第7回  「本の箱」

「ねぇねぇ、お母さん!お願い!」

真司は今、お母さんにおねだりをしている。

真司は本が好きで、本が無限に読める「本の箱」というものが欲しいのだ。

ネットで見ただけなので、詳しいことははわからないようだが、

望んだ本は、なんでも、いくらでも出てくるらしい。

「じゃあ、お金をあげるから、買って来なさい。」

真司は、飛び上がって喜んだ。

ピンポ~ン。

誰か来たようだ。

「は~い。」

ドアを開けても、だれもいなかった。

ちらっと、白い髪が見えたような気がしたが、

少し顔を出してみても、だれもいない。

まあいいかと思い、デパートへ歩き出した。

          * * *

本の箱を手に入れ、真司は上機嫌で家に帰った。

本の箱はお菓子の箱みたいなスチール製で、段ボールの半分くらいの大きさだ。

本の箱を開いてみると、真司が読みたいと思っていた、

「動物の研究」という本が入っていた。

その後1か月、真司の成績少しと引き換えに、真司は幸せな日々を過ごした。

そして、どうやら、真司の「読みたい本」は蓄積される。

真司が昨日「読みたい」と思った本と今日「読みたい」と思った本がどちらも入っていたりした。

真司は、「だれも読んだことのない自作の本」を頼んだらどうなるのだろうと思った。

本の箱を開けると、1冊の本が入っていた。

真司はいろいろな「誰も読んだことのない本」を読みふけり、

次第に、自作の小説も書くようになった。

そうして、真司は立派な小説家となった。

そして、この「本の箱」を書いた。

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