24. 告白 前編

 週明けの月曜日。


 ついにこの日がやってきた!


 その言葉を言ってしまったら、今までの関係が変わるかもしれない。

 もしかしたら前みたいに戻れなくなるかもしれない。


 けど、やっぱりケジメとして言わないといけないと思う。

 一人の人間として、の二人とちゃんと向き合わなければならない思う。


 これからこの現代を生きていくために!



 ――今日、俺は告白するのだ。



 琴乃ことの心春こはる


 俺の心はもう決まっていた。




※※※




「だるいなぁ」

「兄さんがそんなこと言うの珍しいですね」

「そう? 早く放課後にならないかな」

「それは私も同意です」


 隣の席の結奈ゆいなちゃんと、朝のホームルーム前にそんな会話をする。


 人生の大一番が控えているというのに、学校の授業はこなさないといけない。そりゃこんな愚痴も出てしまう。


「この前は楽しかったですね」


 結奈ゆいなちゃんが目尻を下げて、俺にそう言ってきた。


「うん。結奈ゆいなさんの誕生日もやろうね」

「はい、楽しみにしてます」


 結奈ゆいなちゃんの横顔を見る。

 よく見たら結奈ゆいなさんの耳からは緑ピアスが消えていた。


「あれ? ピアスどうしたの? 似合ってたのに」

「あー、学校につけてくるのはもういいかなと思いまして」

「どういうこと?」

「変なところで目立っちゃうので。髪の毛も戻そうと思ってます」

「えぇえええ! もったいない!」

「そんな風に言ってくれるの兄さんだけですよ! あのファッション自体は好きだったんですが、とりあえず学校でその格好する必要はないのかなぁと思いまして」


 あっ、そっか。

 今の結奈ゆいなちゃんからはとても考えられないが、昔はいじめられてたんだっけ。

 そもそもはだからそんな格好をしていたんだった。


「兄さんと琴乃ことののおかげです。おかげでこの高校では楽しい学校生活が送れそうです」

「いや、何もしてないけどね……」


 お礼を言われるほどのことは本当に何もしていない!

 むしろお礼を言わなければいけないのはこっちのほうなのに!


「ちゃんと自分の話を聞いてくれる家族がいるってだけで心強いんですよ。これからも宜しくお願いしますね」

結奈ゆいなさんは大人だなぁ……。俺も少しは見習わないと」

「あっ、そうそう! 少し気になってたんですが!」

「気になってた?」

「妹なのに“さん付け”はおかしくないですか? 普通に呼び捨てでいいですよ」


 結奈ちゃんが朗らかに笑っていた。


 娘の友達を呼び捨てになんて――。

 いや、違うか……今は俺の妹でもあったんだった。


 本当に俺も琴乃ことのもこの子には世話になってばかりだなぁ。


「分かったよ結奈ゆいな

「はい、兄さん」


 結奈ゆいながとても優しい顔をしていた。




※※※




 待ちに待った放課後になった!


「じゃあ琴乃ことの! 心春こはる! 俺、屋上で待ってるから!」


 そう二人に言い残して、俺は一足先に屋上にやってきた。

 先に屋上に来て、少し落ち着く時間が欲しかったからだ。


「少し予行練習でもしてようかな」


 いざ、ちゃんと言うとなると心臓がバクバクしてきた。



ガチャ



 屋上の扉が開く。


唯人ゆいと君の話って何かなぁ」

琴乃ことの唯人ゆいとの言うことちゃんと聞いてあげてね。ぐいぐい行くだけが恋愛じゃないからね」


 すぐさま二人が屋上にやってきた。


「って! 来るのはえーよ!」

「えー、だって同じ教室から来るんだからそんな変わらないじゃん」


 心春こはるがやや緊張した様子で、俺にそう答えた。

 心春こはるはこれから何が起きるのか分かっているようだった。


唯人ゆいと君、話ってなーに?」


 一方、琴乃ことのは全然分かっていないようだ。


 ええい! 

 少し予定と変わってしまったが、こうなったらこのままいくしかない!


「……俺、ちゃんと二人に言っておきたいことがあるんだ!」

「言っておきたいこと?」


 琴乃ことのが不思議そうな顔をしている。


「うん! 驚かないで聞いてほしいんだ!」

「ど、どうしたの!? 目が怖いよ唯人ゆいと君!」


 動揺する琴乃ことのの後ろに、そっと心春こはるが寄り添った。


琴乃ことの唯人ゆいとがどっちを選んでもちゃんと受け入れないとダメだよ。私も頑張るから」

「えっ?」


 その言葉で琴乃ことのもこれから何が起きるか察したようだ。


「いきなりでごめん! でも、このことはちゃんとしないといけないと思ったから!」


 息を大きく吸い込む。

 多分、顔は真っ赤になっていると思う。


「俺が好きなのは――」

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