1.11章 日本軍反撃

 レキシントンから攻撃隊が発進するよりも早く、日本艦隊は攻撃隊を発進させていた。日本側の4隻の空母は、偵察機や艦隊防空の戦闘機を差し引いて、130機程度の攻撃編隊を編制することができた。


 偵察機から、敵艦隊発見の報告の後に、艦隊構成について情報が入ってきた。

「間違いない、レキシントン級を中心とした輪形陣だ。2隻目の空母を心配していたが、この海域の空母は1隻だけのようだ。後顧の憂いはない。全力で攻撃する」


 山口司令がすぐにも決断して攻撃隊を発艦させた。


 二航戦と五航戦は少し距離をあけて航行していたため、結果的に攻撃隊は2群に分かれることになった。


 二航戦の艦載機から構成される第一群は以下のような編制となった。第一群は蒼龍の江草中佐が指揮官である。

 戦闘機隊:零戦18機

 雷撃隊:九七式艦攻27機(反跳爆撃隊を含む)

 爆撃隊:九九式艦爆24機


 五航戦の艦載機から構成される第二群は以下のような編制となった。第二群は瑞鶴の嶋崎中佐が指揮官である。

 戦闘機隊:零戦15機

 雷撃隊:九七式艦攻30機(反跳爆撃隊を含む)

 爆撃隊:九九式艦爆27機


 第12任務部隊はレキシントンを中心に輪形陣により、日本の攻撃隊を待ち構えていた。米艦隊は、重巡インディアナポリスが進行方向の東側に配されていた。続いて、重巡シカゴ、ポートランド、アストリアを輪形陣の西南北に配置して、巡洋艦の間を駆逐艦が埋めていた。弱点はもともと数の少ない戦闘機を攻撃隊にも出してしまったために、上空の戦闘機が9機になってしまったことだ。しかもその戦闘機は、F4Fより劣っていると評価されているF2Aバッファローだ。ブラウン中将もニュートン少将も、日本艦隊上空の戦いで、F2Aが零戦に全然歯が立たずにあっという間に全滅したことはまだ知らない。零戦の性能も詳細はわからないため、F2Aの性能でも日本の艦戦にある程度対抗できると考えていた。そのため、半数のF2Aが敵の戦闘機を引き付けて、その間に残りのF2Aが敵の爆撃機を攻撃するという作戦を考えていた。


 日本の第一群が米艦隊の南西方向から接近すると、規模の大きな編隊が接近中であることをレーダーが探知した。レキシントンには、数カ月前にレーダーが設置されたばかりであったが、しっかりと機能を発揮していた。さっそくニュートン少将とブラウン中将にレーダーによる敵編隊の探知が報告される。航空戦の指揮は、ブラウン中将よりもニュートン少将が慣れているとのことで、ニュートン少将が前面に出ていた。

「上空の全戦闘機に南西方向から接近する敵編隊の迎撃を指示せよ。艦隊の全艦艇は接近する敵編隊に対して、対空戦闘準備。高射砲射撃時には上空の味方の戦闘機に注意せよ」


 第一群の戦闘機隊を率いていた飛龍の飯田大尉は、編隊の斜め右前方にシミのような黒点を発見した。中国大陸で何度も編隊を率いて戦ってきた大尉にとって、この程度の数の敵を相手にするのは初めてではなかった。バンクで列機の注意を引き付けると、無線で短く中隊に指示した。

「右前方敵機。1小隊と2小隊、3小隊続け」


 編隊の前方から飯田機は、接近してくるF2Aに向けて増速してゆく。9機の零戦が上昇旋回して、F2Aの背後につけるがF2Aはロールから降下に移って回避しようとする。しかし、鈍重な動きでロールしている間に零戦が背後に迫って、機銃を連射する。翼に命中した13.2mmの炸裂弾が爆発すると、破孔から漏れたガソリンに火がついてあっという間に墜落してゆく。火を噴いて落ちてゆく航空機があちこちで見られるが、墜落するのは全てF2Aだった。


 零戦が撃ち漏らした1機のF2Aが97式艦攻の背後に迫り、機銃を連射してあっという間に艦攻を撃墜した。怒り狂ったように、そのF2Aの直上から1機の零戦が機銃を連射しながら真っ逆さまに急降下する。零戦が下方に高速ですり抜けてゆくと同時に攻撃されたF2Aの機体から破片が飛び散る。F2Aがまるで零戦の後を追うように落ちてゆくが、零戦が軽やかに引き起こしたのに対して、F2Aはくるくると錐もみになって、翼が折れながら落下していった。


 日本機の編隊が接近したため、ニュートン少将は対空砲の射撃を指示した。

「上空の友軍機に対空砲火の有効範囲からの退避を指示せよ」


「全火器使用自由。各艦自由に回避せよ」

 しかし、対空砲から退避しなければならない米軍の戦闘機は、既に飛んでいなかった。


 防空戦闘機を排除して、米艦隊に近づきながら攻撃部隊が散開してゆく。二航戦の攻撃隊は、輪形陣の対空砲火を分散させるために、西北、真西、西南の3方向からの同時攻撃を意図していた。噴進弾をぶら下げた零戦が爆撃隊から抜け出て先行した。F2Aとの空戦で噴進弾格納筒を落としてから空戦に突入した零戦もあるため、噴進弾装備機は減少していた。


 6機の零戦が3方向からレキシントンを目指して降下してゆく。シカゴとポートランドから猛烈に打ち上げてきた対空射撃で2機の零戦が輪形陣の内側に入る前に撃墜された。輪形陣を超えつつあった1機がポートランドの直近で対空機銃の射線に捕まる。この零戦は、左翼に機銃弾を浴びると翼から火を噴きながら目標をポートランドに変更した。巡洋艦の至近距離から噴進弾を発射するとそのまま、第一煙突の基部に突入した。近距離で放たれた噴進弾は艦橋の周囲と艦の中央部に大部分が命中した。噴進弾の爆発により、艦の前方から中央部が煙に包まれる。爆煙がおさまってくると、噴進弾の固形燃料と零戦のガソリンが数か所で火災を発生させる。


 残った3機の零戦は、陣形の内側に突入することに成功していた。3機がほぼ同時にレキシントンの左舷側から前方と中央部に向けて噴進弾を放った。高速で航行する空母に向けて発射した噴進弾はおよそ4分の1が命中した。左舷の前半部の対空砲が全て破壊されて、甲板上で火災が発生する。舷側に格納されていた短艇が、噴進弾の命中で破片をまき散らしてばらばらになって炎に包まれる。船体の側面に命中した噴進弾は舷側の壁面で全て爆発した。さすがに50mm榴弾の弾頭では元戦艦の側面防御に阻まれて格納庫までは貫通しない。また、非装甲の飛行甲板に命中した噴進弾も飛行甲板上で爆発したが、甲板とその下のギャラリーデッキを貫通して下の格納庫まで達することはなかった。


 スラロームのように蛇行して高速で接近してくる零戦には、最初から回避はあきらめて、対空射撃で撃ち落とすことを優先したが、爆弾と魚雷は回避しなければならない。


 次の攻撃を予想してニュートン少将が大声で叫んだ。

「これから爆弾と魚雷がくるぞ。全力で回避しろー」


 シャーマン艦長が負けないくらい大声で命令する。

「取舵、いっぱい。上空の敵機に向けて射撃」

 しかし、船体の大きなレキシントンは、方向をしばらく変えてくれない。


 零戦の攻撃に続いて、上空の九九式艦爆の急降下爆撃隊と低空の九七式艦攻がほぼ同時に輪形陣の外側から突撃を開始した。零戦の噴進弾で対空砲火が半減した左舷方向が、無理やりこじ開けられた侵入口だ。雷爆同時攻撃に対して、米艦艇の大部分は上空の爆撃機に火砲を向けた。ポートランドが火災の影響で輪形陣から徐々に遅れ始める。


 22機の九九式艦爆は4機が機首を下げて急降下に入る直前に対空砲火で撃墜された。急降下の途中で更に2機が火を噴きながら墜落してゆく。生き残った艦爆は、レキシントンを狙って、13発の爆弾を投下して8発が飛行甲板に次々と命中した。3発は飛行甲板とギャラリーデッキを貫通して格納庫で爆発して火災を引き起こす。4発の50番爆弾は飛行甲板を斜めに貫通して更に格納庫から床下の0.75インチ(19mm)の水平装甲板も貫通したが下甲板の1.25インチ(32mm)装甲板で阻止されて爆発した。ほぼ直上の艦爆から投下された1発の50番は、下甲板の1.25インチ鋼板まで達した時もそれを貫通できるだけの速度を残していた。ボイラー室まで貫通して爆発したこの爆弾により、ついにレキシントンの機関が被害を受けた。


 輪形陣先頭のインディアナポリスには3発の爆弾が投下されて1発が命中した。急降下の途中で高角砲弾が至近で爆発した1機は炎を噴きながら、そのまま近くにいたポートランドに目標を変えて突入した。九九式艦爆は船体前部に衝突して、機体がバラバラになってガソリンで火災が発生した。炎にあぶられると、艦爆が搭載していた50番爆弾が甲板上で誘爆した。


 8機の九七式艦攻が、急降下換爆撃隊と同時に突入した。インディアナポリスは左舷の対空砲の目標を低空の艦攻に変更する。急降下爆撃を受けている最中に、射撃対象を低空の目標に変えたため、2機の艦攻を撃墜したが、代わりに九九式艦爆の爆弾には被弾してしまう。6機の九七式艦攻は9発の反跳爆弾を投下して、3発をレキシントンに命中させた。船体中央部に2発の25番(250kg)爆弾、船体後部に1発の50番(500kg)爆弾が命中した。5インチ(127mm)の舷側装甲に命中した25番は貫通できずに舷側の外側で爆発したが、残りの50番は装甲板の上部に命中したため、舷側を貫通して船体内部まで達して爆発した。更に1発がレキシントンを守ろうと爆弾の前面に全速で進み出てきたポートランドの左舷に命中した。


 反跳爆撃の九七式艦攻と同時に侵入した九七式艦攻のうちの7機がレキシントンに向けて雷撃した。高速で航行しているにもかかわらず、レキシントンは舵の利きが鈍いため、回頭が遅くなる。ついに、魚雷2本が命中した。機関部の被害に加えて魚雷の破孔によりレキシントンの速度が低下し始める。


 ほぼ同時に急降下爆撃、反跳爆撃、雷撃が繰り返されたため、艦橋のブラウン中将もニュートン少将も見守るしかない。


 続けて、輪形陣の周囲を飛行していた12機の九七式艦攻が攻撃を行った。6機編隊が輪形陣の外から接近する。攻撃を察知して、重巡アストリアがレキシントンの後方から左舷側に前進してきた。もともと左舷側の防御をしていたポートランドが噴進弾と爆弾により被害を受けて脱落したためである。


 無傷のアストリアの激しい対空射撃により、たちまち2機の九七式艦攻が炎を噴き出して海面に衝突する。4機の九七式艦攻から4本の魚雷がレキシントンとアストリアに向けて投下され、1発がレキシントンに命中し、1本の魚雷がアストリアの左舷に命中した。爆発により、アストリアの対空射撃が停止する。6機編隊の九七式艦攻は左舷の対空砲火が薄くなった南方に回り込んで射点を目指して侵入してきた。対空射撃がまばらになったおかげで、1機も欠けることなく6機が6本の魚雷を投下できた。既に20ノット程度に速度が落ちていたレキシントンには4本の魚雷が向かっていった。のろのろとしか回頭できないレキシントンに対して2本が命中した。残った2本の魚雷は左舷を航走していたアストリアに向けて投下されて1本が命中した。度重なる魚雷の命中はこの巡洋艦の耐えられる限度を超えてしまった。左舷に傾きながら急速に沈み始める。


 第一群が引き上げて第二群の攻撃が始まった。既にレキシントンは浸水により左舷に傾き、飛行甲板からは火災の煙が盛大に立ち上っていた。速度は10ノットも出ていない。魚雷と爆弾を受けたアストリアは左舷への傾斜が大きくなると、爆弾による左舷の破孔からも海水が激しく侵入した。急速に左に転覆してゆく。インディアナポリスとポートランドは爆撃により甲板上に火災が発生して、激しく炎と煙が立ち上っている。この2艦は火災の延焼を防ぐために、レキシントンに合わせて低速で前進していた。レキシントンの右舷側に位置していたシカゴはまだ無傷で、第二群の編隊を発見すると、全力で高角砲を射撃してきた。周囲を警戒していた数隻の駆逐艦も対空射撃を開始する。


 上空には日本機を妨害する米海軍の戦闘機は1機もいないため、日本機は対空砲火を避けられる距離をとってから攻撃を開始した。


 7機の零戦が対空砲火をつぶすため、全速で降下してゆく。シカゴに向かった4機は、噴進弾を射撃する前に1機が撃墜された。残った3機が噴進弾を射撃すると、シカゴの艦首から艦の中央部にかけて数十発の噴進弾が命中した。艦の前半部の対空砲は大きく被害を受けたが、後半部の対空砲は生き残った。シカゴの艦橋には数発の噴進弾が命中して一時的に艦の指揮ができなくなる。残りの零戦3機は編隊を解いてマハン級と思われる3隻の駆逐艦に向かった。駆逐艦の対空砲火だけでは、高速で降下接近する零戦には全く対応できなかった。3艦がそれぞれ噴進弾を被弾して火災が発生する。中央部に被弾した1艦は、艦体中央部から大きく炎が吹き上がるとその直後に大爆発が発生する。駆逐艦が搭載していた魚雷が誘爆したのだ。その駆逐艦は船体が中央部から逆への時に折れ曲がって、あっという間に沈没した。残りの2艦も火災により、対空射撃が止まってしまう。


 第二群の急降下爆撃隊はレキシントンに3発の50番を命中させた。インディアナポリスとポートランドにもそれぞれ2発を命中させた。シカゴや、炎上する駆逐艦にも1発が命中する。


 艦攻隊は海上をのろのろ進む艦に引導を渡すべく降下していった。艦攻隊の攻撃によりレキシントンには3本の魚雷が命中した。続いてインディアナポリスは1本を被雷した。更にポートランドにも1本の魚雷が命中した。まだ機関が健在で激しく回避するシカゴにも2本の魚雷が命中してあっという間に傾き始める。第二群が引き上げる頃には、どんどん傾斜が増加していたレキシントンは、左舷に横転して急速に沈み始めた。インディアナポリスは魚雷の浸水に耐えられず、艦首から沈み始める。シカゴは魚雷2本を受けた右舷の浸水に耐えられずに右舷に横倒しになった。激しく燃えながらも、左舷に傾斜していたポートランドは最も長く浮いていた。しかし、乗員の退艦が命じられて、浸水と火災が放置されて徐々に沈んでいった。


 最終的に米艦隊は、レキシントン、重巡4隻、駆逐艦2隻を失って第12任務部隊は壊滅した。


 ……


 二航戦の西方を航行していた翔鶴と瑞鶴の五航戦が合流してくる。敵編隊から全く攻撃を受けなかった五航戦は当然被害がない。東方からは戦艦部隊が接近してきた。


 山口司令と加来艦長は開戦前に見た封筒のメモについて話していた。

「敵艦に近いところにいた二航戦に攻撃が集中した。それでも東北寄りの戦艦は攻撃されなかった。北方に近い航路を航行した戦艦部隊のみが最初に発見されて、敵機を引き寄せるという筋書きは結果的にはうまく行かなかったな。戦艦の西方から接近した空母が早期に発見されて攻撃されてしまった」


 加来艦長が解説する。

「我々が発した偽電は効果があったんでしょうかね。例の偽電ではミッドウェーの北方向から早朝に攻撃すると発信しましたが、北に近い戦艦は攻撃されませんでした。米軍は北側を優先して偵察したが、結果的に戦艦と空母をほぼ同時に発見したために、単に戦艦より空母を優先したとも考えられます。こうしてみるとなかなか確定的に言えることは少ないですね。偽電により、我々が発見されるまでの時間を遅らせる効果があったのかもしれませんが、それも実証できませんね」


 その時、従兵が紙を持って入ってきた。


 加来艦長がざっと目を通す。

「阿武隈が拾い上げて、本艦に運んできた敵の偵察機の捕虜ですが、少ししゃべったようですよ。その中尉が、自分の任務について話したようです。発言内容は、名前と階級、それに自分の任務は上官の命令によりミッドウェー島の北方を重点に捜索することだったと言っているとのことです」


 思わず山口少将の口元が緩む。

「ふーん、上官が北側を重点的に探せと命令したのか。上官の発言の根拠は何か? まるで、そこに我々がやって来るはずだと知っていたようじゃないか」


 加来艦長が答える。

「ええ、我々が夜明け前に打電した偽電が解読されて、そこを重点に捜索しろと指示したと考えるとつじつまが合います。偵察機のパイロットも含めて、米軍の捕虜はまだほかにも10名程度いるそうです。彼らから話を聞ければ、もっと詳しい情報が得られるかもしれません」


「うむ、捕虜の中に指揮官がいれば好都合なのだが。まあこの証言だけでも十分と言えるが、証拠は多いほど説明がしやすくなるな。とにかく、暗号が解読されている件は、帰ってから軍令部に報告する必要がある。これは極秘事項だ。くれぐれも口外しないように。あと、君の友人の予言者君にもしっかり説明するのだぞ。私も君の話を聞いてから、予言できる人物を思い当たったよ。私が指揮官だった漢口基地の迎撃戦で、わが軍で初めて電探を利用するように進言した男だ。更に重慶攻撃時に一度で目的を達成できた作戦の助言をした知恵者。そしてこの状況表示盤を艦隊実習時に編み出して、草鹿君をうならせた男。全てが空技廠から来た同じ人物だ。しかも民間人として採用されて、その後に大尉に転官したはずだ」


 加来艦長が返事をした。

「そうです。しかも、空技廠で輝星エンジンとジェットエンジンの開発を成功させて、あの有名な360ノット試験機を飛ばせた人物ですよ。私は空技廠で勤務して、この人物はわが軍にとって宝物だと信じています。山口さん、彼がおかしなことに巻き込まれないように守ってくださいね」


「君の意見には賛成だ。心しておこう。今回の暗号の件は、山本長官には私から直接伝える。今後のわが軍の戦い方に、大きな影響があるからな」


 二航戦と五航戦は一度体制を整えてから、ミッドウェー島に接近すると、12機の零戦隊が航空基地上空を一度航過すると、各機がめぼしい目標を見つけて噴進弾を発射した。迎撃して来る戦闘機はいない。既に火災は鎮火していたが、駆逐艦の攻撃から残っていた機体は想定していた以上に少なかった。この攻撃でカタリナ飛行艇2機と格納庫前のTBDデバステイター3機があっという間に破壊された。次に滑走路周囲に配備された3基の3インチ(76.2mm)高角砲と4基の28mm機銃が銃撃を受けて破壊された。


 対空砲火が破壊されてから、上空から15機の九七式艦攻がサンド島に対して水平爆撃を行った。各機とも25番爆弾を2発搭載して、艦砲射撃の被害を免れた建物をまず爆撃した。続いて、滑走路から少し離れた軍の建築物を狙って爆弾を投下した。イースタン島を目標にしたのは、9機の九七式艦攻だった。西側の建築物を中心に爆撃を行った。


 最後に比叡と霧島が沖合から艦砲射撃を行う。上空の観測機からの指示に基づいて、サンド島基地に向けて36センチ砲弾を200発あまり射撃して滑走路と基地を完全に破壊した。次にイースタン島を目標にして50発程度を射撃した。島の上のほとんどの場所が穴だらけになって、もはや何を目標にしていたのかそれさえも判別できないほどに破壊された。


 ミッドウェー島を攻撃している最中に、連合艦隊司令部から新たな指令が届いた。日本軍が上陸に手間取っているので、ウェーク島の米海軍航空部隊を制圧せよとの命令だ。さすがに山口司令もこの命令にはうんざりした顔をしている。しかし命令には従うと決断して、無傷の飛龍と戦艦部隊に第17駆逐隊を分離してウェーク島に立ち寄るように航路を変更した。12月14日にはウェーク島の近海に到達した艦隊は、ほぼミッドウェー島と同様の手順で攻撃を開始した。但し、ウェーク島には、稼働できるF4Fが3機残っており、12機の零戦隊が近づくと勇敢にも迎撃してきた。しかし、多勢に無勢でたちどころに全機撃墜されてしまう。その後の手順はほとんどミッドウェー島への攻撃の繰り返しであった。まず零戦隊による噴進弾攻撃が地上の対空砲や機銃に対して行われた。続いて、九七式艦攻と九九式艦爆による爆撃が島内各所に対して行われた。最後は、比叡と霧島による艦砲射撃だ。島全体が砲撃により穴だらけになってしまった。

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