6ー1. 現代夫婦喧嘩!
「相談って何?」
「どうしたの? 真剣な顔をして」
「夢を見たんだ!」
「夢?」
「本当の
意を決してその言葉を前世の妻に伝える!
俺がそう言うと、
「えっ? どんな話をしたの?」
「
「好き?」
「
「なんですって……?」
「浮気じゃんかーーー!」
「どこがだ!!!」
「あれほど浮気はダメだって言ってたのに! 付き合ってからも、結婚してからも言ってたのに!」
「ち、違うんだ! 俺であって俺の感情じゃなくて……。いや、
「何わけ分かんないこと言ってんのよ!!」
「俺も何を言ってるか分からない!」
息が切れるくらいの言い争いがが始まってしまった!
「だ、だから
「前世では私のこと好きだって言ってくれてたのに! 結局、若い女が良いってことでしょう!」
「違う違う! その若い女ってお前の娘だし! ってかお前も今は同じ年齢だろうが!」
な、なんか前も似たようなやり取りをした気がするな、もう!
「いいか美鈴、よく聞け」
「聞かない!」
「いいから聞け!」
こうなったら一点突破だ!
「
「う、うん」
顔は茹でた蛸のように赤くなっている。
「そのことは
「……うん。私も康太のことが――」
「けど
「結局どっちなのよーーーーー!!!」
今度は首を絞められて、ぐわんぐわんと体を揺さぶられる。
「さっきから俺は俺はって! どっちがどっちだか全然分かんない!」
「ど、どっちも俺なんだよっ!」
「それを言うーー!?」
痛い! 苦しい!
「みんなが幸せになるなら重婚でもいいって言ったけど! 言ったけどさ!」
「と、とりあえず落ち着け……!」
「落ち着いてられるかーーー!」
パァン!!
※※※
「今どき暴力系ヒロインなんて流行らないからな!!」
左頬にできた紅葉マークをさすりながら
「ふんっだ! 実の娘に手を出そうとするのが悪い! しかも浮気まっしぐらだし」
「何が浮気だ。重婚オッケーとか言っておいて、言っていることがぶれぶれ――」
「何か言った!!」
「言ってません!」
ぐぅううう……!
「と、とりあえず、今はそこじゃないんだよ! もっと大切な話があってな!」
「弁解なら聞いてあげましょう」
「そうじゃなくてさ……」
本題に入る前に、まさか夫婦喧嘩をすることになるとは思わなかった。
いや、ほとんど俺が一方的に怒られただけなんだけどさ……。
「俺、もう少しで消えちゃうかも……」
「えっ?」
怒りで赤く染まっていた
「な、なんで!?」
「本物の
「そ、そんな……」
そういえば、ここで
「寝なきゃ大丈夫かな?」
「ず、ずっと寝ないわけにはいかないじゃん!」
「二日くらいならなんとか……。次、寝たらどうなるか全然分からないからさ」
「待って待って! そんなのヤダよ! またお別れなんて絶対に嫌だからね!」
今日は、怒らせたり泣かせたりと悪いことをしてしまった。
「どうしよ?」
「どうしようって……」
二人に間に重い沈黙が流れる。
「と、とりあえず栄養ドリンクいっぱい買ってこよ! 目が覚めるやついっぱい買ってこよ!」
「うん……」
なんでだろう?
こうして最愛の家族に相談できているからかな?
「
「そ、それは……」
「あのとき、オフクロが言ってたもんなぁ。現代に転生したのは皆にお別れを言うためだって」
「そんなこと言わないでよぉ……」
ついに
「ごめん……泣かせるつもりじゃなかったんだけど……」
「私、もう誰ともお別れしたくないよぉ……」
「ごめん……それは俺もだよ」
当然、そんなの俺もだ。
(……あれ?)
――
ここでもう一つの懸念が脳裏をよぎってしまった。
自分のことよりもむしろそっちに寒気を覚えてしまった。
「な、なぁ……」
「どうしたの……?」
「お前は大丈夫か? 最近すごい寝てたみたいだけど」
「え……」
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