与太昔話「おおいちもつやろう」
クボッチ
おおいちもつやろう
おおいちもつやろうは、生まれながらの乱暴者だ。己に指図する者には、例え育ての親の翁と婆であろうとその自慢のイチモツで暴力をふるい、己にたてつく村の者にもまた、イチモツで暴力をふるってきた。唯我独尊、仏恥義理、夜露死苦である。その暴力のすさまじいこと、すさまじいこと…。村で彼に逆らえるものはいなくなった。
そのうちおおいちもつやろうは増長するようになった。元から調子はこいていたが、己を止める者が皆無なこと、己と目を合わせたものが0・5秒以内に目をそらすことにより、歯止めがきかなかなくなった。
「俺がルールだ」
彼は確信し、全裸で日々を過ごすことに決めた。気持ちがいいからだ。翁と婆は怯え、家から出て行ったが、たろうはゴキゲンにサムシングをぶらつかせながら生を謳歌していた。
ところでたろうはたくましい体つきをしている。仁王像のような巨躯に、引き締まった尻、言わずと知れた棍棒のようなイチモツ…。すれ違う者はその異様な迫力に思わず、「うおっ」と声を上げてしまう。全裸の男が目の前に急に出現すれば無理もない話なのだが、たろうはその声がたまらなく嫌いだった。己が性的消費をされているような、搾取をされているような、鬱屈とし、悶々とした気分になる。許せない、耐え難い屈辱が彼を襲い、暴力が被害者を襲った。
「俺の体をいやらしい目で見るな!!!」
理不尽である。「そんな恰好でうろつくからでは?」「あんたに興奮したから叫んだわけじゃない」薄れゆく意識の中、被害者たちはみな同じことを考えた。そんなことを続けているものだから、被害者は日々増えていく。おおいちもつやろうは怒りに駆られ益々イチモツを振り回した。
村は滅びた。
廃村となった村に相変わらずおおいちもつやろうはゴキゲンに住み続けていた。
ーあの廃村には魔羅の化け物が出るーいつしかそんな噂が立ち、おおいちもつやろうは討伐対象となり、腕利きたちから命を狙われた。
「やめ゛でぐれ゛ぇ!!!!」
力自慢のおおいちもつやろうも何人もの腕利き達から狙われては敵わない。
涙ながらに懇願するも去勢され、おおいちもつやろうは絶命した。討伐の証として腕利き達はイチモツを持ち帰った。それは持ち主と切り離されても、今にも動き出さん勢いでしばらく脈打っていたという。そのイチモツは時の幕府に献上され、ミイラにされた。今ではG県の某神社にて、御神体として祀られている。
与太昔話「おおいちもつやろう」 クボッチ @morodashibanana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます