七十一話

 温泉は素晴らしい。


 疲れた体と心がスッキリした。

 ゴブリン爆弾の臭いも落ちて、気分も晴れた。

 頼んだらまた入らせてくれるだろうか?


「白」


 本日の無料ガチャは白。

 安定のパンティだ。 ランジェリーショップを開く日も遠くはない。


 東雲市奪還作戦は中止になった。

 敵の規模が予想以上に多くなっていた為だ。

 黒髪ロングの能力でも、広範囲の建物内の敵の把握は難しい。

 彼女は今、疲労で熱を出して休んでいる。

 疲労困憊でも休もうとしない彼女を、ツインテが無理矢理休ませたのだが。


「私たちは帰還するが、君たちも十分気を付けてくれ」


 無茶だけはするなよ、と山木さんたちは帰っていった。

 逃げ出した奴らの報告を考えると頭が痛いと愚痴をこぼしながら。


 自衛隊基地のある藤崎市方面は敵があまりいない。

 敵の進行を防いでくれているのだろう。

 奴らは一定の距離を移動するのに、移動拠点となる祭壇を作る必要があるようだ。


 猫の万屋の言葉が正しければ、支配領域が増えるにつれて敵は強くなる。

 逆に言えば、拠点を潰していけばいいわけだ。


「……」


 俺は行動方針を考える。


 木実ちゃんを、仲間を守るのは絶対の第一条件。

 その為に力をつける。

 俺だけじゃなくて皆の力もだ。


 鍵になるのは『ガチャ』。


 もし俺にこの固有スキルがなかったら……。

 東雲東高校で俺たちは死んでいただろう。

 あそこは犬と魚が激しく縄張り争いをしている最悪の場所だ。


 お嬢様学校もゴブリンとアンデッドに挟まれているけど、本拠地の距離が離れているんだと思う。 

 ゴブリンとアンデッド同士が縄張り争いをしていない感じだ。


 この先を生き残る為に、俺はガチャを回す。

 

 たとえ幾千万のパンツに埋もれても、俺はガチャを回し続ける。


 皆を護る力を手にいれる為に!


 俺はいまある魂魄500全部をガチャに回す。


 決して俺がガチャを回したいからじゃないんだ。


 皆を護る力を手にいれる為にッ!!


「ふぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」 


 どこか呆れた顔をした帽子を被った猫が、忙しそうにレバーを引くのだった。 



◇◆◇



 葵ちゃんが嬉しそうだ。


「ふふ♪」


 やっぱりお母さんが無事で嬉しかったんだね。

 上機嫌な葵ちゃんが可愛い。


「ご機嫌だなぁ、葵のやつ……」


「そうだね」


 筋肉痛のミサちゃん。

 重い荷物をずっと持ってくれてありがとう。 凄い疲れた顔をしてるからゆっくり休んでね。

 

「鬼頭くんどこいったんだろう?」


 いっぱい頑張ってくれた鬼頭君もゆっくり休んでほしい。

 

「あれ、どうしたんだ、ソレ?」


 葵ちゃんは荷物の整理をしていた。


「ん」


 魔法が使えるマジックカード。 魔物の止めを刺すメイス。ポーチ型のいっぱい入る袋。 ちょっと味の濃いジャーキー。 みんな鬼頭君に貰った物だ。

 その中に可愛いピンク色の物があった。


「もらった」


 たぶんそれは私も貰った不思議な下着。

 とても嬉しそうな葵ちゃんの笑顔に、私は……。


「……」


 鬼頭君は今、どうしているんだろう?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る