36. 攻略しません、させません。 中編
四人でふらっと縁日に立ち寄った。
「あれ? そういえば
「二人になりたいって言ってどこかに行っちゃいました」
義妹が俺の質問にさらっと答える。
ぜ、絶対にこれを狙ってただろアイツ……!
あんまりいい想像ができないから義父たちのことは深く考えないようにしよう!
「もふもふ、わたあめおいひいよ
わたあめをほおばりながら、
いつの間にか、
「ぐすっ……」
「どうした
「またって何よ! 何もしてないわよ! 失礼ね!」
「こんな風にみんなでお祭りをまわれる日がくると思わなかったから」
今にも泣き出しそうなくらい
「
その様子に、俺も少しだけうるっとしてしまう。
そうだよな……。
俺たちは、こんな当たり前のことを今までできなかったんだもんな。
「ほら! そんな顔してないで次の屋台に行くよ
「う、うん!」
「三人とも少し雰囲気変わりました?」
ふと、
「そんな風に見える?」
「少しだけ。
……よく見てるなぁ。
きっとこの子って、周りにすごく気を使う子なんだろうな。
あの
「かもね! 俺たちも二人に置いてかれないようにしよう!」
「は、はい」
そう言って、
※※※
「ぐふーーっ、お腹いっぱい!」
「まだまだ残ってるんだけど!」
「後は任せた……」
こ、こいつはいつもそうだ!
食べ放題のときだって全然食べることができずにすぐにギブアップするし!
「
「沢山食べていっぱい育ちなさい」
どの口が言うんでしょうかこの人は……。
むしろ体格的に育たないといけないのはお前のほうだぞ!
「今、失礼なこと考えてたでしょ」
「普通に心を読むな」
「何年の付き合いだと思ってんのよ」
俺と
「お二人ってそんなに付き合い長いんですか?」
「あっ、あはははは~! 高校! 高校からだよ!」
「でも今、何年もって」
「な、なんかそういう気がしちゃって」
あちゃー。
また
なんでこいつはいつもこう……。
「なーんだ。お二人ってそういう雰囲気出てるので本当にそうなのかと思いました」
「そういう雰囲気?」
「
阿吽の呼吸かーー。
そりゃ前世は幼馴染で夫婦だったわけだしなぁ。
「
「涙でよ゛く分がんない!」
また
「うっうぅ、こんな風に……こんな風にできる日がくるなんて」
「もー、今日の
「だっべーー」
「来月は
「やる! 全部やる! うっうぅ……!」
「きょ、今日の
何も知らない
「今日は特別な日だからさ。こんなんだけどこれからも
「えっ? それはもちろんですが……」
ちょっと年寄り臭かったかな。
うちのオフクロも、俺の友達によくそんなこと言ってたっけ。
きっとオフクロもこういう気持ちだったのかな?
※※※
「
「はいはい」
分かっているのか、分かってないのか!
普通に恋人繋ぎをしてきた!
「
「分かってるって」
「ううぅ……まさかまた――」
「泣いてばっかりじゃ花火見れないぞ!」
「分かってる!」
ヒューーーー
ドォン!
色とりどりの花火が次から次へと上がっていく。
「きれーー!」
「そうだな」
「
「そんなことないって」
(きれーー!)
(そうだなぁ)
(気持ちが全然こもってないじゃん
……。
ふと
「たーーまやーー!」
たーまーやーなんて今の子は知っているのだろうか。
本当に楽しそうだなぁこいつ。
ボケてて、どこかふわふわしてるけど、明るくてとても暖かい子だった。
つらいことがあっても、気持ちがささくれ立ってしまうことがあっても、この子と話しているとどこか和んでしまう、そんな不思議な魅力を持つ子だった。
だから、俺はいつの間にかそんな子のことが好きになって――。
「……
「どうしたの
「この前の話の続きいいか?」
「この前の?」
「うん、“好き”って話」
「それがどうしたの?」
「俺さ、やっぱり女性として好きなのはお前のお母さんなんだ」
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