第5話
ホームルームの時間になり、吉村先生が入ってきてホームルームが始まった。
「明日から学校を休みにします」
先生が開口一番に休校宣言をした。病気が流行りだして、これ以上患者を増やさないための措置だろう。クラスメイトのみんなの反応は様々だった。学校に行かない分遊べると思って喜んでいる人もいれば、これからについて不安を隠しきれない人もいる。中にはそんなことに全く興味を示さずにあくびをしている人もいた。
「20歳以下の人はまだ病気に罹っていないが、これから先もそうとは限りません。ということで病気の状況が収まるまで自宅で待機してもらいことになりました。また、授業についてですが………」
先生が連絡をしている間、教室はざわついていた。今まで経験してきたことない状況になって落ち着いていられないのだろう。教室のいたるところでひそひそ声が響いていた。
「ということになりましたので、明日からは学校に来ずに自宅で安静にしていてください。お願いします」
吉村先生は淡々と事務連絡をして帰っていった。先生が去った後も、授業が始まるまで教室はざわついていた。みんなはどれだけ先生の話を聴いていたのだろう。
そんな教室の中で、翼は黙って先生の話を聴いていた。先生が去った後も翼は誰とも話さずに机に座っていた。
4時間目の授業が終わり、昼休みになった。教室はいつもよりもにぎやかだった。しばらく会えない友達との時間を満喫しようとしているのだろう。僕も翼と一緒にご飯を食べようと思ったが、誘わなかった。何となくだけど、行くべきではないと思った。今は放課後までそっとしておくべきだと思い、僕はひとり中庭でご飯を食べることにした。中庭へ行こうと教室を出ようとした時、翼のほうを見た。いつものように友達と仲良く話していていたが、彼の笑顔はなんだか引き攣っているような気がした。そう見えたのは、僕の頭の中にある最悪の事態が彷徨っているからかもしれない。そうでないことを願いつつ、僕は中庭へと向かった。
中庭で昼食を食べているとき、僕は病気のことを考えていた。病院が機能しなくなった以上、僕たちは病気に罹ったらほぼ死ぬだろう。急造の施設が作られるかもしれないが、作ったところで間に合わない。その間にも患者は増え続ける。患者は加速度的に増え続けているらしい。現在では国内だけで3万人を超え、世界ではこれの何十倍の人間が病気に罹っている。これからも患者数が増えていくとなると、病院だけでなくいろんな施設、サービスも停止していくことになるだろう。そうなったら人類は………。やめよう。ご飯を食べながら考えることではなかった。僕は頭の中にある考えを全て葬り、無心でご飯を食べることにした。
昼休みが終わり、午後の授業が始まった。今日は朝からいろんな事があって疲れていたのか、授業中だというのに寝てしまった。起きた時には目の間に翼が立っていて、ほかのクラスメイトはいなくなっていた。どうやら授業はとっくに終わって、みんな帰ってしまったらしい。
「もう放課後?」
「そうだ。珍しくずっと寝てたな」
翼は朝よりは少しだけ気分がよくなっていた。友達と過ごして気が紛れたのかもしれない。
「待たせてごめん」
「いいってことよ。行こうぜ」
「うん」
僕たちは翼の家へと向かった。
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