九十八話:

 

「どうすればそんなに強くなれるんですかっ!?」


 拍手の嵐のあとは質問の嵐だった。

 だがご存じだろうか?

 俺は喋るのが苦手だ。

 残念なことに説明してくれるパーティーメンバーも不在である。


 ああ困った。


「食う」


「食べるんですか!? 何をどれだけ、どの程度の頻度ですか? やっぱり3時間おきくらいに?一日5食でしょうか? 糖類は摂取されますか? たんぱく質と脂質の割合は――――」


 うるせぇからドン!とママノエ瓶をテーブルに叩きつける。

 

「っ!? こ、これを食べるんですか!? なんですこの未知っ――――!?」


 ちなみにこの質問うぜぇのは女性隊員さんだ。

 目がクリクリしていてワンころみたいだ。

 ママノエ布教活動として10瓶をプレゼントしよう。

 1瓶10クレジットなので100クレジット程度だ。なんの問題もない。


「ほわぁあああああああ!?」


 嬉しそうでなにより。

 

「梅香がすまないな。 いつもああなんだ」

 

 いつもなんですね……。

 ご愁傷様です。


「しかし助かった。 あんな怪物が出るとは……。 集積場の件もそうだが、索敵の範囲も広げていかないとマズイな……」


 超大型はいつもいるわけじゃないのか、残念。

 アレがいっぱいいれば魂魄も魔結晶も集め放題なのに。

 普段はどんな魔物がでるんだろうか。

 猫の万屋の販売品を広げる為にドロップアイテム集めもいいかもしれない。

 

 魚頭でママノエ、野犬でワイルドジャーキー。

 お嬢様学校の方は腐った肉と紫芋虫が食用であったらしい。

 周辺の魔物が関係するとなると、アンデット系とゴブリン系か? 酷いな。

 

「ん? 普段は北からゴブリンと、南からバードだな。 あくまで呼称だがな」


 北だと東雲市街地のほうからゴブリンが流れてきてるのかな。

 あいつらには借りがあるからな。

 市街地戦用の装備を整えたら殲滅する。


 バード……鳥ってこと?


「鳥?」


「そうだ。 飛んでいるのはみたことがないが、羽をもっている。 大きなニワトリだな。 かなり好戦的で危険な怪物だ」


 鶏肉ってこと?

 ママノエとかゲテモノではなく、美味しい鶏肉ってことですか?

 猫の万屋では何が売っているのか気になるな!

 

「猫の万屋? ああ、神鳴館にいく途中にあったアレか……。 この辺りではみかけないな」


 そんなこともあるのか?

 あんなに目立つ見た目だからあればすぐにわかるだろう。

 まぁ探してみるのもいいか。


「……」


 しかし人が多いと色々な視線が飛んでくるね。

 好意的なものが多そうだけど。 俺は動物園のパンダじゃないぞ?

 全力で目をそらされていた頃に比べればマシだが、これは疲れるなぁ。

 アイドルになりたい人の気持ちが俺にはわからない。

 

 駐屯地も一通り見せてもらった。

 なんとなく不安な要素も見えるが、まぁ俺にはどうすることもできないし自衛隊員さんたちがなんとかするだろう。

 惨状の原因もわかったし、すこしバード狩りして帰ろうかな。

 

「帰るのか? ……鬼頭君に後で頼みがあるのだが」


 面倒ごとは勘弁なのですが……。

 どうにも嫌いになれないこの漢の人に頼まれてしまうと弱いな。

 失敗した時も励ましてくれたしなぁ。


「うむ」


「そうか! 助かるよ」


「す、すいません! コレはどうやって食べればよろしいでしょうか!? 味付けは!? 加熱は必要でしょうか!? なんで瓶詰めなのに生きているのでしょうッッ!?!?」


 おすすめはワサビ醤油だよ。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る