3. 娘、同級生をお父さんと呼ぶ
「ねぇねぇ!
翌日の昼休み。
「ううん! まだ付き合ってないの! けど付き合ってるような感じかな!」
って安心できるかーー!
「付き合ってるようなってどんな感じ!? まだ告白はしてないの!?」
「もう私からしちゃったよ! けど、返事はいいの!
「「「きゃーーーー!!」」」
女子の黄色い歓声が飛んでくる。
い、居心地が悪すぎる……。
「けど、返事がもらえないってつらくない!?
「うんっ! けど今はそれでいいの! 私と一緒にいてくれるだけでいいから」
「け、健気ーー!」
そ、それにしても全然遠慮のない会話をしているな……。
後ろに本人がいるのだから、少しは配慮してほしい。
「ダメだよ!
ほら見たことか!
俺にまで話がふられてしまった!
「ねぇねぇ!
「どんなところ?」
更に別のクラスメイトが俺に声をかけてくる!
い、今更、そんなことを聞かれても……。
「全部だけど」
「「「きゃーーーー!!」」」
今日一番の歓声が教室中に木霊した!
だって自分の娘だぞ!
どこが好きとか関係ないじゃん。
「えへへへへ。お父さん大好き」
あえてスルー……。
あえてスルーを……。
「えっ!? えぇええ!?
クラスメイトはスルーしてくれなかった……。
「ち、違くて、
いつかやりそうだなぁとは思ってたけどさ……。
「
「えへへへへ」
それすらも
――この日から、俺のクラスのあだ名は“お父さん”になってしまった。
※※※
「“お父さん”ちょっと教科書見せてもらっていいですか」
転校してきたばかりで、まだ教科書が揃っていない
「そのあだ名やめて!」
「ふーんだ」
今度は、何故か義妹の機嫌が悪くなっている……。
「大体、なんなんですかそのあだ名」
「俺が聞きたいくらいだよ……」
間違いなく俺は
「兄さんはお父さんじゃなくて、兄さんなんだから……」
こちらには聞き取れないくらいの小声で、
よく分からないが、どうやら義妹だけがそのあだ名に疑問をもってくれているようだ!!
「お父さん! 消しゴム貸して!」
「
※※※
「お父さん、お父さん」
「お前に言われると、より一層ムカつくな」
放課後になると、
「なんでよ。本当にお父さんでしょ」
「同級生に“お父さん”はただの老け顔だから! ただの悪口だから!」
「考えすぎだよ」
腰のあたりが目の前にやってきて、少しだけ目のやり場に困る。
「じゃあ、お前は同級生に“お母さん”って言われて嬉しいのかよ」
「誰が太ってるって!!」
「ほら見ろ! そういうイメージが先行するじゃん!」
俺たちがそんな話をしている間も、
一学期では見られなかった光景だ。
「
「そう? 俺にはずっとあの調子だったけど」
「あなたには分からないようにしてたのかもね。憑き物が落ちた感じがするよ」
正直なところ、
「本当に
「ちょっと! 馬鹿にしないでよ!」
俺がそんなことを呟くと、
「おっ! 珍しくやる気じゃんか!」
「
「そっちかーーーい!!」
プライドもへったくれもない返事が返ってきた!
「はぁ……。本当にお前ってやつは」
「私、みんなと一緒に暮らせるなら
「君は常識って言葉は知ってる?」
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