第50話 こぼれ落ちた幸せ⑭

「申し訳ありません。まだ仲良くなるのが精一杯です。ただ子供の頃から母親に振り回されて育ってきたようですね。高校を卒業してから、遠くに就職した頃の話を聞いているところです。那津さんが浦原家の嫁になることが条件の借金があったようです。」


「那津は借金のカタに結婚させられたんだな。俺の方はナースに聞き込んでみたんだが、お前と入れ違いに病室に入った男、浦原の恋人らしいぞ。」

「あの若い男ですか?不倫ですね。じゃあ、あの男が男女関係のもつれで浦原那津に関係する誰かを殺してあの穴に隠した可能性がありますね。」

「うむ。署に戻って他のヤツが拾ってきた情報と合わせよう。何か見えてきそうな気がする。」

成瀬は大きくうなずくと車のエンジンをかけた。


 香取東署に戻ると沢木班長が、すでに戻っていた東堂と藤城から話を聞いていた。藤城はメモを見ながら聞き込みの結果を報告していた。

「浦原家は金持ちで近隣の何人にも金を貸していたようです。それも結構アコギなことをしていたようで、恨んでいる人間も多そうです。」

「那津も借金のカタに嫁にしたようです。当主の浦原徳子は孫の学費のためと那津に水商売させていたようですね。」

東堂はホワイトボードに自分たちのチームが聞き込んだことを書いていった。


そこへ今田と成瀬が加わった。

「遅くなりました。」

「おう、どうだった?」

沢木が手を上げ、東堂と藤城も振り向いた。

「病院で聞き込んだところ、浦原那津には不倫相手がいて、その男が今、会いに来ています。」

「成瀬、那津自身はどうだ?」

「那津の母親は浦原の奥さんという人物に300万ほど借金をしたようで、その関係で那津は浦原家の人間になったようです。」

今田がホワイトボードに聞き込んだことを書き込んだ。


「引き続き、成瀬は那津と親しくなって浦原家や不倫相手のことを聞き出せ。」

沢木は鑑識から渡された報告書をめくりながらホワイトボードに書き込み始めた。

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