40. 娘、父の携帯を暴く!
お、おおお落ち着け……!
パソコンのときは同級生に擬態することによって、なんとかその場を乗り切ることができたが、今はそうはいかない!
昔の写真……!
昔の写真だけなら大丈夫なはずだ!
危険なのはネットの閲覧履歴だ……!
パソコンよりもお手軽に見ることができるので、何が出てくるか分かったもんじゃない!
「あっ、暗証番号の画面になっちゃった」
そうだ!
そのまま暗証番号忘れたことにすればいいんだ!
「あー、昔のだから暗証番号なんて忘れちゃったなぁ~」
「1231だよ」
「おいっ!!」
そもそも、こいつが知っていること自体がおかしいような気もするんだけど!
「1231~と!」
あっさり携帯のロックが解除された。
「メッセージのやり取りとかは見ないから安心して!」
「そ、そう?」
くっ……可愛いけど、今の俺にはその笑顔がとてもつらい!
「えっ、メッセージも見てみようよ」
「おい」
娘が俺に気を使ってくれたのに、
できた娘に、できない嫁!
もっとバランス取って欲しい!
「人のメッセージなんて見ても面白くないだろ!」
「面白いし!」
やましいことは何もしていないはずなのにこの焦燥感は一体なんだ!?
大体、誰とどのメッセージのやり取りをしたかなんて忘れてるって言うの!
「あっ、メッセージのやり取り
「そうだっけ?」
なーんだ。
たかが
『
『ほう』
『https://~~~~~~/ntr』
「……」
すさまじく嫌な予感がする。
どういった内容の動画だかは全然覚えていないが、URLの末尾に不穏な文字列が並んでいやがる。
「二人でおすすめの動画を見たりしてたんだね」
「ただの仲良しじゃん」
期待していたものが出てこなかったからか、親子そろってつまらそうな顔をしている。
そうだろ? 男同士のメッセージなんて見てもつまらないだろ?
さぁ! そのまま画面をそっと閉じるんだ!
「
「さぁ~? 昔のことなんて忘れちゃったなぁ~」
「ふーん。じゃあ見てみよう!」
「って、ちょっとぉおおお!?」
「あっ」
“インターネットに接続されてません”
「……」
背中に嫌な汗をかいてしまっていた。
か、間一髪助かったみたいだ……!
※※※
「何故、今になって俺の携帯を復活させた!?」
「今のあんたには必要かなぁと思って」
「必要じゃねーよ! むしろ大ピンチだったわ!」
俺の言葉にオフクロがケラケラと笑っている!
自分の子供を殺そうとしたことに全然気付いていない!
「ほら、携帯って色んな人の連絡先が入ってるから」
「はぁ?」
オフクロがこつんと俺の頭を小突いてきた。
「どういうこと?」
「相変わらず察しが悪いねぇ。
「ん?」
「
「……」
あんまりそういうことを考えたときなかったな。
「まぁまぁ、難しいこと考えないで。これがあんたの生きた証かもしれないんだから」
「生きた証ねぇ」
初めて親父に携帯を買ってもらったのは高校の入学祝いのときだっけ。
それから大学に入って、社会人になって……。
新しい機種に何度か買い替えはしてきたが、その都度追加されていく連絡先はそのまま新しい携帯に移しながら使ってきた。
「じゃあ預かるよ」
「って、あんたの携帯はあっちにあるんだけどね」
向こうからわいわいと二人の声が聞こえてきた。
「見て見て
「ずるい! じゃあ私の携帯も登録しておく! 写真もっと見たい!」
前世の嫁と娘がきゃいきゃい騒いでいる。
「
「言い方」
まさかこの携帯の連絡先が増えるなんて思わなかったわ……。
「どーれ! 唯人君ってどんなサイト見てたのか見ちゃおーー!」
「ね、ネットの閲覧履歴なんて残ってないから」
「ふむふむ」
「……」
「……」
「ねぇねぇ
「な、なに!?」
「このぽるんふぶってどんなサイト?」
「
その言葉を聞いた
「それエッチなサイトだよ!」
「なんでお前はそんなにバラしたがるの!? アホなの!?」
※※※
家に帰り、リビングのソファーで、前世の俺の携帯を眺めていた。
仕事のやり取りのメッセージや友人や同僚との他愛のない会話。
そして、あの日のことで、何人もの人が俺のことを心配してメッセージを送ってきてくれていた。
それに返信することなく、この携帯の時間は止まってしまっている。
オフクロの言うように、確かに
「
二度ある人生も捨てたもんじゃないかもしれない。
こうして
「よーし! 二人とも幸せにするために頑張らないと! とりあえず金だな!」
前世のときのように貧乏になるのはごめんだ!
二週目の特権を生かして、今からお金を貯めていこう!
「兄さんどうしたんですか? いきなりお金って」
しまった……。
誰もいないと思ってつい大きな声を出してしまった。
ばっちり
「ば、バイトでもしようかなって」
「アルバイトですか?」
「うん! お金っていっぱいある分には困らないから!」
「あははは、兄さんってそういう俗っぽいこと言うんですね」
「何も笑わなくても!」
「いえいえ、そういうのすごくいいと思います! 私も兄さんと同じバイトしようかなぁ」
「えっ?」
「あっ、
「うん、今行く」
そう言って
最初は戸惑ったけど、こんな風に妹ができるっていうのも悪くないな。こういうやり取りすらとても新鮮だ。
前の家族と再会して、新しい家族ができて。
この夏休みに、色んな人の思いを聞いて分かったことがある。
――自分にとって大切じゃないものなんてないんだなぁと。
俺は
「あっ」
「どうしたんですか?」
「
「いえいえ! 使ってもらえるなんて嬉しいです!」
そうだ!
――もし、そのときが来ても悔いがないように。
今の気持ちを家族のために残しておこう。
「ところで兄さん」
「なに?」
「ぽるんふぶってなんですか?」
「今すぐその言葉は忘れるように」
何で義妹にまでその言葉が伝達してるんだ!?
げ、現代に転生してもう一つ分かったことがある!
死んだときのパソコンと携帯の滅失方法は絶対に考えておくべきだと!!!
第二章「今昔家族物語 ~突然できた家族と前世の娘~」編 完
◆
夢を見た。
これは中学の頃の夢だろうか。
あの子を見ると、心が明るくなる。
あの子を見ると、心がふわふわになる。
遠くで見てるだけ幸せな気持ちになる。
ただ遠くで見てるだけで今日も頑張ろうという気持ちになる。
けど、あの子はいつも暗い顔をしている。
いつもつまらなさそうな顔をしている。
可愛いけど、どこか影のある……。
そんなあの子のことを僕はいつも考えてしまっていた。
これがきっと好きっていう気持ちなのかなぁ……。
この前、偶然その子の名前を耳にした。
――その子は“
次章「同級生大戦争 ~今の俺vs昔の俺~」編に続く!
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