13. 今度は私も一緒に
「じゃあおばあちゃん、私は二人と一緒に寝てるからねー!」
「はいはい」
「……」
狭い部屋にはぎっちりと布団が並べられている。
おかしいなぁ。
なんか少しドキドキしてきた。
「これ誰が真ん中?」
「
「えっ!?
「絶対に
ここは絶対に譲るわけにはいかない!
今の俺の状態で二人に挟まれるのは絶対に良くない!
「いいね! 昔みたいで! じゃあ
※※※
「……」
二人の衣擦れの音が聞こえる。
息遣いが凄く近く感じる。
そのことにドキドキしてしまっている。
こんな思春期みたいな反応をすることになんて……。
大体、
……それにやっぱり怖い。
「眠いけど寝れない!」
俺の気持ちを察したように、奥の布団から
「同じく……」
俺も
「ねぇねぇ、三人でもっとくっつきたいよ~」
「それはやだ」
心春が甘えたような声でそんなことを言ってきた。
だから、今の俺が二人にくっつくなんてできるわけないだろう!
大体、俺は二人の寝間着姿を
「もー、また色々考えてる」
真ん中の布団にいる
「お、おい!」
「はい、
「う、うわっ」
どうやら
「えへへへ~、楽しいなぁ」
「もー、いつも強引なんだから」
「……本当に大きくなったね
「うん、大きくなった」
「昔はこんなに小さかったんだよ。三人で寝る時だって、布団は一枚で十分だったんだから」
「け、結構、ぎゅうぎゅうで寝てたんだね」
「狭いアパートだったからね」
「あなたが生まれたときは、赤ん坊のあなたよりもこの人が泣いていたのよ」
「本人を前にめちゃくちゃ話を盛るじゃん」
「そんなことないし、めちゃくちゃ泣いてたし」
「それは否定しないけどさ……」
「けど嬉しかったなぁ」
「あなたが初めて立ったときは転ばないようにって、ずっと後ろをつけ回してたのよ。本当にストーカーみたいだった」
「最後の言葉は絶対にいらないよな!」
「だって~」
「あなたが風邪で熱を出した時は、この人も顔を真っ青になっちゃってね……、慌てて救急車を呼んじゃって笑いものになったときもあったなぁ」
「仕方ないじゃん!
「うん。ものすごーく心配した」
まるで、
「色々あったけど、私もあなたのお父さんもずっとあなたを愛してるよ。どんなに喧嘩してもずっと大好きだよ」
「……」
俺は、その言葉がまるでお別れを言っているように聞こえてしまった。
「
「お父さん、お母さん」
俺が
※※※
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。二人がもしそうなったら、今度は私も一緒に行くから」
「えっ……?」
一瞬、
「私、二人がいなくなってからずっとうじうじしてた。おばあちゃんも叔父さんもみんな優しくしてくれたし、クラスメイトや周りの人たちだって私にとても良くしてくれた」
どこか遠い目をしていた。
「でも、あのときの私は本当にそんなことどうでも良くて……。早く私も二人がいるところに行きたいって、ずっとそんなことばかり考えてた」
「
「私、今日の川辺で告白したでしょう? 実はお父さんがお母さんにあそこでプロポーズした場所っていうの知ってたんだ。二人の大切な場所なら、いつか私も二人に会えるような気がしたから」
「……」
「
今は、真っ直ぐで天真爛漫な子に見えるけど、その実は鬱屈した気持ちをずっと抱えて生きてきた女の子だった。
今までも断片的にその話はしてくれていたけど、今日初めて、そのことをはっきりと俺たち親の前で話してくれた。
俺たちのせいで……。
そのことが本当に申し訳ない。
大切な娘に、そんなことを言わせてしまっている自分たちにどうしようもなく腹が立つ。
悲しくて胸が張り裂けそうになる。
「
いつの間にか頬には涙が伝わっていた。
俺は、隣にいる
二人が愛おしくて愛おしくて仕方がない。
(「私と
――海に行ったあの日。
俺は
俺も未来の出来事を二人と約束したい!
「俺が必ずお前たちのこと幸せにするから! これから大人になっても……! おじいちゃんになっても、おばあちゃんになっても! 絶対に二人のことを幸せにするから! だから二人ともそんなことを言わないでほしい!」
自分のために……。
前世の嫁のために……。
何よりも自分よりも大切な娘のために!
俺は絶対に
急にきたまどろみの中で、そのことだけは絶対に忘れまいと心に刻み込んだ。
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