25. 告白 後編

「俺が好きなのはどっちもなんだ! どっちかを選ぶなんて永遠にできない! だから二人ともの俺と付き合ってほしい! 二人とも俺と恋人になってほしい!」


 心春こはるがガクンとうなだれた!


「や、やっぱり!」


 心春こはるの顔がどんどん真っ赤になっていく!

 目には少しだけ涙がたまっているように見える!


「よ、予想通りすぎて声も出ないよ! 念のために琴乃ことのに保険をかけておいた私の身にもなってくれる!?」

「期待を裏切らないと言ってくれ!」

「だ、大体、普通女の子二人にそういうこと言う!?」

「普通は言わないと思う」

「まさか前世の嫁と娘に――」

は只の同級生だから」

「そりゃそうなんだけどさ!」


 心春こはるが大きな大きなため息を一つついた。


「どうする琴乃ことの? 唯人ゆいとがこんなこと言ってるけど」

「……」

琴乃ことの?」


 琴乃ことのが微動だにしない。

 琴乃ことのがその場で完全にフリーズしてしまっていた。


「きゅ~~~」


 そのままパタリと倒れ込んでしまった。




※※※




琴乃ことの琴乃ことの! 大丈夫か!?」


 琴乃ことのの頬をぺちぺちと叩く。

 琴乃ことのの頭がコンクリートにぶつからないように、心春こはる琴乃ことのの頭を膝枕していた。


「う、うーん。今すごいことが起きたような……?」


 琴乃ことのが目を覚ました。

 どうやら軽く失神してたらしい。


「大丈夫?」

「夢を見ていたみたいで……」

「夢?」

唯人ゆいと君から告白される夢見ちゃった」

「それをあっさり本人に言ってくるのが琴乃ことのっぽいけど」


 心春こはるが俺のことをジト目で見ている。

 いや、睨んでいる言ったほうが正しいかもしれない……!


「ゆ、嘘じゃないよ。俺は琴乃ことのに恋人になってほしいって言ったんだ」

「そうそう、そんなこと唯人ゆいと君から言ってくるわけ……」

琴乃ことの湯井唯人と付き合ってくれるか?」


 琴乃ことのの体を正面にとらえる。

 目を真っ直ぐに見て、もう一度その言葉を伝える。


「言ってくるわけ……言ってくるわけ……、ど、どぇええええええええええええええええええええええ!?」


 琴乃ことのから聞いた時のない叫び声が飛び出た!


「あっ、これ夢だ」

「違う」

「もう一度寝たら覚めるかな?」

「寝るな」

「あっ、けどこの夢から覚めるのはもったいないような気も……」

「全部、現実だぞ」


 琴乃ことのがほわほわしたことを言っているので、あえて琴乃ことのの頬をつねってみる。


「どう? 夢じゃないだろ」

「うん、ちょっと痛い」

「じゃあ俺と付き合ってくれないか?」

「つつつ付き合って……!?」

琴乃ことののこと、他の誰にも取られたくないんだ。結局、自分から攻略しにいった形になっちゃったけど、俺と付き合ってほしい」

「ぇえええええええ!?」


 琴乃ことのが勢いよく体を起こした!


「そ、それって恋人同士になるってこと!?」

「うん」

「えぇえええええ!?」


 琴乃ことのがまた倒れてしまった。


「どうすんのよこれ」

「俺が聞きたい……」

「犬なら喜びすぎて失神するときがあると聞いた時はあるけど……」


 心春こはる琴乃ことのの頭を撫でながら、呆れたような困ったような顔をしていた。


「俺、お前からも返事聞きたいんだけど」

「はぁ……」


 心春こはる琴乃ことのの頭を膝枕したまま、天を仰いだ。


「普通に過ごしたいなぁと思ってたけど、私たちに普通は無理だったみたいね」

「既に普通じゃないことが起きてるからな」

「断られたらどうするつもりなの?」

「そ、そのときはそのときで考えようかと……」

「はっ! だから琴乃ことのの誕生日のときに約束をしてからこんなことを……! あなたも保険をかけておいたのね!」

「だ、ただのずるいやつになるからそれ以上言わないで! たまに察しがよくなるのはなんなんだよ!」

「前世の妻だから」


 心春こはるが自慢げな顔をしながら、琴乃ことのの髪を優しく撫でていた。


「……仕方ないなぁ。今も昔も旦那の我儘を聞くのはの役割だし」

「ごめん……」

「今、動けないからちょっとこっちに来て」

「?」

「ほら、届かないでしょ」


 心春こはるがこちらに顔を近づけるように促す。




 ――心春こはるの顔が近づくと、すぐに唇に柔らかい感触があった。




「また宜しくね。ちゃんと言えて偉かったよ」


 自分たちの息遣いが聞こえるくらいの距離で、心春こはるが俺にそう言った。


「うん。二人とも必ず幸せにするから」

「それじゃプロポーズみたいじゃん」

「あっ」


 心春こはる俺のことを受け入れてくれたのがただただ嬉しい。

 心が充足感で満たされていった。


「はっ……!」

「あっ、起きた」


 再び琴乃ことのが目を覚ました。

 心春こはる琴乃ことののおでこに手をやっていた。


琴乃ことの、大丈夫?」

「ゆ、唯人ゆいと君!?」


 琴乃ことのの顔を覗き込むと、みるみるうちに琴乃ことのの顔が赤くなっていった。


「は、恥ずかしぃいいい! 顔見ないでぇええええ!」


 この前までのぐいぐいはどこかに行ってしまっていた。

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