空虚ペンデュラムⅠ

毎日毎日、

同じ服を着る。

同じ道を通る。

同じ駅に行き、

同じ時間の電車に乗る。

同じ時間に会社に行き、

同じような作業をして、

同じ時間まで残業をして、

同じコンビニで、

同じおにぎりを2つ買い。

同じ生活サイクル。



06:00 起床。

夜、遅くまで仕事を進めていたツケからか、強い倦怠感と頭痛を感じる。その度にもう学生ではないのだと、再認識させられるのだった。重い体にむちを入れるように体を必死に起こして、明るい窓の外を、暗い顔で睨みつけながら、くしゃくしゃになったシーツの上で、同じくくしゃくしゃな髪の毛に櫛ををとおしながらテレビのアナウンサーの溌剌とした声を耳に取り込む。今日の天気は晴れだそうだ。動物園やピクニックにピッタリなお出かけ日和の天気だと、にこやかにアナウンサーさんは言った。もう何年も仕事場以外でお出かけなんてしていない。そんなことを考えながら私は、いつものスーツに身を包まれ、朝ごはんも食べずに家の扉を施錠していつもの道を鉛の入った足で踏みしめながら駅へと向かう。


07:30 通勤。

スマートフォンでメッセージを確認したりしながら人の壁の圧と、汗ばんだ人の香り、電車の揺れを感じながら仕事に向かう。似たような挨拶の文言や、スーツの背中、眠りこけるサラリーマンや学生、流れていくビル群を眺めているとあっという間に会社の最寄駅だった。


08:00 出社。

会社に入るとともに無意識に上がる口角に慣れたものだという関心を覚えながら、挨拶を交わす。当たり障りのない解答の応酬や、デスクに向かい作業を行い、理不尽な怒りを受け止め頭を下げて1日をやり過ごす。ひたすら頭を下げ、ひたすらPCと向き合う日々



20:00 残業。

ほとんど誰もいなくなった半分消灯された会社内で静かに光る画面や文字の並ぶ紙を見ながらキーボードを叩く音を響かせる。きっと私は要領が悪いのだろう。


22:00 残業が終わり帰宅。

帰り際に、すでに暗くなったスーパーを横目にコンビニで適当に夕飯と茶色い瓶の、大して美味しいと感じられたこともないエナジードリンクの入ったビニールを片手に下げて静かな道を淡々と歩いていた。


01:00 就寝。

家でできる残業をこなし、乾いた洗濯物を取り込みかごに投げ入れた私は気絶するように寝ていた。

 


繰り返しの日々

時計の針が一定のサイクルでで同じ道を何度も何度も通る。

私の日々も同じサイクルで同じような日々を過ごす。

歳を重ねて変わったのは学校か会社か、私の周りの人、住む場所ぐらいのもので、大まかな生活サイクルも、気持ちも変わらなかった。時間と歩いているはずの私は時間においていかれていた。

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無塵不染 冬瀬 攬(Fuyuse Ran) @Suzaku_Fuuse

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