18. 古藤家のドタバタ家族会議! 前編

 香里かおりさんと話を終え、俺は古藤ことう家に戻ってきた。


 短い時間だったけど、俺たちがちゃんと前に進むためには大切な時間になったと思う。


「あれで本当に良かったのかな……」


 香里さんとは少し時間が欲しかったので、お泊りというのは本当に都合が良かった。


「あのとき、もうちょっと違うことを言った方が良かったかな……?」


 わだかまりみたいなのは一つはなくなったと思うが、あれがベストなやり方だったかは分からない……。


「本当にあれで――」


 自分の仏壇の前で、悶々と自問自答を繰り返す!


唯人ゆいと君は何してるの?」

「大丈夫、いつものことだから。前よりひどくなってるけど」


 心春こはる琴乃ことのが、居間でお茶を飲んでいた。


「っていうか、お前ら帰ってくるの早くない!?」

「今日は午前上がりだし」

「そうだっけ?」


 い、色々ありすぎて学校のほうに全然気が向いていなかった。


「相手に気持ちが伝わればそれでいいんじゃん」

「そうかなぁ」

「終わってからうじうじ考えるの良くないよ」


 心春こはるが、ずずーっと音を立ててお茶を飲む。


「プロポーズのときだって、私はこれ以上ないくらい嬉しかったのに未だにあなたは気にしてるし」

「うっ……」

「こっちとしてはその温度差のほうが気になるっての」

「すいません……」


 心春こはるにお説教をされてしまった。


「大丈夫、唯人ゆいと君! 私に任せて!」


 俺たちがそんなやり取りをしている間、琴乃ことのは珍しく携帯に集中していた。


「何してるの?」

結奈ゆいなにメッセージ送っておいた!」

「な、なんて送ったの?」

唯人ゆいと君がお母さんと喧嘩したみたいだからフォロー宜しくねって言っといたから!」

「任せてるの結奈ゆいなさんじゃんか!」


 みんなの手厚いフォロー? のおかげで、俺は母さんと本当の関係が築けそうだ……。


「さて……」


 心春こはるが勢いよく、その場から立ち上がった!


「ようやく色んな問題が解決に動いたところで、私もみんなと話をしたいことがあります」

「解決に動いてるかなぁ……」

「とりあえずは私たちの睡眠問題は解決っぽいし、唯人ゆいとのお母さんとの関係も良い方向には向かっているんでしょう?」

「そりゃまぁ……」

「じゃあ、私たちは更なるステップに進まないといけません!」

「さ、更なるステップ!?」

「これから家族会議をします!」




※※※




デデン!



 近くの柱には、心春こはる手書きの画用紙が貼りつけられた!


 “議題:ハーレムとは”


 黒いマジックで、そんな文字が大きく書いてある!


「こ、心春こはる議長……」

「なんでしょうか、唯人ゆいと議員」

「今すぐ退出していいでしょうか!」

「ダメです」


 心春こはるがいつもオフクロが座っている上座にどーーんと座っていた。

 俺の隣にいる琴乃ことのは、何が起きるか分からずにぽかーんとしている。


「ハーレムってお父さんの漫画に出てくる、色んな女の子とエッチするやつ?」

琴乃ことのの口からその単語は聞きたくなかった……」


 がくっと力が抜ける。

 本題に入る前だが、既に嫌な予感しかしない。

 家族会議と言う名の死刑執行会場にいる気分だ。


「仮にも私は前世の嫁なわけです」

「はい」

「それが、娘よりも遅れているような気がするのです」

「何が遅れてるんだよ」

「だって、私はぎゅーだけど琴乃ことのはちゅーでしょ?」

「理由聞かなきゃ良かった」


 やっぱりその話かぁ……。

 琴乃ことのとキスしてしまったことは、できればこのまま触れないでいてほしかった……。


 朝は香里かおりさんと家族会議をして、昼は古藤家の家族会議。

 なんて濃密すぎるスケジュールなんだ。


 夜は何もないことを祈る。


「だって、心春こはるちゃんって超奥手じゃない!? 前世のお嫁さんっていう最強のアドバンテージがあるのに、それを全然活かせてないじゃん!」


 琴乃ことのがどえらいことをぶっこんできた!


「げ、げふんげふん! 小娘が何か言っておりますが、私は唯人ゆいとにズバリ聞きたいことがあるのです」

「小娘って、みんな同じ歳だけどな」


 心春こはるが額には青筋を浮べながらも、無理矢理、話を進める。


「結局、唯人ゆいとはどっちが好きなの?」


 あっ、急にお腹痛くなってきた。

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