第34話 那津の幸せ⑪

「もう、アンタとは終わりだ!って縁切った。しばらくはごめん、とか言ってきたけど、もうなんにも言ってこない。ただいま彼氏募集中!」

アキは朗らかに宣言。那津と正行は大きく息を吐いた。

「良かった!飲もう。アキさんの新たな門出に乾杯しよう。今夜はご馳走するよ。」

三人は祝杯をあげた。新しい彼氏のあてが既に複数いるというアキの話に盛り上がり、三人はジョッキを重ねた。


「ごめん、トイレ行ってくるね。」

那津が席を離れた。すっかり打ち解けた正行とアキ。

「アキさん、ちょっといい?」

正行はアキに相談を持ちかけた。

「実は僕のおばあちゃんが体調よくなくて、死ぬ前に僕のお嫁さんを見たいと言い出してね。これを機会に那津にプロポーズして、おばあちゃんに会わせようと思ってるんだ。」


「ステキじゃない!那津ならいいお嫁さんになると思うよ。那津はいいなあ、正行さんみたいな人のお嫁さんになれて。」

心の底から羨ましそうにアキはこたえた。

「で、今度指輪を送ろうと思うんだ。那津はどんなのがいいのかわからなくて。」

誠実な正行らしい悩み。アキは微笑ましいと思い、その相談に乗ることにした。

「この間のお礼に一緒にデパートに見に行ったげようか?」

すると正行はアキに両手を合わせた。

「アキ先生、頼みます!」

アキと正行は指輪を見に行く約束をした。


 デパートのジュエリー売り場でアキが見立ててくれた指輪は立爪のダイヤの隣に小さなダイヤが煌めくもの。

「もし私ならこんなのもらったら、ダンナ様を一生大好きになるわ。」

ニッコリ笑うアキに言われて正行は決めた。

「うん、これにする。那津に似合うと思う。アキさん、ありがとう。」

正行の嬉しそうな顔をアキはうらやましそうに見た。



 その指輪を持って正行は那津をデートに誘うことにした。来月は那津の誕生日がある。正行はどうやってプロポーズしようかと頭をひねった。

高級なレストランを予約しよう。

どのタイミングで指輪を渡す?

嬉しい悩みに正行の頬は緩んだ。那津の誕生日にデートをすることを那津と約束した正行はレストランの予約を入れた。そして那津にメッセージを送った。

「那津、次のデートはちょっといいレストランに予約入れたから、おしゃれしておいでよ。」

メッセージを読んだ那津はもしかして?とドキドキしてなかなか眠れなかった。


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