12.15章 一航戦、二航戦の戦い 戦闘開始
一航戦と二航戦は、米陸軍のB-17やB-24からの攻撃を1月22日に受けて、被害を被っていた。このため、比叡や霧島、最上を退避させるために、艦隊を一時的に西方に後退させていた。翌日の23日には米艦隊を攻撃することが決まっていたので、深夜になって再び東方へと進んでいったが、他の艦隊に比べて出遅れることになってしまった。
先行して飛行していた上空の電探警戒機から、米艦隊に関する情報が入ってくる。
「電探警戒1号機です。オアフ島西方に米艦隊を探知。オアフ島の西方100浬(185km)の地点。大型艦5以上」
報告を受けて、草鹿中将はすぐに決断した。
「探知された海域に向けて、偵察機を発艦させる。三式艦偵を出してくれ。艦隊は全速で東方に向かう。攻撃隊の準備を確認しろ。距離を詰めたらすぐにも発進させるぞ」
……
一方、第30.1任務部隊も朝が明ける前から行動を開始していた。
フィッチ少将が偵察機の発進を命令した。
「偵察機を発進させる。さすがに今日は日本軍が攻撃してきてもおかしくない。日本艦隊が接近してくる可能性が高いと判断する。先行して日本艦隊を発見するぞ。ジェット戦闘機とスカイレーダーを飛ばしてくれ。オアフ島の基地にも偵察機の発進を要請してくれ」
参謀のローレンス中佐が意見を述べる。
「FHファントムは単座で電探を装備していません。よいのですか?」
「ジェット戦闘機の役割は護衛だ。昨日の戦いで、オアフ島から発進したPB4Yが撃墜されている。恐らく戦闘機をレーダーで誘導しているのだろう。低速機を飛ばしても同じ結果になる。ジェット戦闘機が偵察機を護衛するのだ」
フィッチ少将の命令により、8機の偵察機と同数の護衛の戦闘機が発艦していった。
発進直後に、レキシントンⅡの新型の電波探知機から報告が上がった。
「逆探が西方からのマイクロ波をとらえています。発信源が移動していることから、恐らく航空機に搭載されたレーダーと思われます。遠距離でも、電波を受信できていることから、高出力のレーダーです」
「航空機に搭載された大型レーダーとは、どう考えればいいのかね?」
「オアフ島上空では、偵察型の四発機が目撃されています。B-17よりも一回り大きなリタ(連山)と呼ばれる大型機の偵察機です。リタであれば、相当大きなレーダーが搭載できるはずです」
「レーダー搭載機ならば、我々が発見された可能性が高いということだな。同じ場所に留まる必要はない。我が艦隊は北方に移動する」
……
艦偵を発艦させてから、しばらくして草鹿中将のところに次の報告が入ってきた。
「電探警戒1号機が我々に向かってくる偵察機を発見しました。我々を発見する可能性のあるのは2機とのことです。偵察機に向けて誘導すると言ってきています」
「敵に見つかるのは遅いほど良い。上空の烈風改で偵察機を攻撃させよ」
上空の川田一飛曹の小隊の烈風改が分かれて、1号機の誘導に従って東北東に向かった。同時に石川一飛曹の小隊は東南東から飛行してくる偵察機に向かった。
川田一飛曹から報告が入ってくる。
「目標は2機編隊だ。プロペラの偵察機をジェット戦闘機が護衛している。今から攻撃を行う」
川田機と僚機は2機編隊の米軍機に接近していった。しかし、偵察機仕様のスカイレーダーを攻撃しようとしても、FHファントムが攻撃を仕掛けてくる。烈風改が2機でも相手はジェット戦闘機だ。FHファントムの後方に烈風改がつけても、高速を利用して一気に引き離す。引き離してから、水平旋回で回り込んできて、スカイレーダーの射点につこうとしている烈風改に向けて遠距離から一連射する。斜め方向で、しかも遠いところからの射撃は命中しないが、回避によりBT2Dスカイレーダーへの攻撃が不可能となる。FHファントムと戦っている間に、スカイレーダーは、東方へと引き返し始めた。偵察機が遠ざかったところでFHファントムも引き返していった。
石川一飛曹が向かった編隊では、FHファントムが烈風改を引き付けた。FHファントムと烈風改が戦闘している間に、BT2Dは全速で降下しながら、西方に飛行していった。既にレーダーに映っていた海上目標を確認しようとしたのだ。やがて、一航戦の前衛として航行していた戦艦の艦橋が水平線上に見えてきた。FHファントムが烈風改を相手にして戦闘している間に、BT2Dは日本艦隊を視認して報告することができた。
複座のスカイレーダーがバンクすると180度水平旋回した。FHファントムもすぐに東方に機首を向けて引き返し始めた。烈風改でもさすがに全速で退避するジェット戦闘機は追いつけずに、機体の後ろ姿を見守るしかない。
……
東北東に向けて飛行していた山田大尉の三式艦偵の電探に海上目標が表示された。後席の野坂一飛曹がそれを報告する。
「海上の目標を探知。2時方向です。目標複数、恐らく大型艦」
「高度を下げる。2時方向に向かうぞ。降下する間に米軍の艦隊発見の一報を打電してくれ。詳細は次に報告することでよい」
断雲を突き抜けて降下しながら、進んでゆくと水平線上に船のマストが見えてきた。再び、野坂一飛曹が叫ぶ。
「接近する航空機あり。3時方向、かなり速度が速い」
「3時方向に戦闘機が見えるぞ。ジェット戦闘機のようだ。向こうがジェット機ならば追いつかれる可能性がある。逃げるぞ」
偵察型流星は全速で右旋回して、迎撃してきた戦闘機から距離をとった。この高度ではわずかに流星が高速なので、流星とFHファントムの距離が縮まることはない。山田大尉の機体は北方に飛行して、一旦回避した。しかし、戦闘機がついてこないのを確かめると再び南下を始めた。
野坂一飛曹が後席で文句を言っている。
「もう一度、戻るんですかぁ?」
「あたりまえだ。敵艦隊の編制を確認して報告する。戦闘機がまたやってこないか、電探をよく見ていてくれ」
数分間、南下してゆくと電探に海上からの反射が出た。
「電探に探知、前方に水上目標、大型艦5。ついでに1時方向、航空機を探知」
すぐに、前方に第30.1任務部隊の空母が見えてきた。
「空母3、巡洋艦3、駆逐艦多数だ。正確な位置もつけて、すぐに報告してくれ。敵機も見えてきたぞ。長居は無用だ。さっさと引き上げるぞ」
……
偵察機の報告がフィッチ少将に上がってきた。
「日本の空母機動部隊を発見した。我々の方向に航行してくる空母の数は2隻が2群で、合計4隻だ。空母の護衛には、戦艦や巡洋艦が含まれている。想定範囲内の艦隊規模だ。攻撃隊を出すぞ」
ローレンス中佐がすぐに応答する。
「わかりました。既に攻撃隊の準備は完了しています」
続いて、上空の戦闘機からの報告を通信士官が持ってくる。
「日本軍の偵察機に見つかりました。ジェット偵察機です」
フィッチ少将がうなずいて何か話そうとしたときに、米軍の戦闘状況がオアフ島の司令部経由で入ってきた。レキシントンⅡ艦長のスタンプ大佐が電文を持ってきくる。
「第30.3任務部隊の空母が、大型機の攻撃による大型誘導弾で全て撃沈されました。どうも、ミッドウェー島から飛来したリタ(連山)のようです。攻撃を受ける直前にハワイの北東方面の日本機動部隊に攻撃隊を出しましたが、戦果も出さずに撃退されています。第30.2任務部隊については、我が軍が先に発見されて攻撃を受けました。第30.2任務部隊の空母は、攻撃隊を出すこともなく、守勢になって、空母が全部撃沈されたとのことです。戦艦も沈められでいます」
「モントゴメリーもキンケードもあっさりと負けたということか。なんと情けないことだ。いや日本軍が強いということだな」
「司令部から、日本軍がアルミ箔を使用した欺瞞作戦を実施しているとの情報が来ています。オアフ島北方で未確認編隊を探知した騒ぎも、アルミ箔を使用した日本軍の欺瞞だったようです。加えて、近接信管を防ぐためにもアルミ箔を散布しています。今のところ我が軍は、日本軍の策に見事にはまってしまっています」
しばらく考えてから、フィッチ少将が指示を出した。
「配下の艦隊に、日本軍が欺瞞のためにアルミ箔を使ってくることを伝えておくように。間違いなく日本軍は同じ手を使ってくるぞ。レーダーへの欺瞞映像に、注意するように伝えるのだ。同じようにだまされることは防がねばならん。我々が最後の砦だ」
スタンプ大佐が神妙な顔つきで答える。
「一度、引き下がって、距離を開けますか?」
「それはダメだ。我々は、ハワイを防衛するという任務からは離れられない。つまり、日本艦隊と戦うということに変わりはない。時間がたてば、モントゴメリーやキンケードを倒した日本艦隊が集まってくるぞ。それよりも各個撃破可能な今の方が条件は良いはずだ。それに、日本艦隊もすぐに攻撃隊を出撃させてくるだろう。後退するには、もはや遅いというわけだ」
第30.1任務部隊からの攻撃隊の発艦はカタパルトを活用して、30分程度で終わった。攻撃隊は、F8Fベアキャットが46機、FHファントムが24機、BT2Dスカイレーダーが62機から構成されていた。
……
第30.1任務部隊の空母が発艦準備をしているころ、フォード島の海軍基地からもPB4Yの一隊が離陸していった。上空には、胴体下に増槽を搭載した8機のF8Fベアキャットが護衛として飛行していた。
サムナー中佐が指揮するPB4Yは、マケイン長官から特に指示された計画を実行するための部隊だった。1時間以内という条件でホノルル市内と海軍基地から集められたアルミ箔を、基地の兵が総員でハサミを使って切り刻んだ。その作業の成果を箱に詰めて3機のPB4Yに搭載していた。機体の後部では、臨時に乗り込んだ兵員が、いまだにアルミ箔を短冊状に切っていた。少しでも、散布するアルミ箔を増やすためだ。PB4Yは日本艦隊に向かって進んでいたが、レーダーが未確認機の接近をとらえた。もちろん日本艦隊からの迎撃機である。
F8Fが探知した方向に向かってゆく。PB4Yに日本戦闘機を近づけないためだ。
爆撃手のアーウィン少尉が隊長のサムナー中佐に尋ねる。
「随分と急ごしらえですが、本当にこんなものに効果があるんでしょうか?」
「さあね、本当は私にもわからん。それでも一つはっきりしているのは、こんなアルミ箔を頼りにするしかないほど、我々は追い込まれているということだ。効果を信じて行動するしかないだろう」
日本艦隊に向かっていた3機のPB4Yは機首を北に変えた。そのまましばらく北上を続けると、高度を上げていった。電探に発見されやすくなるが、この作戦の効果を大きくするためには必要なことだ。高度を上げてから、3機の哨戒機が一斉に胴体側面の窓を開けて、短冊状に切ったアルミ箔をまき散らし始めた。作業は5分もしないうちに終わった。PB4Yの後方には、細長いキラキラ光る雲ができていた。
サムナー中佐が、操縦席から上部銃座に上がって後方の様子を確認している。アルミ箔の雲の出来具合に納得したようだ。
「当面、我々にできることは終わった。あとは、日本艦隊がうまくだまされるのを祈るだけだ。全速で、基地に戻るぞ。作戦の成果は我々が基地に戻るころにははっきり出ているだろう」
……
マケイン長官のところに、陸軍のハワイ地区司令官のエモンズ中将から連絡が入った。
「連絡が遅れてすみません。一部の航空機について、そちらの戦いの応援に出せることになりました」
「オアフ島北の目標の要撃に出撃した機体が戻って出撃可能となったのですか?」
「いや、その部隊ではなく、北方の迎撃には出さなかった予備の戦闘機を集めることができました。出撃準備ができています。海上の日本艦隊の情報について教えてください。そちらの海軍部隊と連携して攻撃したいと思います」
マクモリス少将が、電話中のマケイン長官の横にやってきて目配せをする。
「具体的な作戦については、私の副官と調整をお願いします。既に戦いは始まっています。直ぐに出撃するように、調整させてもらいます」
陸海軍間で調整を行った結果、日本艦隊に対して出撃するのは、陸軍に装備されたばかりのP-51の戦闘機隊と決まった。オアフ島から直接日本艦隊まで、長距離飛行が可能なことが理由だ。38機のP-51が、ヒッカム陸軍基地から離陸していった。同時にフォード島海軍基地からは、44機のBT2Dスカイレーダーが発進した。オアフ島に退避して着陸していた第30.2任務部隊の機体だ。
……
第30.1任務部隊から攻撃隊が発進したころ、日本軍からも攻撃隊が発進していた。三式艦偵が偵察結果を草鹿中将の一航艦司令部に報告してきた。
「我々からの距離が320浬(593km)ということは、攻撃圏内に入りつつある。空母3の艦隊だ。我々の相手にとって不足はない。攻撃隊の発進準備をさせてくれ。上空の電探警戒機に最短距離での誘導を要求する。回り道をしなければ攻撃可能だ」
司令官の決定に従って、一航戦と二航戦から攻撃隊が発進していった。一航戦の攻撃隊は、橘花改が26機、烈風改が20機、流星が46機から構成されていた。それに続いて、二航戦は、烈風改が30機、彗星が42機から攻撃隊を編制した。
……
攻撃隊が出てから1時間ほどして、草鹿中将と加来参謀長のところに小野通信参謀が駆けてきた。
「電探警戒1号機からの探知情報です。我々の艦隊から約90浬(167km)の二カ所で探知が出ました。ほぼ同じ距離の南東側と北東側の目標を発見しています」
「それならば上空の戦闘機を2隊に分けて、迎撃させるぞ」
両手を広げながら、加来参謀が話し始めた。
「ちょっと待ってください。我々の連山が爆撃時に実施した欺瞞作戦と同じ可能性があります。南北のどちらか一方が、おとりの可能性があります」
「米軍も電波攪乱紙を使っているというのか。おとりを絞り込める何か良い確認方法はないのか?」
「三式艦偵を飛ばして目標を視認させればはっきりします。三式艦偵は速度が速いので短時間で結果が出ます。あるいは、電探でしばらく観測して、移動していない目標は偽だと判定することも可能かもしれません」
草鹿中将は直ちに決断した。
「時間がない。双方の策により確認する」
再び小野参謀が草鹿中将に報告にやって来た。
「電探警戒1号機から確認の結果が来ました。南東方向の反射が我々に向かって移動しているとのことです。かなり大きな反射なので、飛行しているのは大編隊です。一方、北東の反射波はあまり移動していません。三式艦偵はまだ目標海域に向けて飛行中です」
「その報告で十分だ。南東の目標を全力で迎撃するぞ」
日本艦隊の南東から接近していた米攻撃隊は、戦闘機隊が爆撃機群を囲んで飛行していた。24機のFHファントムが前方を飛行して、その後方に20機あまりの3群になったBT2Dスカイレーダーが飛行していた。護衛のF8Fベアキャットは、BT2D編隊の上空に20機、左右にそれぞれ15機弱が飛行していた。
一航戦と二航戦の上空を飛行していた護衛戦闘機のうち、橘花改が24機、烈風改34機が米軍攻撃機の迎撃に向かった。
戦闘機隊の板谷少佐に、さっそく無線が入ってくる。
「こちら、警戒機1号機だ。艦隊に対し南東方面から接近する目標に誘導する。進路は真方位130度。目標の高度は不明なれど、15分もすれば、進行方向右側の視界にとらえられるはずだ」
「了解した。ところで、編隊の規模はわかるのか?」
「正確な機数は電探ではわからないが、かなり大きな反射が出ている。数十機から百機以上が飛んでいてもおかしくない」
板谷少佐は、後方を飛行している烈風改の編隊にも通報する。
「敵編隊は、方位130度、約70浬(130km)先だ。我々ジェット機が前方から攻撃して、敵のジェット戦闘機を引き付ける。敵戦闘機隊に隙間ができたら爆撃機を攻撃してくれ。爆撃機の攻撃が優先だ」
「了解」
米軍編隊で最初に前方の日本戦闘機群を発見したのは、レーダーを装備したBT2Dスカイレーダーだった。
BT2Dは、戦闘機隊長のホワイト中佐に探知情報を通知してきた。
「前方から編隊が接近中。前後の2群に分かれています」
FHファントム隊の先頭を飛行していたホワイト中佐は、機首を右に向けて、北側に旋回して正面からくる敵をかわそうとした。機影から翼下に2つのエンジンを下げた戦闘機だとわかる。
「敵編隊はジェットエンジンが2発のリサ(橘花改)だ。前方から直進してくるぞ。上昇しながら、右旋回しろ。高度を上げてから反転して攻撃する」
板谷少佐は、内心でほくそ笑んだ。戦闘意欲のある指揮官ならば、日本軍と正面から向き合って突っ込んできたはずだ。それが、北に旋回上昇してゆくのは、正面からやり合うことを避けたのだ。ジェットエンジンの推力を生かして上昇旋回してから、上空で反転して突っ込んでくるのはプロペラ機相手の戦闘法ではあり得るだろうが、同類のジェット機相手ではまずいだろう。こちらの機体も双発のジェットの推力で高速飛行できるのだ。敵の上昇に追いつくことができる。
中隊に無線で短く指示する。
「この部隊は戦い慣れていない。落ち着いて戦えば大丈夫だ。一気に上昇しつつ突っ込むぞ」
24機の橘花改は、左翼側に向きを変えて、機首を持ち上げつつ、機関銃の射距離に入る手前で噴進弾を一斉に発射した。400発以上の噴進弾が白煙を引いて飛んでゆく。
すぐに発射の煙にホワイト中佐も気がついた。
「ロケット弾攻撃だ。左でも右でもいい。急旋回に続けて急降下回避せよ」
FHファントムの大翼面積を生かした旋回性能が、ホワイト中佐を救うことになった。右翼よりも離れたところを、多数のロケット弾が飛行してゆく。それでも旋回が遅れた8機のFHが近接信管弾の犠牲になった。続いて、左右に分かれて旋回したFHの編隊を橘花改の部隊も2方向に分かれて追撃してゆく。後方からの射撃を浴びて、6機のFHが炎を引いて落ちてゆく。
左方向に旋回した橘花改には、米攻撃隊の北側を飛行していた14機のF8Fが向かってきて、ロケット弾を発射した。敵の思惑に従うのは癪だが、橘花改は追尾を止めて回避に専念するしかない。ロケット弾により直進していた2機の橘花改がやられた。戦闘機を排除しないと、爆撃機への攻撃はできそうもない。一時的に敵の戦闘機と渡り合うことになった。
一方、右方向に旋回した板谷少佐を含む、橘花改の編隊はそのまま進んでいくと、下方にBT2Dの編隊が見えた。
「急降下で攻撃せよ。下方の爆撃機の編隊を狙う」
10機程度の橘花改が板谷少佐の命令に従ってついてくる。米編隊の上空で、編隊を組みなおして下方を飛行する爆撃隊の背後に降下していった。米編隊の後方に回り込んだ橘花改はBT2Dの背後から攻撃を仕掛けていった。誘導弾を搭載した機体は、速度も運動性もにぶい。後方からの射撃に撃たれっぱなしになる。たちまち6機が落ちていった。
重松中尉の率いる飛龍と蒼龍の戦闘機隊を中心とした34機の烈風改の編隊は、機首を南側に向けると米編隊とすれ違ってから、後方に回って後ろから接近しようとしていた。しかし、上方の20機と左側の12機のF8Fがそれを見つけて攻撃してきた。20機の烈風改が新型のグラマン戦闘機と戦うこととなった。米戦闘機の戦闘に巻き込まれなかった十数機の烈風改は、BT2D編隊の南東方向まで飛行すると、まず、爆撃機に向けて噴進弾を発射した。250発の噴進弾が飛行していって、8機のBT2Dが撃墜された。そのまま米爆撃機の編隊に突入して、8機を撃墜したが、まだ飛行している爆撃機の数が多すぎる。
攻撃を免れたBT2D編隊は、日本艦隊へと接近していった。
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