第46話 こぼれ落ちた幸せ⑩
「すみません、お母さんがヘルパーにご飯がマズイと投げつけるんです。トイレもポータブルを使うのを嫌がられて家のトイレを使おうとなさるもんですから間に合わなくて服も家も汚れてしまって、この時間数では足りません。それにヘルパーが嫌がって見つからないんです。」
「ええ?そんなことが。すみません、母を説得します。お願いですからもう一度ヘルパーさんに戻っていただけないでしょうか?」
那津は電話を切るとすぐ母に電話をかけた。
「お母さん、今ヘルパーさんの会社から電話があったよ。なんでヘルパーさんにワガママ言うの?これじゃあヘルパーさん、誰も来なくなるよ。」
もう最後の方は悲鳴のようになった。
「フン、あんなマズイご飯、食べられるわけないじゃないか。なんで部屋でトイレしなきゃなんないのよ。なんでこのアタシがオムツなんかしなきゃなんないの!お前は本当に親不孝ものだよ!」
「お母さんが協力してくれなかったらアタシ、働き続けられないよ。」
「お前がこっちで仕事見つけりゃいいじゃないか?アンタがアタシの面倒みたらタダだろうが。いつまで経っても頭の悪い子だね。」
薄ら笑いを浮かべたもも子は電話を叩き切った。
那津は次の日、ヘルパー派遣会社からお母さんを説得できなければ契約を解除すると言い渡された。慌てて休みを取り、那津は実家に帰った。実家へ向かう高速バスの中で正行から連絡が入った。
「那津、こんな時にゴメン。ウチのばあちゃんが危ないと電話があった。一緒にばあちゃんに会ってくれないか?」
正行の祖母は正行の嫁に会うのを何よりの楽しみにしており、闘病生活の励みにしていると前に正行から聞いたことがある。那津は正行の思いに応えられないのが辛かった。どうにかならないものかと考えた果てにあることを思いついた。
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