第5回  「武着茶」

ああ、喉が渇いた。

そう思いながら、葵の足は自販機に向かっていた。

葵が自販機に来るちょっと前、

全身真っ白な女性が自販機で飲み物を買っていたような気がしたが、

まぁ気のせいだろう。

うーん、どれにしよう。

りんごジュース。缶コーヒー。水。エナドリ。

ココア。ぶどうジュース。武着茶むぎちゃ。ん?武着茶?

気になったので、試しに買ってみた。

うーん、美味しい。マイルドだけど、甘味と苦味がブレンドしている。

帰り際、剣道の道場の横を通った。

【剣道、してみたいな。】

気づくと、自分が剣道の胴着を着ていた。

え、、、?

試しに、空手の胴着を考えてみると、やはり、空手の胴着を着ていた。

ねぇ、お嬢ちゃん。

はっと振り向くと、不審者ですとでも言うような格好をした男がいた。

反射的に、竹刀をイメージし、男をぶっ叩いていた。

そこから、葵の生活は一変した。

剣道の道場に通い出し、毎日と言っていいほど、テレビの取材を受けた。

しかし、武着茶の力がおかしくなってきた。

なぜか、空手の胴着を着ているのだ。武着茶のペットボトルを見てみると、

「欠点。変身した格闘技はプロにならなくてはいけません。」

葵の顔は、真っ青になった。

剣道。空手。ボクシング。テコンドー。柔道。

その夜、ご飯を食べることさえ許されなくなった葵は、

格闘技をしつづけていたそうな…

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