十九話:魔女
東校舎一階、保健室前。
(開いてる……)
保健室のドアは開いていた。
中からは音がする。
グチャグチャとなにかをかき回すような、嫌な音だ。
「……」
魚頭に襲われていた女生徒の姿がフラッシュバックする。
「鬼頭……魔女に、気をつけろ……」
「?」
背中の反町さんが囁く。
幻覚でもみているのか? 急がなければ。
俺は急いで保健室へと入った。
「うおっ!?」
「ぐぅうううう!?」
トラップ!?
保健室に入った瞬間足を取られ、前のめりに、反町さんごと突っ込んだ。 鼻からダイブ……。 鼻血出てない!?
「あら?」
「キコォ……キコォォ……」
声が二つ。
艶やかな女性の声と魚頭の声。
やばい。 と思ったが足が床にくっついている。
(ガムテープ!?)
保健室入口にガムテトラップが仕掛けられていた。
これに足を取られ顔面ダイブをするはめになったのか。 折れた腕をさらに痛めたのか、反町さんが苦痛で顔を歪めている。
「反町君じゃない? 腕、大丈夫〜〜?」
「ぐぅうううううう!?」
反町さんの腕を確認する女性。
魔女……ではなく、痴女が出迎えてくれた。
(なぜに下着!?)
紫色のセクシーな下着と白衣を着た保険の先生。
妖艶だ。 長い黒茶色の髪はウェーブして大人の女性らしい髪型。 太ももとお尻が築く魅惑のライン。 むっちりとしてそれでいて太いとは思わせないギリギリの肉感がエロい。
保健室の魔女と呼ばれる保険の先生だ。
俺の知る限りでは保険技術の先生ではなかったはずだが……。
「ん?」
先客。
保健室の床にガムテープで捕らえられた魚頭が仰向けに寝かされ、そのイチモツが今にも破裂しそうなほど膨張されていた。
なぜだ……? わからない、訳がわからないよ。
「反町君をベッドに運ぶの、手伝ってくれる? 私だけじゃ運べないわ〜〜」
と言われても、膝までガムテではりついてますから。
あと近づかれると、下からのアングル危険です。
俺は足についたガムテを剥がす。
そこではたと気づく。 保健室内にいる別の魚頭の存在を。
(捕まえたのか。 ……ずいぶん大人しいな?)
目隠しされ、グルグル巻きにされている魚頭。 死んでいるかのように微動だにしない。 だが死んではいないはずだ、煙になって消えていかないのだから。
「お〜〜。 君ってば凄い力持ちね?」
「!」
腕をフニフニしないで!?
反町さんをベッドに運んだ。
しかし、これどうにか腕を固定しないと。
添え木的な物で、しっかりと骨の位置がずれないように固定したほうがいいのか? さすがにここまで酷い怪我の応急処置の方法は、ジェイソンにも習っていない。
「ぐぅおおおおおおおお!?」
「ほらぁ、頑張れっ、男の子♪」
「……」
消毒液をドバっとかけて、腕をファッとした魔女。
圧迫固定にアイスパックを取り付けてと、素早い動作で腕の処置を終えた。
頭の傷を確認し、消毒と包帯を巻いていく。
「うーん、これで冷やしておいて、あとは救急車を待つしかないわね〜〜」
気を失った反町さんに呟く。
そしてシィーーと、カーテンを閉めた。
「えぇと、君も生徒よね? たしか鬼頭君」
「……うむ」
「どうしてタキシードなのかしら……?」
校則違反よ? と。
それは俺にもわからない。
ガチャのみぞ知るというやつだ。
「ん、それ気になる? 襲ってきたから捕まえたの。 目隠ししたら大人しくなったのよねぇ〜〜」
転がされてるやつも気になるが、生殖器をおったててるやつの方が気になるけど?
「ふふ、そっちは実験中なの。 なんなのかしらね? この生物……」
「キコォ……」
口をパクパクさせる魚頭。
よく見ると抉られたような跡や刻まれた跡がある。
実験とは一体?
「私を見て発情しているみたい。 人と類似する生殖器、内臓の配置も同じだったわ」
腹、掻っ捌いたんですか?
「キっ!? コォォ……」
「でも死ぬと煙になる……不思議ね?」
体の一部を切り取られた魚頭は黒い煙を上げ消えていく。
「うーん? 死ぬほどの損傷ではないけど、消えちゃったわ?」
間違いなく、死ぬほど痛いですけどね!
魚頭たちにはHP、ヒットポイントみたいな概念でもあるのかな。
髪を掻き上げる仕草をした魔女が俺を見つめる。
「君はどこか怪我してないかな? ちょっとヌギヌギしよっか〜〜??」
「っ!」
魔女の魔の手が俺に伸びてきた!
「あれ?」
脱げない?
急接近した魔女を振り払う訳にもいかず、服に手を掛けられ脱がされそうになったのだけど、脱げない。
「どうなってるの?」
「……」
俺が聞きたい。
あれ……このタキシード呪われてる?
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