10. 娘のプロポーズ、そして……
「できるわけないだろ」
「なんで?」
「だって、今は違う体だし」
「けどあなたはあなたでしょう?」
「……」
正直よく分からなくなっていた。
もしかしたらこのまま――。
「俺、
振り絞るように声を出した。
自分でもつくづく情けないと思う。
けど、これがまごうことない俺の本心なのだ。
――俺は自分にすらこの二人を取られたくないのだ。
「
じわじわとその感覚が増えていく。
次、起きたときは多分もっと……。
「私、別に
「え!?」
「だって多分、ううん、絶対にあなた達のこと好きなままだもん」
「……」
「あなたはどう?」
だからさっき好き好きの波動とかよく分からないこと言っていたのか。
「俺もそこは絶対に変わらないと思うけどさ……」
「でしょ?」
「お得な人生だよね~、大切なものがどんどん増えていく。
美鈴の目からは涙がこぼれ落ちていった。
「寝ないわけにはいかないもんね。また死んじゃったら本当にどうしようもないもんね……」
「
「待って!」
俺が
※※※
「はぁはぁ……。今の話、少し聞こえちゃったんだけど!」
「
「
「どうした急に!? 今、お母さんと大切な話をしてたから後に……」
「今じゃないとダメなの!」
「
「う、うん」
何が起きるのか分からず、さすがの
「
「ど、どうした?」
「ちゃんと聞いててね!」
「高校卒業したら私と結婚してーーーー!!」
……。
……。
……?
……はい?
あまりの事態に頭が真っ白になる。
「
「え?」
「私は
「待て待て待てーーーーい!!」
娘が史上最大のぶっ壊れ発言をしてきやがった!
しかも俺が父親とだと分かったうえで!
しかも母親がいる目の前で!
「いいの
「えぇえええ! もう孫の話するの!?」
「ふ、二人とももう仕方がないとか思ってたでしょ!」
「「え?」」
「返事は今じゃなくていい! 卒業のときに聞かせて!」
「しょ、正気か!? お前、父親にプロポーズしてるんだぞ!」
「何か問題あるの!? 私、ずっと
や、やばい……!
ついに
「お母さんもうじうじしてたら、私がお父さんのこと取っちゃうんだからね! 悔しかったら阻止してみなよ!」
「えぇええええ……!?」
え、えらいこっちゃ……。
つ、ついに暴走機関車に積んだ爆薬が爆発してしまった……。
「こ、これで二人ともずっとここにいるしかなくなったでしょう!」
「……!!」
……そ、そっか。
今日のデートと言い、まさか娘にそんなに気を使わせてしまうとは。
自分の右手の掌を一瞬眺める。
(今だけはいいかな……)
「
チュッ
(えっ?)
唇に柔らかい感触がする。
気が付いたら
――
「あ、赤ちゃんのときはいっぱいしたかもしれないけど……私のファーストキスだから!」
「えっ? えっ!?」
お、おおおお俺は娘とキスしてしまっていた!!
ほっぺにチューとかではなくて、きっちりマウストゥマウスだった!
今は転生しているしなんの問題もない!
なんの問題もないんだけど……!
問題は――!
問 題 し か な い わ っ !!
「お、お前、なんてことを! い、今の俺は
「関係ないもん。私は今の
「今はお父さんって言うな!」
動揺する俺をよそに、
「
「な、なによ! うじうじって!」
「だって
「じ、自分でキスも手を繋ぐのも禁止って言ってたでしょ! それに普通はあなたみたいにぐいぐいいかないのよ!」
「そんなんだからお母さんは高校生になるまでお父さんと付き合えなかったんだよ!」
「な、なんですってーーー!」
ま、また二人の戦争が始まってしまった。
「……っ!」
自分の胸を触ってみる。
間違いなく自分の胸がドキドキしてしまっていた。
「わ、私が先にしようと思ってたのに!」
「わざわざ雰囲気作るためにここに来たんでしょ!
い、いや、ただハラハラしているだけかもしれない。
それにしても今の
結局、
「……」
笑 っ て る 場 合 じ ゃ な か っ た。
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