百十九話:


 昔好きだった無双ゲームシリーズを思い出した。

 迫りくる圧倒的な数の雑魚を、三国武将でなぎ倒していくのだ。

 リアル無双ゲー状態。

 何百体撃破!みたいなテロップが流れている頃だ。

 

「増援か」


 どこからか別動隊が来たようでシャーマンが2体になった。

 魚人怪物も数体追加されたが、問題ない。

 魚頭? ただの魂魄ポイントです。 ありがとうございます。

 こいつら脳みそ入ってるんだろうか。 

 じゃんじゃん魂魄と魔石とドロップアイテムが量産さていく。

 ああ。

 MMOの狩りをしている気分だ。

 つまり最高だよねってこと。


「だ、大丈夫なの?」


 ミサも慣れてきたのか、ひょっこりと顔を出して覗いている。

 背中で感じていた心音も落ち着いておりパニック状態からは抜け出たようだ。

 

「うむ」


「うわぁ……また増えた?」


 行ったことないけど、コミケ会場ってこんな感じなんだろうか。

 実際この物量は脅威だ。

 魚頭の決死の突撃も厄介だし、矛骨の投擲もたくさん飛んでくる。

 普通の装備だったら盾がもたないだろうな。

 普通の装備だったらだが。

 『エポノセロス』で攻撃するとエネルギーを蓄えられるんだが、ジャストガードしても溜まる。

 パリィよりもジャスガのほうがいいようだ。


「バッグに入りきらないわよ?」


 無数に転がった魔石とドロップアイテム。

 塵も積もれば山となる。

 白から出たマジックバッグでは入りきらないか。

 黒のガチャの手甲も量は入らない。 使いやすい便利タイプ。

 大容量のマジックバッグが欲しい。

 ガチャに期待だ。

 はぁガチャしたい。

 ガチャガチャガチャ。


「ん?」


 魚頭の召喚が途切れた。

 無限に召喚できるわけではないのか?

 でもかれこれ3時間は戦ってたと思う。

 普通はそんな持久戦しないだろうな。


「え、集めるの? 襲われない?」


「護る」


「んっ、そ、わかったわ、任せて!」


 未だ奥で金色の三叉槍をもったシャーマンは健在だ。

 正直倒そうと思えば倒せると思う。

 魔晶石もほしい。

 しかしまだ後一日あるのだ。

 今この3時間でいったいどれだけの魂魄を稼げただろうか?


 1万ポイントを超えている!!

 今日の目標の3分の2を稼いでしまった。


 今あいつらを生かしておけば明日も稼げるのではないだろうか?


「く、く、く」


「笑い方ぁ!?」


 旨すぎて笑わずにはいられないぞ。



◇◆◇



 『最下位』のネオンライトが明滅する魔王の自室。


「ナンダト!」


 そこには悩める魔王『千棘のマーマンロード』が部下である金色の三叉槍を持った三つ目の魚頭から報告を受けていた。

 それなりのリソースを持って召喚したマーマン部隊の中核、マーマンシャーマン。

 それなりの知能を持っており水中戦を得意とする魔物だ。

 本来は沼地の深い部分に潜伏し召喚とデバフで敵を追い詰める召喚タイプである。

 地上では能力が半減している。


「嗤ウ者」


 雑魚しかいないと思っていた獲物の中に強者がいる。

 それも厄介なことに範囲狩りを得意とするようだ。

 

「ハイマーマンヲ、タオスカ……」


 神駆のいうところの魚人怪物、ハイマーマン。

 マーマンの物理型進化種で陸地での戦闘も得意とするコスパの良い魔物だ。

 『千棘のマーマンロード』の戦略ではハイマーマンで牙城を崩しマーマンたちで占拠しマーマンシャーマンで防衛をするプランだった。

 ある程度リソースが溜まれば領地を沼地化し盤石のものとする。

 隣接する脅威、ケルベロスに対して一番刺さると考えていたのだが……。

 リソースが想定していたよりも獲得できていない。


 そして今、その元凶が判明した。


「……コロス」


 泥リとした殺意が漏れる。

 

「コロスコロスコロス」


 もしこの場を離れられたなら、単身敵へと突っ込んでいただろう。

 だができない。

 制約が魔王を縛る。


「ギコココココ……ザンギ、ユケ。 切リ刻メッッ!」


「ギョイ」


 魔王の命に従い。

 側に控えていた歪な魚頭の怪物が放たれた。


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