第51話 こぼれ落ちた幸せ⑮
「さっき鑑識から報告が上がってな、遺体は3体、全員男だ。40〜50代が二人、20代が一人だ。中年男性の方は一年以上前に殺され、若い方は半年前ぐらいだそうだ。3人とも死体の一部の骨が熱を加えられていて、死体は斧みたいなもので切断されたのではとのことだ。」
「班長、那津の不倫相手が男女関係のもつれから殺した可能性大ですよね。」
「焦るなよ。那津は朝から夕方まで昼飯時以外は畑にいるんだ。よそで殺した死体を穴に投げ込んでも車も人もほとんど通らないから知られることはない。誰が殺してもわからないんだ。」
勢いづく成瀬を東堂がなだめ、藤城もうなずいてあとを受けた。
「浦原家を恨む人間は多そうですし、こちら関係の可能性もまだあリますよ。」
「那津や浦原家の周りでいなくなったヤツがいないか調べてくれ。」
沢木の言葉を受けて引き続き、今田と成瀬組は那津の周辺を、東堂と藤城組は浦原家を調べることにした。
次の日の午後、今田と成瀬は駐車場に止めた車内で打ち合わせを始めた。
「成瀬は那津と親しくなって不倫相手のこと、浦原家の内情を聞き出せ。俺はお前が浦原那津から聞いた話のウラを取る。もし今日不倫相手が来たら、すぐ知らせろ。」
「不倫相手本人に事情聴取ですか?」
「いや、まず不倫相手のことを調べよう。」
成瀬は大きくうなずくと、一足先に那津の病室に向かった。
成瀬が病室を訪れると那津は体を起こし、窓の外を眺めていた。
「こんにちは。体調はどうですか?」
成瀬の声に振り向く那津は相変わらず寂しげに微笑む。
「今日も来てくださったの?」
「那津さんのお話、気になって。続きが聞きたいです。そういえば那津さんのお母さんは大丈夫ですか?」
「ええ。」
「施設に入られたの?それとも那津さんの代わりに面倒見てくれる人がいるとか?」
「成瀬さん、昨日の続きをお話しましょうか?」
はやる成瀬に那津は静かに続きを話し始めた。
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