百十八話:バグ利用じゃないよ、仕様だよ


 『エポノセロス』を装備し『メタルマジックハンド』で背中のミサを固定する。

 小物を入れられるマジック手甲にはカード類とポーションを収納。

 『ヴォルフガング』と『ヴォルフライザー』を装備し、『バトラータキシード』と『ガードドッグイヤー』(浸食状態)も装備している。

 さらに要の『ブラックホーンリア』でガチャ産フル装備だ。


「ギコ!」

「キカゥウ!」


 そろそろバトラータキシードを交換したいな。

 これ普段使いは最高なんだけど、そこまで戦闘性能はよくない気がする。

 自動修復、消臭抗菌、なんだか器用さも上がっていると思う。 他にも機能がついてるかもしれないが、結構大破させられているから防御面が心配なんだよね。

 まぁタキシードだしな。


「「ギコォ!?」」


 うーん、だいぶアイテムも溜まってきた。

 どこかで整理がしたい。まだ試していない装備もあるし、なんだかよくわからないアイテムもある。 

 なによりコレクター品は飾りたい派だ。

 専用の棚とか作って飾っておきたい。

 魂魄と紐づけされているらしいから難しいか。


「「「キコォ!」」」


 骨矛の投擲。

 『エポノセロス』の防御は突破できない。

 カウンターで衝撃拳を飛ばす。

 魚頭、棘つき、魚人怪物。 あいかわらず攻撃特化の魔物ばかりだ。

 ただ祭壇のところに金色の三叉槍を持った3つ目の魚頭がいる。

 長い頭髪が不自然に宙に浮いている。 わかめというか海藻のような髪の毛。

 あんまり近接が得意そうには見えない。 ひょろひょろの体躯だ。 シャーマンタイプかな?


「ふむ?」


 3つ目魚人の側にある池から魚頭が出てくる。

 召喚しているのか?

 手に持っている金色の三叉槍が僅かに緑色に光っていた。

 拠点の機能と合わさってか凄い数の魚頭が召喚されている。 そもそも集まっていた数も多かったしな。

 ひょっとしたらだが、服部先輩たちがこの近くを攻略したばかりなので防衛に集中していたのかもしれない。


 まぁ逆にラッキーなんだが。


 広い場所での対多数戦。 物量で押し殺そうとする相手。

 今の俺が一番得意とする戦場ですがなにか?


「ボーナスステージ」


 キタコレ。

 召喚モブからも魂魄回収できるとか、運営さん大丈夫ですか?

 ゲームだったら即修正がきそうだが、ゲームじゃないからいいよね。

 バグ利用でBANとかされないかしら。 


「ふはっ!」


 悪いがしゃぶりつくさせてもらうぜ。

 魚頭たちがやってきたことを考えれば一切遠慮する必要はない。

 尻毛までむしり取ってやるよ!



◇◆◇



 『千棘のマーマンロード支配地域』。

 名前にある通り、マーマンロードが支配する地域である。

 千棘の二つ名を与えられたマーマンロードの魔王だ。

 異世界では沼地に小領地を持つ弱小の魔王。

 黒の魔皇帝が作ったtier表ではEランク。

 残念ながら下から2番目となる。 ただし沼地であればDランクと注釈がついている。


「ナゼダ?」


 『千棘のマーマンロード』は苛立っていた。

 魔皇帝位争奪戦が開始されてから思うようにいかないからだ。

 まずランダム決定された初期地点。 沼地ではなく平地。 近場に水源はあるが地面は固く水はけがよい。 適しているとはいいずらい。


「ワレガ……最下位?」


 黒の魔皇帝ランキング。

 ただただ煽る為だけに存在するようなそのランキング表はリアルタイムに更新されていく。

 討伐数、領地拡大、保有リソースなど様々な要因で変動する、言わば戦力値ランキングだ。 『千棘のマーマンロード』のランクは現在666位。

 魔皇帝位争奪戦に参加した魔王の数と一緒である。

 つまりドベの最下位だ。


「ギココココココ……」


 屈辱。

 歯茎を剥き出しにギザギザの歯を鳴らす『千棘のマーマンロード』。

 魔王に与えられた自室に『最下位』と大きく明滅するネオンライトが光る。


 いっそ自ら戦場に駆け敵を屠れればどれだけ楽だろうか。

 脳筋の魔王は制約に縛られ本領を発揮できない。

 部族の戦闘に立ち圧倒的強さを見せつける魔王の戦いは始まらない。


 祭りは序盤。

 今は力を蓄える時である。

 自分よりも強い魔王へと対抗するためにも、多くの眷属を召喚し領地を増やし強化することが最優先。

 だというのに……。


「ナゼダ?」


 眷属は敗れ貴重な魔結晶までもが奪われた。

 原因がわからない。 対処ができない。

 その停滞は致命的だ。


 狩る者のはずの魔王は、依然として狩られ続けているのだから。




―――――――――――――――




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