのバスタオルがはだけた。
「おおおお!」
2連続。
R以上確定演出。
さらに続くSR以上確定演出!
「きたっ! きたっ!」
と、テンションぶち上っていたら、冷めた目のミサと目が合った。
顔を真っ赤に頬を膨らませて怒っているようである。
寝てるのに騒がしくしたからですかね?
「……えっち!」
さっとバスタオルを直してミサが枕を投げつけようとしたとき、黒い稲妻が奔りカプセルが激しく鳴動しはじめた。
これは!?
SSRランクが出たか!
「ふぅえ!?」
「ん!?」
シャム猫さんが斬る前にカプセルが弾けた。
さらに黒い光の粒子は俺ではなくミサへと向かっていく。
そしてその体へと纏わりつく。
「なにっ、なにっコレ!?」
突然のことに慌てて立ち上がるミサ。
バスタオルが落ちるが、残念ながら黒い粒子でその裸体は見えない。
というか黒い粒子が見えているのか?
「「……」」
黒い粒子は役目を終えて消えていく。
ベッドの上で呆然と自分の体を見渡すミサは黒いバトルスーツに包まれていた。
体のフォルムにピッタリとあったSFチックなバトルスーツ。 ヘルムの形が兎のような耳をしているのが特徴だ。 背の部分にもジェットで飛びそうなギミックがある。 ブーツの形がオシャレさんなんですけど?
そして彼女が動くと青白くラインが浮き上がる。
はっきり言って……めちゃくちゃカッコイイッ!!
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