番外編6 オフクロの味!
「
お盆明けのある日、
「どうしたの急に?」
「
「ほーーう」
「私が敵に塩を送ると思ってるのかしら!」
「お母さんに教わりたいっていうのもあるんだけど……」
「しょ、しょうがないなぁ~
早い! ちょろい! 雑魚い!
「も~、あの
「お
「……」
あれ!?
俺、置いてけぼりじゃない!?
※※※
「前にもこんなことあったよねぇ~」
「
母と娘が雑談をしながら、キッチンで作業をしている。
実に微笑ましい。
「二人とも! 俺も手伝おうか!」
「あなたは待ってて」
「はい……」
やることがないので
「
「
「はい……」
がーーーん!
愛する二人に邪険に扱われてしまった。
「うぅ……」
とぼとぼと、オフクロがいる居間に戻る。
俺の相手をしてくれるのはこのおばばしかいなかった……。
「なにしょげた顔してんのよ」
「別に……」
「ははーん! さては二人に邪魔にされてきたんでしょ!」
「オブラートって言葉知ってる?」
オフクロが、遠慮なく俺にそう言い放った!
「感慨深いねぇ。私から
やばい!
このままではオフクロの長い長い演説が始まってしまう!
「オフクロ!」
「なんだい」
「味噌汁が飲みたい! 豆腐とワカメのシンプルなやつ!」
強引に話を切り替える!
危ない危ない!
あのまま放置していたら何時間もその話を聞くことになってしまっていた!
「昔からあんたそれが好きだねぇ」
「シンプルイズベスト! 普通のが一番美味しい!」
「あんたにはご飯とふりかけがあれば満足だもんね。馬鹿舌ねぇ」
「ば、馬鹿舌って……」
今は湯井家の大切なお子様なのに失礼だぞ。
転生しても味覚は変わってないけどさ。
「そういえば、
「あんたと一緒、ぜーんぶあんたと一緒だよ。お父さんと全部同じやつがいいって」
「
そっかそっか! さすが俺の娘!
好き嫌いが多い
「食べ物だけじゃなくて、何でもお父さんと一緒が良いって言って聞かなくてね、女の子なのに本当に手を焼いたよ」
「へ、へぇ~」
そういや、俺の好きな漫画はしっかり
もしかすると俺の趣味嗜好は全部娘に筒抜けになっているのではないだろうか。
「これでようやく
「だといいけどなぁ」
※※※
「はい! できたよ!」
お盆の上には味噌汁のお椀が二つのっていた。
「最初は味噌汁でしょう!」
「いや、それはいいんだけど、なんで二つ?」
「じゃじゃん! ここで問題です! どっちが私が作ったやつで、どっちが
「はぁあああ!? これ外すと誰も得しないやつじゃんか!」
オフクロ曰く“馬鹿舌”の俺に、急に難題がきてしまった!
「絶対に
「つべこべ言ってないで当ててみてよ」
「くっ」
作ってくれた二人に怒られそうだけど味噌汁なんて誰が作っても同じ味にならないか!?
「
「うっ」
愛娘が、今日初めて俺のために料理をしてくれたのだ。
それをないがしろになんて誰ができようか!
漢
二人の期待に応えて見せる!
「ずずず」
「どう?」
「……」
片方の味噌汁に口をつける。
昔、懐かしのオフクロの味だった。
「……こっちが
「まだ両方飲んでないじゃん」
「だってオフクロと同じ味だもん」
「「おぉおお~!」」
パチパチパチ
二人が感心した声をあげながら拍手をしている。
「ふっ、俺を誰だと」
「さすが
「ちょ、ちょっと! 私のもちゃんと飲んでよ!」
「もちろん!」
“口に馴染みがある”
これすなわち、何の新鮮さもないということ!
何の刺激もないということ!
「ずずず」
「ど、どう!?
「!?!?」
口に味噌汁を含んで風味を楽し――。
ってしょっぱっ!
ってか辛い! 味噌汁で辛いって何!?
お年寄りが飲んだら塩分の過剰摂取で死んでしまうやつだ!
「どうどう!? 私、結構辛いやつ好きだからアレンジしたんだ~」
「お、美味しい! とても美味しいよ!」
しかし、娘が折角作ってくれた料理を美味しくないなんて言うことができるわけがない!
俺は勢いよくその味噌汁を飲むことにした!
「ごくごく! ぷはー! 美味しい!」
「へぇ~。あんたがそこまで言うなら私も飲んでみようかしらね」
「オフクロはやめとけ、死ぬぞ」
お、おかしいなぁ。
「お前もしかして知ってた?」
「何事も失敗から覚えないとね!」
「いや、あれ」
「
「ダメだこりゃ」
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