百話:


 カツアゲなんていつ以来だろうか?


「なぁ兄ちゃん。 その装備くれねぇかぁ?」


「……」


 昔はよくされた。

 まあ吹っ切れてからは全部返り討ちにしたけどね。

 ひょっとしてあれかな、ガードドッグイヤーが浸食されたせいで軟派イケメンぽいからナメラレテルノカナ?

 社会のゴミ《ガラの悪い輩》10人くらいに囲まれて装備を寄越せと脅されているんだが。


「なあ? どうなんだぁ、ああ゛?」


 笑わせようとしているのかな?

 にらめっこだったら負けてたわ。

 バールやら金属バットを持って囲っているけど、ヴォルフライザーの射程範囲だからね。

 自殺志願者なんだろうか。


「……」


 後ろからさっきの二人も追いかけてきている。

 挟み撃ち……グルだったのか?

 タイプ的には違いそうだけど。

 どうしようかな。 ブラックホーンリアでいつでも逃げられるけど、逃げたと思われるのも嫌だなぁ。 かといって殺すわけにもいかないし。 力が上がりすぎて半殺しの加減が難しい。

 

「おい! なにやってんだよっ!」


「ちっ、……なにって話し会いだぁ。装備を交換してくれねぇかってなああ゛?」


「こんな時まで恥ずかしくないの?」


「ああ゛ッ!?」


「……」


 仲間同士という雰囲気ではなさそうだ。

 もしこれが演技ならたいしたものだが。

 俺を間に挟んで一触即発。

 いやぁ人が多いと変なのが多くて嫌になるね。

 自衛隊員さんはちゃんと教育してください。

 

「あ゛? なにいこうとっ!?」


 無駄な時間なので無視して行くことにした。

 顔芸がすごい『あ゛』の人が止めようと正面から手を突き出してくるが無視だ。

 無人の野を行くがごとく突き進む。


「あ゛あ゛っ!? お、おせっ、押せええええええ!!」


 押し込まれる自分を押すように命じた『あ゛』の人。

 囲っていた奴らは『あ゛』の人の背中を押す。

 俺はかまわず突き進む。


「はあ゛!? かあっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」


 前と後ろから押しつぶされる『あ゛』の人。

 後ろから押してるやつらは必至すぎて『あ゛』の人が圧死しそうになっているのに気づいていない。 胸板で圧死されたら怖いね。  

 俺はサッと横に避けた。

 急に片方の力が抜けアスファルトに顔面からダイブした『あ゛』の人の上に人がなだれ込む。

 立っている何人かと目が合うがその顔は理解不能への恐怖で埋め尽くされていた。 


「……」


 気を取り直してバード狩りに行こうと思ったら、後ろからまだ二人ついてきている。

 最初に質問してきた男女だ。

 『あ゛』の人の仲間ではなさそうだけど。

 いつまでついてくるんだろう。

 屋根上パルクールしたら一瞬で撒けるんだろうけどね。

 超大型を倒した影響か、この辺りには魔物はいなそうだ。

 

「なあ、頼む! 俺たちも連れて行ってくれ! たの、お願いします!」


「お願いします」


 二人もいたら帰るのが遅れちゃうなぁ。

 かといって置いていったらさっきの奴らに絡まれるだろうな。

 たぶんあいつらのバットとバールをパクってきてるし。

 なかなかやるね!

 なんかやる気はあるみたいだし、東雲東高校の戦力強化も必須だしね。

 屋根上パルクールで撒くのはやめてあげようかな。


「うむ」


「よっしゃあ!」


 嬉しそうにされるのは悪い気がしないね。

 お姉さんはなんでそんなクールなんでしょう?

 目がガチで怖いですよ。

 三白眼っていうんだけっけ?目力強い系の女優みたい。

 お兄さんの方は今どきの大学生(陽キャ)って感じ。

 どちらも若くて運動ができそうな感じ。

 なかなか良さそうな二人だ。

 東雲東高校なら貴重な戦力になってくれそうだな。 

 駐屯地の将来の戦力を奪っちゃって申し訳ない。 自分のカリスマが怖い。


 はっ!? これってひょっとしてヘッドハンティングってやつでは!


 駐屯地で余らせている貴重な戦力を根こそぎ奪うか。


「くっ、くはは」


「え、なになにっ!?」


「……」


 余らせてるほうが悪いよね?

 

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