第25話 那津の幸せ➁
東堂は30代後半の無骨な感じの男、それに対し藤城はまだ20代、細マッチョのちょっとしたイケメンである。
「すみません、警察です。浦原那津さんをご存知ですか?良かったらお話を聞かせてください。」
「ああ、那津さん、知ってるよ。那津さんに何かあったのかい?」
作業の手を止め、壮年の男と女は東堂と藤城のところへやって来た。
「浦原さんの裏庭から死体が見つかりましてね、不審な車や人を見かけたことはないですか?」
「那津さんちの裏庭に!」
二人はとても驚いて顔を見合わせた。
「あの辺りは車もあんまり通らないし、人が歩いてるところなんて見たこともないよ。」
男の言葉に女もうなずいた。
東堂と藤城も那津の家の近くを通ってここまで来たが、来る間にすれ違う車はほとんどなかった。
「はあ、そうですか。ちなみに浦原さんはどんな方なんですか?」
「俺らが畑仕事を教えてやったんだけど、那津さんはおとなしくて真面目で優しくていい人ですよ。」
「よくご存知なんですね。お名前教えてもらえますか?那津さんとはどういうご関係なんですか?」
「俺は川村正太郎、隣のコイツは嫁のきみ子だよ。うちの畑は浦原さんちの隣でね、その関係で浦原の奥さんから那津さんに農作業を教えてやってくれと頼まれてたんだよ。」
「那津さんはもともと農家の方じゃないんですか?」
「那津さんはお母さんの借金のカタに浦原の嫁になったんですよ。それまでは農作業なんてしたことなかったって言ってましたよ。」
「借金?浦原さんの嫁ぎ先ってどんな家なんです?」
メモを取りながら藤城が聞くと、正太郎は吐き捨てるように言った。
「とんでもないがめつい一家だよ。孫の学費のために奥さんは那津さんに水商売までさせてんだから。」
「そうそう。那津さんだけじゃなく他にもお金貸して、返せないならって千葉の歓楽街で女の子を働かせてたこともあるらしいよ。あ、そういえば…」
きみ子は那津の様子がおかしかったことを思い出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます