第3話 処刑人
「おはようマモル」
「おはようミーシャ」
「元気がでたようだね! いひひっ、うん」
「ミーシャのおかげだよ」
「マモルが元気になったんならよいんだ..うん」
《あれ確実にやっているな》
《マモル食われちゃったのか..》
「二人で話している所悪いがちょっとマモルを借りて行くぞ!」
「トム...」
「まぁ悪い事にはならない、ミーシャ安心しろ、ただルールだけは説明しなくちゃならない」
「それじゃ、俺も」
「なぁ、マモル、そのやっちまったのか?」
「ああっ、済まない誘惑に負けた」
「一応、説明しておくが本来は、ボスである俺や、他のメンバー、この場合はオルトの許可なくして男女の仲になる事は許されない」
「俺はどうすれば良いんだ..追放とかパーティーを抜けなくちゃいけないのか」
「いや、今回は問題ない、ミーシャは混じり物だ、俺もオルトも女としては見ていないし、ミーシャを女としては好きでは無い」
「俺からしても良く抱いた、そう思える位だな」
「それじゃ..」
「何も問題が無い、だがなマモル、覚えて置け! 俺もオルトも好きで無いから問題が無かったんだ..ミーシャがどちらかの女だったら、けじめをつけなくちゃならなかったんだ..」
「すまない」
「まぁな寧ろ、俺は半分たきつけていたから問題は無い..だがもし彼奴が俺の女だったら、殺し合うか、けじめで腕一本だな」
「そこ迄の事だったんだな..オルト、常識が俺は本当に無いな..」
「確かに危ういな..解らない事とかは今度から、俺かオルト..いやミーシャに聞け、解ったな」
「ありがとう」
「それで、ちゃんと責任はとれよ..」
「それが、俺は責任が取れないかも知れない」
「おい、それは聞き捨てならねぇ..彼奴は仲間でもあるんだぜ..」
「話しだいじゃけじめが必要だな」
俺は10年後に帰らなければならない事を「女神」を除いて誤魔化すように話した。
「ぶあはははははっ、傑作だな、あのよ..お前本当に良い所の坊ちゃんだったんだな..そう思わないかオルト!」
「本当に此奴は..あはははははは..結婚でもする気か..ぷぷぷっ可笑しい..本当に..あははははっ傑作...」
「俺はおかしな事を言ったのか?」
「あのよ..ここはスラムなんだ、そんな責任なんて余程じゃなきゃ取らねぇよ」
「そんな責任なんてとらせたら、オルトなんか殺されるぞ」
「どういう事だ?」
「やっちまったからには付き合えってだけだ」
「....何だそれ?」
「本当にメンドクサイな..此処まで常識が違うとはな..」
「はぁ、俺が説明してやるよ、だだ、一回はちゃんと付き合え、それだけだ、付き合って反りが合わなければ別れても仕方ない、当たり前だろう?」
ようは、やっちまったんだから、ちゃんと交際しろ..それだけか..
「解ったよ」
「だが、忘れるな! これはミーシャが混じり物だから、これで済んだんだ、俺かオルトの女だったら、只で済まなかった、それは覚えておけよ..暗黙のルールだ」
「解った」
「それでよ..此処からは、別の話だ..ミーシャには言うなよ...」
「解った」
「よくあの臭いミーシャを抱けたな..そのなんだ..生ごみの様な匂いがしただろう?」
「それは風呂にも入ってないんだから仕方ないだろう? お互い様だ..」
「マモル..気が付かないのか?..今の俺臭いか?」
オルトは俺を抱き寄せた。
「やめろ、オルト、俺はそう言う気はないぞ」
「違う! 匂いだ匂い..」
「余り臭くないな..」
「だろう? トムの匂いも嗅いでみろ」
「臭くない....何でだ?」
「風呂なんか流石に入らないが水浴び位はするぞ」
「川で体を洗ったり、井戸水で体を拭く位はするからな」
「だったら、何であんなに臭かったんだ..」
「あれはミーシャの体臭だよ、あの臭いはなミーシャが水浴びをしたって消えないんだ」
「オークやゴブリンの汗が臭いのと同じでミーシャが臭いんだよ」
「それでな、お前ら付き合いだしたのなら、今日からはオルトと俺 お前とミーシャに別れて寝よう」
「ボス、川の字で寝るのはボスの特権じゃないのか?」
「トムで良いよ..そんな事したらミーシャが凍えて死んじまうだろう? だからそう言うしか無かった..彼奴は彼奴なりに遠慮するからな」
トムにしてもオルトにしても優しいな..しかも面倒見も良い。
「そうか..だけど、トムとオルトってそう言う仲なのか?..ホモ?」
「お前、殺すぞ..俺はノーマルだ」
「俺もお前みたいな変態じゃない..」
「俺が変態? 何故だ..普通だろう」
「なぁ..常識を教えてやる..混じり物とやれた時点で、誰もがお前を変態と呼ぶと思うぞ、まじ常識だからな?」
「嘘だろう?」
「真実だ、諦めろ..」
ミーシャに聞けない事を二人は教えてくれた。
ミーシャのお母さんはエルフだったらしい、「らしい」と言うのはトム達は噂しか知らないからだ。
恐らく、何かの魔物の巣で苗床にされていたのだろう..保護された時にはミーシャを孕んでいた。
だが、街の人は最初はそうは思わなかった。
普通に苗床にされていたなら、巣ごと討伐された時に冒険者が持って帰る事でしか生還出来ない。
だけど、ミーシャの母親は頭は可笑しかったが..一人で街に入ってきた。
その事から魔物ではなく、盗賊にでも犯されて頭が可笑しくなった、そう思われていたそうだ。
だが、生まれてきたのは「混ざり物」ミーシャだった。
ミーシャを生んで、頭が可笑しいながら育てていたそうだが..ミーシャが小さい頃死んでしまったらしい..
その後ミーシャは、かっぱらい等で生活をたてて生きていたそうだ、そこをトムに拾われ今に至る。
「トム、マジで天使だな..」
「違うぞ、俺はお前やミーシャやオルトから巻き上げて生きているんだ」
「はいはい、そういう事にしときますよ! トムはこう言う話が嫌いだからこれで終わりだ」
「それじゃトム、俺は今日は何をすれば良いんだ?」
トムは俺が足が悪いのを気に掛けて、走らないで良い場所を任せる。
その分、走って逃げるような危ない仕事を三人にさせているようで申し訳ない。
「今日はギルドからマモルに呼び出しが来ているからそっちに行ってくれ」
「了解」
「私もマモルについて行って良いかな!」
「駄目だ、ミーシャ、お前迄抜けたら、飯にありつけなくなる」
「仕方ないな..マモル 行ってらっしゃい」
「よく来たなマモル、お前、処刑人になって見ないか?」
「処刑人?」
「足が悪いから盗賊は難しいだろう? まぁトムは面倒見が良いから良いが、彼奴らが居なかったら1人で生きていけないだろう?」
確かに、俺は彼奴らの足枷になっているな。
「確かに、それで処刑人ですが、何で俺なんですか?」
「この間のお前の殺し方を見た、盗賊ギルドで殺す人間は裏切者や敵対する者が多い、より残酷にする事で抑制力になる」
「それで俺ですか?」
「ああっ、凄く惨たらしかったと聞く..だからどうだ? 処刑人は固定収入だ、だから生活しやすくなるぞ」
「ボスに聞いてからで良いですか?」
「ああ考えてくれ」
皆んなに相談した。
「俺は反対はしない、決めるのはマモルだ..確かに良い話しだが続けられるかだな」
「トム、マモルは強くなりたい、そう言っていたんだ、処刑人ならその早道じゃないか?」
「マモルがしたいようにすれば良いよ? 精神的に辛くなったらミーシャが慰めるさ..いひひっ」
「マモルの好きにして良い...それで決まりだ」
「なら、俺はどぶネズミのマモルとして受ける事にするよ..3対7でどうだ」
「おい、3割も入れる事は無いぞ」
「いや、どぶネズミに入れるのは7割だ」
「それは入れ過ぎだ」
「なぁトム、俺が行き場が無い時に仲間に入れてくれたのはお前だ、右も左も知らない俺に常識を教えてくれたのはオルトだ、そして初めて人を殺して泣いている俺を抱きしめてくれたのはミーシャだ..少しは恩を返させてくれ!」
「解った、受け入れよう..ただ、それならお前はもう盗みには参加しなくて良い..パーティに金を入れてくれるんだ当たり前だろう?」
「そうだな、1人だけ倍の仕事をするのは不公平だ」
「いや、俺もそれは」
「駄目だよ、このパーティーの稼ぎ頭は恐らくマモルになる..そうしてくれないといひひっ、私達の立つ瀬がないよ」
「解った」
こうして俺はギルド専属の処刑人となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます