16. 開戦! 唯人vs現世の母
「オフクロ! 腹減った!」
朝になり、俺たちは居間に戻った。
「なんだいいきなり」
「昨日、夕飯食わないで寝たから! 唐揚げ食べたい!」
「朝からそんなのあるわけないだろう」
オフクロが仏壇にお線香をあげながら、俺にそう答える。
「私、朝から
「なんだい、
「
「それは私の台詞よ!」
「やだ! そこくすぐったい!」
「
「わ、私の弱点ってなに!?」
「首に、脇に、横腹に、おへそに背中! 全部くすぐったくなるでしょう!」
「うわぁあああん! なんで知ってるのぉおお!」
「親だから」
それもう全部弱点なんじゃないかな……。
今日は珍しく
「
「だからべたべたしすぎって!」
「心春ちゃんがいじめるからだ!」
「うっ……」
「せっかく、みんなでまた会えたのに!」
「うぅ……!」
「やっぱり、私は
「うわぁああああん! お義母さーーーん!」
今度は
「
「よしよし、朝から賑やかだねぇ。私にはただの仲良しにしか見えないけどねぇ」
本当に朝から賑やかすぎだよ、この家族。
「はぁ……。お腹すいた、風呂に入りたい」
「ご飯は用意しとくから、お風呂は自分で準備しな」
「へーい」
オフクロはそう言いながら、キッチンに向かった。
「あー! 私も手伝いますよ!」
昔からだけど、この二人に嫁姑問題なんてものは存在しないようだ。
俺と
「
「なんだよ、
「昨日からキスしたことスルーしてるでしょう」
「……」
「ねぇ、一緒にお風呂入ろうよ」
「入りません」
※※※
「さーて! 飯も食ったし、一回家に帰るか!」
「えぇえええ帰っちゃうの!? ずっと一緒にいられると思ったのに」
「そもそも学校があるでしょうが」
「学校は今度でよくない?」
「よくない。二日連続でさぼることは許しません」
「えぇええええ!」
「
「私は
「分かった」
「話してくるの?」
「うん、ちゃんと話してみたいから」
「そっか、頑張ってね」
「じゃあ
「うわぁああああん!」
「まずはお着替えからだね~。脱ぎ脱ぎしようね~」
だ、段々、遠慮がなくなってくなあいつ……。
「よし、じゃあオフクロ。俺ちょっと行ってくるよ」
「今日はこっちに帰ってくるのかい?」
「その予定」
「じゃあ夜は唐揚げを用意しとくから」
俺は、
※※※
「ただいまー」
自分の家に戻ってきた。
「母さんいるー?」
「はいはーい」
「あれ? 学校は?」
「今日は休んだ」
「全く……最近は好き勝手にやって。学校に怒られるのは私なんだからね」
「ごめん、分かってる」
俺も
「どうしたの? そんなに真面目な顔をして」
「別に普通だし。お腹はどう?」
「うん、順調だよ」
「……母さん。俺、少し話がしたいんだけど」
「何よ、急に改まって」
「母さんって洪水のときのこと覚えてる?」
そのワードを出すと、
「……あれは大変だったわね。一週間もあなたは意識がなかったのよ? 流されてるところを、運よく自衛隊の人に見つけてもらったんだから。自分の運の良さに感謝しなさい」
「うん」
「……」
会話が続かない。
どうも
でも……。
「母さん」
「どうしたのよ、今日のあなた少しおかしいよ?」
「母さんなら分かると思うんだ。意識が戻った後の俺ってどうだった?」
「……どうって?」
「様子がおかしくなかった?」
「……」
俺がそう言うと、
「本当に今日はどうしたの?」
「
※※※
「ふぅ……」
あまりこのことがストレスになって、お腹の子供に負担はかけたくない……。
できるだけ穏便に話を進めないと。
「どうしたの? ふざけてるの?」
「
「……」
俺はそれ見て、
「お腹の子供に良くないよ」
「ごめん、癖で開けようとしちゃって」
「今だけなんで我慢してね」
「昔の
「ねぇ、あなたは“人生の主役が変わるとき”って言葉知ってる?」
母さんさんがどこか自嘲気味に笑っていた。
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