第3回 「心模様」
雨は嫌いだ。
七海は、家の中でじっとしていた。
いや、じっとしているしかなかった。
夏休み、さぁ遊ぼうというときに、雨が降ったのだ。
* * *
やっと晴れたが、時間は5時。
家を出たはいいものの、公園には誰もいないだろう。
その時、全身真っ白な女性が見えた気がした。
追いかけようとしたが、次の瞬間にはいなくなっていた。
いっそのこと、と思い、足を本屋さんに向けた。
からんからんからん。
本屋さんには、書店員さんしかいなかった。
しかし、お店の雰囲気が、今までとはとても違ったのだ。
おかげで、七海の心は一気に晴れやかになった。
「あ、あの!」
七海はうずうずしていた。
なにか、いいことが起こりそうな予感がしたからだ。
七海は続けた。
「こ、これ、どういうことですか。」
意味がなってないが、書店員さんは察したように歩き出した。
「これよ。」
書店員さんが差し出したのは、一冊のノートだった。
表には、「心模様ノート」と書いてあった。
手に取り、ページを開くと、
「雨 嫌い」「遊びたかった 悲しい」「ノート 気になる」
と書いてある。
顔を上げると、本屋さんの壁の模様が青と黄色の模様に変わっている。
「心の色を映し出すノートだよ。買うかい?」
七海は大きく頷いた。
「よし、じゃあ、特別大サービスで500円だ。」
七海は代金を払い、お礼を言って飛び出した。
さっきまで青だった目の前が、黄色に変わっている。
こんなに好奇心をくすぐられるのは初めてだ。
家族や友達に見せびらかしたり、
ポジティブになれた。
* * *
その夏、七海一家は京都の金閣寺に行った。
京都の要所要所を回りながら辿り着いたのだ。
七海は大満足で帰った。
ピンク色になった桃閣寺を残して…
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