14. 宣戦布告と唯人の真実!
白い空間に一人でぽつんといた。
俺はここに一度来たときがある。
俺の目の前には、見慣れた男の子がぽつんと立っていた。
「……ぐすっ」
男の子からすすり泣くような声が聞こえてきた。
「泣いてるの?」
「すいません。俺のせいでこんなことになって」
本物の
「いや、君のせいではないだろう」
「でもな! 俺は君に言いたいことがある!」
「はい」
「もう知ってると思うが、俺には大切な嫁も娘もいる! 俺はこの二人と添い遂げたい! 君が俺が邪魔でこの体から、俺のことを消したいというなら俺は全力で抵抗しないといけない!」
「はい?」
「宣 戦 布 告 !
喉が痛くなるくらいにその言葉を力強く叫んだ!
夢だから実際に痛いかどうかなんて分からないけど!
「大丈夫ですって。俺もう死んでますし」
「そうそう! 死んでも渡すかって! ……って、ん?」
「今なんて言ったの?」
「大丈夫だって言いました!」
「いや、その
「死んでるって言いました!」
「はぁあ!?」
「ど、どういうこと!?」
「俺、もうとっくに死んでるんですよ。
「えっ!? えぇえ!?」
「折角、高校に受かったのになぁ……」
理解が全然追い付かない。
「えっ? じゃあ
「きっと俺と一緒に」
「……」
どういうこと?
何が起きて、何でそうなったのかさっぱりだ。
「意識不明の学生の話って聞いた時ありませんでした?」
「わ、分からないよ! 俺の意識がはっきりしたのは
「じゃあ無意識に事故のことは思い出さないようにしてたのかな? 自分の死因ってトラウマでしかないですもんね。
全てが初耳だ。
やばい……。
「母さんって、最初に
「えっ?」
「あの人はそういう人なんですよ!」
「待って待って! 最初から! イチから説明してもらえる!?」
「えー」
「高校入学前の三月だったかなぁ。大きな洪水がありまして」
「うん」
「いつも
「う、うん」
「そしたら、どんぶらこーどんぶらこーって」
「自分の死因をそんなに軽く語るやつがいるか!」
「めんどくさいなぁ。多分、あなたたちに影響されたんですよ」
「別にそのことで誰かを恨んでいるとかはありません。あえて言うなら、自分が馬鹿だったなって」
「な、なんで……」
分からない。
自分のことなのに
「い、いいのか!? 君はそのままでいいのか!?」
「さっきは宣戦布告してきたくせに」
「それはそうだけど!」
「俺、
「……」
「ずっと家族というものに憧れがあったんです。俺に“お父さん”ってずっといなかったから。俺も母さんと、
見慣れた顔のはずなのに、とても幼い顔に見えてしまった。
「……なんで
「
「えっ……?」
「誰かに何かをしてあげたいって気持ちに理由なんてないんじゃないかなって……。それが家族でも好きな人でも友達でも」
「多分、これから、俺の気持ちと
「えっ」
「
●●●
隣のぬくもりで目が覚めた。
俺の頬には涙が伝わっていた。これが誰の涙なのか分からない。
――そして、家族というものに強い憧れがあった。
色んな気持ちが混ざり合って、ぎゅっと胸が締め付けられてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます