第三話 『地獄の矛盾』
幸子さんが、こう言います。
『女王さまからの伝言です。やましんさん、収入ゼロみたいなので、地獄放送局のアルバイトしませんか。在宅でできます。毎週土曜と日曜の晩に、『真夜中クラシック』の、キャスターをやってくださいませんか。相手役は、幸子さん。放送時間は、深夜11時から12時まで。なに、おしゃべりは、ちょっとで、良いうつうつな、クラシック音楽を選んでください。内容は、おまかせします。時給10000ドリムでいかが。』
『なんと、一万ドリム。』
『機材は幸子が持ち込みます。地獄放送局のスタッフがふた鬼きます。簡単、簡単。』
『まあ、暇だし、興味はあるなあ。』
『じゃあ、きまり。やましんさん、仕事で講師とかしてたし、コンサートの司会もしてたけれども、あんなにしゃべらないでね。原稿は書いてね。事前にチェックはします。放送コードもありますから。あ、これ、地獄放送局のお約束。読んどいてね。開始は、来月から。』
『早いな。』
『そんなものよ。女王さまがおっしゃいますに、地獄の経営って、基本的に矛盾の上に成り立ってる。罪人とはいえ、元人間に違いないし、罪の内容も様々。時の権力に逆らった罪人もある。今なら罪に成らない場合も。さらに、すでに死んだ人間に苦役を課して、何になるのか? 例えば、現世の権力の片棒を担いでみるようなのは、いかがなものか、それは、いったい、どうする。でも、それを気にしてたら、地獄は成り立たない。しかし、それでは、地獄の独立性がなくなってしまう。女王さまは、あえて、新時代の地獄を目指すって。放送局も、そのいっかんなんだ。とね。』
『弘子さんは、あまりに、優秀すぎだしな。いいよ、ぼくは、気にしない。頭では、歯が立たない。』
まあ、気にしないわけがないのが、本心ではありますけれど。
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