35. 攻略しません、させません。 前編
「なんだい息子よ。また悩んだ顔をしているね」
夕食が終わり、縁側で涼んでいたら、義父の
「人生、悩んでこそですから」
「おっ、今が思春期とは思えないおじさん臭い発言だね」
「うぐっ」
なにやらご機嫌な
“息子よ”にまずツッコむべきだったか。
「今日の話、
「ま、まぁ……。今だけだと思いますけど」
へぇ~。
「モテる男はつらいね~」
「モテてるわけじゃないと思いますけどね」
「そう?
「そうですかね……」
大人びてるもなにも、お前と同じおっさんなんだよ俺!
生きててもコイツみたいに髪はなくなっていなかったと思うけどな!
「それで、どうしてここに来たんですか?」
「う゛っ……
oh……。
前言撤回だ。
全然、雪解けしてなかった。
(えへへへ。お父さんの匂いがする!)
いや、うちの
――今日の昼間の出来事を少し思い出す。
●●●
「
「そりゃ好きさ。家族なんだし」
「ううん、私が言っているのは女の人としてってことだよ?
「前世は夫婦だったしなぁ」
「じゃあ今度もそうなるの?」
「えっ?」
「今度も
「……これからのことは誰にも分からないよ」
「じゃあ私にもチャンスしかないってことだよね!」
「え゛っ!?」
「私、
●●●
「……」
あまりにも真っ直ぐすぎる
今まで
子供だと思っていた
「若いうちはいっぱい悩むといいよ。それが人生の糧になるから」
「そういう
「そりゃあるさ! これから生まれてくる子供のことに
おぇええ! 最後の最後に余計なこと言いいやがって!
色々想像しちゃうだろうが!
「あれ? 今の笑うところなんだけど」
「笑えない! 全然笑えない! 普通に本気に聞こえるから!」
「あはははは!」
「いいね! そのツッコミ、俺の親友に凄く似てるよ! 」
だろうな!
だって全部俺だし!
「お互いいっぱい悩んで、いっぱい成長できるようにしよう! 自分の家族のためにもね!」
はぁ……。
俺もこいつみたいに少しは能天気になれればいいんだけどなぁ。
※※※
お盆最終日
花火大会当日
「こんにちはーー!」
今日も
前に話した通り、今日は三人で花火大会に行く予定だ。
「あっ!
……のはずだったのだが、
「ねぇねぇ!
「これお母さんのだって! 可愛いでしょ!」
あー。
通りで見覚えがあると思ったら。
その浴衣は確か高校の時に初めて
「似合ってるよ。とても可愛い」
「えへへへ」
俺の言葉に
「に、兄さん私は?」
そういうこと気にするなんて、年頃の女の子っぽいなぁ二人とも。
「
「そ、そうですか」
「はぁはぁ! 遅れちゃったーー! ごめん!」
三人でしばらくそんなやり取りをしていたら、
「あ゛ーーー! 二人とも浴衣着ててズルい! あっ、
「ば、馬鹿っ!」
思いっきり前世のことを口走りそうになっていたので、急いで
ま、まだ前世バレチキンレース続いてたのか!?
俺たちが
「ふがふががが!」
「
うちの娘がわけわからんことを言っている!
「
「い、いや、
「ん~~~!」
ポフッ
仕方ないので
「ん~~!」
ナニコレ?
左手で前世の嫁の、右手で前世の娘の口を抑えるという特殊すぎるシチュエーション。ついでに義妹がどうしていいのか分からずおたおたしている。
「ぷはーー! ほら、早く売店行こうよ! お腹空いちゃった!」
「あっ、私もお腹空きました!」
「たこ焼き食べよ! 焼きそば食べよ! ほら、
「ふがっ?」
「
――浴衣の裾のシミが一瞬だけ目に入ってしまった。
●●●
「はい、
「恥ずかしいし、チョコバナナは無理!」
「早く~! お兄ちゃんに見つかっちゃうよ! あっ……」
「あっ、ごめん……。折角、綺麗な白い浴衣なのにシミになっちゃうかな」
「
「
「クリーニング出したら落ちるんじゃない? まぁ、落ちなくてもこれも思い出ってことで~」
「めっちゃ適当」
「そんなのもう知ってるでしょ? このシミは
「そんな思い出いらん! 早く忘れろ!」
●●●
そんなこともあったなぁ。
本当にそっくりだ。
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