番外編4 もしかして……? side琴乃

◆ 古藤ことう琴乃ことの ◆



『もしかしてだけど♪ もしかしてだけど♪ それって――』


 お盆のテレビ特番で、お笑い芸人特集をやっていた。

 夜、ご飯を食べながら、おばあちゃんとなんとなくその番組を眺めていた。


「ねぇねぇ、おばあちゃん」

「なんだい琴乃ことの

「もし、私がお父さんと結婚したいって言ったらおかしい?」

「世間一般的には大分おかしいねぇ」


 おばあちゃんがお茶をすすりながら、私にそう答える。


「って、いきなりどうしたんだい?」

「おばあちゃんに聞いてみたくなったから」

「私がどうこう言っても止まらないくせに」

「うっ」


 おばあちゃんが呆れた顔で私を見つめる。


「あんなに暗かった琴乃ことのが変わったもんだねぇ」

「うぅ……それはあんまり言わないでよ。特に唯人ゆいと君と心春こはるちゃんには絶対に言わないでよね!」


 おばあちゃんの言う通り、確かに私は唯人ゆいと君と出会うまでは暗い性格をしていたと思う。


 死んだ魚の目ばかりしてないで頑張りなさいと、よくおばあちゃんに言われていたくらいだ。


 そんな私も高校受験は、お父さんとお母さんと同じ学校に行くために本当に頑張った。


 今、思うとこの高校に入ったから二人に再会できたのだから、本当にあのとき頑張って良かったと思っている。


「まぁ、琴乃ことのの思った通りにすればいいでしょう」

「いいの!?」

「後はあんたの親がどうするかだし」


 おばあちゃんがどう思ってるかが少し心配だったけど、おばあちゃん自身は全然気にしていないようだった。


「あんたも私の娘みたいなものだしね。あんたが幸せになるためなら何でもやってみればいいと思ってるよ」

「おばあちゃん……」


 少しだけ目元がうるっとしてしまう。

 最近、ようやく色んな人に支えられて生きてきたのだと分かることができた。


「おばあちゃん! おばあちゃん!」

「今度はなんだい?」

「もしかしてだけど! もしかしてだけど!」

「まーた、さっきのテレビに影響されちゃって」


 じゃあおばあちゃんに思い切って聞いてみよう!

 もしかしたらそうなるかもしれないし!


「私と唯人ゆいと君に子供ができたら、その子はおばあちゃんの孫になるの!? それともひ孫!?」

「……」


 少しだけ沈黙が流れる。

 おばあちゃんのしわくちゃな顔が、珍しく驚いた表情をしていた。


「あんたの育て方は間違えたかもね……」

「なんで!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る