九十三話:賢者タイム
えーと、ドッグキャンデーがご禁制の品になりました。
麻薬とまではいかないけれど、どうにもこの状況下ではよろしくない成分が入っている、ということで。
あくまで東雲東高校で配るのはやめてほしいと、新垣先生や女性陣から言われたらしい服部に告げられる。
まぁ避難所生活中に男がムラムラしてたら治安的に嫌だよね。
「漲ってるな」
ブラックホーンリアの宝玉からかつてないほどにエネルギーを感じる。
昨夜は3人の処女から性エネルギーをたくさんゲットしたからだろう。
SPも十分あるので遠出もできるな。
今日は女性陣はお休み。
昨日は激戦だったからゆっくり休んでほしい。
黒のガチャのハズレである高級下着セットを3人には渡した。もとい寝ているところに置いてきた。
動物系のお子様下着はなかったので、セクシーなやつになってしまったが気に入るだろうか?
サイズは心配いらない。自動調整機能でフィットする。体型サポートもしてくれる優れもの。
二人には意味がないかもしれないが、玉木さんには効果抜群だろう。
「おはよう! 鬼頭君!」
東雲東高校は朝から賑やかだ。
最初の襲撃で塞ぎこんでいた学生たちも多かったのに、凄いな。
おそらくこの先輩、可愛い顔をした明るい服部先輩が皆を元気にしているんだろう。
「負けてられないから! 僕たちも頑張るよ」
昨夜は犬の襲撃がなくゆっくりと休めたらしい。
犬側の中継拠点を潰した効果かな?
魚側の中継拠点の偵察は済んでいるらしいので、攻略へと移るらしい。
手伝っても良いのだが、……あの黒炎の怪物みたいのがいたらたぶんみんな死ぬから。
それは嫌だなと思うくらいには、俺はここの人たちを嫌いではない。
「ありがとう、鬼頭君。 でも僕たちでやれるところまで、やってみるよっ!」
ほんとうに無理はしないでほしいものだ。
◇◆◇
「良い」
犬の中継拠点にやってきた。
祭壇に使われていた狛犬の銅像を手に入れられないかなと思って。
狛犬ではないんだろうけど。
じつに良い表情だ。
今にも火を噴きだしそうである。
というか、火弾を飛ばしてきてたのはコイツなんじゃないかな?
東雲東高校を領地化できれば、コイツを活かせないだろうか。
持ち運ぶ手段を考えなければ。
「おお!?」
絶対無理だよなーと、狛犬の石像を持ちあげてみた。
台座部分から割と簡単に持ち上げられた。
どうなってるの?俺の筋肉。
人間やめてるなぁ……。
「どうする?」
狛犬像は4つある。
まとめて運びたいが、さすがに持ち上げるのは一つが限界だ。
台車になるようなものはないかな?
普通の台車じゃ潰れちゃうけど。
エンジンのかからなくなった車が放置されている。
軽トラの荷台に乗せて運んでみよう。
「いける」
狛犬像4つを乗せても軽トラは問題ない。
押す分にもタイヤがあるので動き出してしまえば楽だ。
メタルマジックハンドを使って押しながらハンドルを操作する。
これは……!
俺の筋肉とブラックホーンリアの推進力が圧倒的速度を生み出す。
普通に時速30キロくらい出てるんじゃないか?
放置車を避けつつ華麗なドライビングテクニックを見せる。
もちろん無免許運転だ。
いや、エンジンが掛かっていないから違法ではないぞ。
エンジンは自前の筋肉なのだから。
最高にエコではないか。
途中、犬にやられて無人と化している複合施設へ。
それほど大きいところではないが、スーパーとドラッグストアと百均がある。
木実ちゃんたちといるときは、ちょっと遠慮してしまうが、今は俺しかいないのでちょっと物資略―拝借したいと思う。
世界が元に戻ったらお返ししたい。
スタッフさんたちが無事に避難できたことを祈りつつ、日用品や保存食をゲット。
食材系は時間が結構立っているのでもう悪臭がすごい。
電気も止まって冷蔵されていないししかたないよな。
ドラッグストアで薬や生理用品も確保。
メンバー用と避難所用で分けて、後でメンバー用のは葵にでも渡しておこう。 アイツならうまくやってくれるだろう。
「いっぱいだな」
軽トラの荷台は戦利品と略奪品でいっぱいだ。
中継拠点を潰しても未だ『獄炎のケルベロス』の支配地域内の場所。
次はいつゆっくりと探索できるかわからないので無駄になる前に回収したいのだ。
なんとなく悪いことしているようで、言い訳をしてしまう。
少しでも避難してきたひとたちに役立ててもらえればいいだろう。
なんだか今日は優しい気分になれる日である。
……賢者タイムという奴だろうか?
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