11.2章 電波探信儀の改良
昭和15年7月に電波探信儀が漢口基地に向けて船積みされた後も、海軍技術研究所が中心となってその改良は続けられていた。
零式一号一型探信儀を用いた探知実験の結果、いくつかの課題が明らかになった。一つ目の問題は、事前に想定できていた。電波探知機で航空機を検知してもその機体の高度が判定できなかった。特に迎撃する機体と接近する敵機の高度差が大きいと、迎撃機から視認できても攻撃が間に合わない場合があり得る。また、探知した位置に急行しても、高度差とさえぎる雲により、迎撃機からは目標を視認できない事象が迎撃試験で発生した。高射砲射撃時の測距のような正確な高度の計測は不要であるが、敵機の飛行高度は迎撃のための情報としては絶対に必要であることが認識された。
また、模擬戦で敵機が襲来してそれを迎撃する場合、探知した目標の近辺への友軍機の誘導は可能であった。しかし、彼我の距離が接近してくると、敵と味方の判別ができなくなる事象が発生した。実験以前から想定されたことであるが、模擬戦に参加する航空機の数を増やすと、電探の表示管には多数の反射波が現れて事前の想定以上に判別が不可能になった。これが二つ目の問題である。
それらに加えて、三つ目の課題は、実験開始以前から、大きな課題として分かっていた問題である。海上の目標を電探で探知しようとする場合、海面からの反射波が邪魔をして目標からの電波を判別できなくなる問題である。海面が非常に穏やかな場合で、目標が大きな場合は、運よく探知できることがあったが通常は不可能だった。
未来の知識のある私の感覚から言えば、第一の問題は3次元レーダーが必要である。二つ目の問題はIFF(敵味方識別装置)を開発する必要がある。三つ目の課題を解決するためには、対空探知とは別に対水上のもっと波長の短いレーダーの開発が必要だ。用途に応じたレーダーが必要だという考えが、まだこの時期には確立されていない。それぞれの問題については、私自身は電探開発の初期から認識していたことだが、まずは最初の電探の実現を優先していた。次の段階での改善項目と考えていた課題が、改めて実証実験で判明したのだ。伊藤中佐も理論からの想定できるこれらの課題については、早くから気づいており、改善法の研究に着手していた。
いくつかの実験の途中で、伊藤中佐が私に会いにやってきた。海軍というところは、中佐という階級であれば、大抵の無理はなんとかなる。この日も予約もしていないのに、空技廠の会議室を借りて、ジェットエンジンの実験中の私を会議室に呼び出したというわけだ。
「ねぇ、ちょっとまた教えてほしいことがあるんだけど。少し知恵を貸してくれないかな?」
当然、本気の相談事がなければ、やって来るはずがないと私もわかっていた。
「一号一型をもっと実用性のある電探に改善する件ですか? それとも、電探で海上の艦船を探知する方法についてですか?」
「察しが良いねぇ。話が早いのでそういう人は大好きだよ。もちろん今日の相談事は前部なんだよ」
いきなり、真面目な口調に変わる。
「まずは対空電探の改良案について少し教えてほしい。高度の測定方法と敵味方の区別方法について、いいアイデアはないだろうか」
全力でミリタリーマニアとしての記憶を思い出してみる。この時代でも既に実用化していた技術があるはずだ。ドイツのウルツブルグはアンテナを螺旋状に旋回させて、電波が強くなるところを検出して正確な高度の探知ができたはずだ。ウルツブルグは周波数500MHzあたりで、距離と高度の測定をしたと思う。つまり波長に換算すると50-60センチということだ。
「実験から判明したのは、遠距離で目標を探知する監視用の電探とは別に、もっと高精度で距離や高度を測定する電探が必要だということです。つまり、高周波の恐らく50センチ程度の波長を利用して、アンテナから放射される電波を上下または、螺旋状に首振りさせます。センチ波は指向性が強いので、方向がずれれば反射波の強度が増減します。これにより、最も強い反射の仰角と目標の距離を得ることができます。角度と距離がわかれば、三角関数の計算から目標の高度が計算できます。センチ波のアンテナは、お椀型又は、円環の一部を切り取った形状のアンテナを使用します。送受信を時間分割的に切り替えて兼用するアンテナが理想的ですね」
「やはりセンチ波となるとマグネトロンを使用することが必要になるね。周波数が高くなれば、距離の測定精度も向上することになるな。アンテナについては、かなり高周波になるから、おわんの反射鏡にして、焦点の真ん中から電波を送受信するということか。上下方向に、指向性の高い電波の束を振って、強い反射の戻る角度と距離から相手の高度を算定するということだな」
「別の方法としては、複数の受信アンテナに指向性を持たせて、感度の高い方向を上下左右でそれぞれ異なる方位となるように設置します。反射波を順次切り替えて受信すれば、どのアンテナの受信強度が最も高かったかで方向を知ることができますよ」
「物理的にアンテナの方位を変えるのではなく、電子的に切り替えるということだね」
次の質問について話しておこう。
「敵と味方の識別は、友軍機に識別用の無線発信器をつける必要があります。例えば、電探からの電波を受信すると、何らかの変調をして、同じ波長の電波を送信すると、単純な反射波とは、波形が変わります。変調法を振空すれば、表示管上で通常とは異なる反射映像として見えることになります。昼間は敵味方を目視で識別できるので敵機の近くまで誘導できれば良いですが、夜間戦闘では敵味方の識別は絶対に必要になりますよ」
「なるほど、敵と味方の識別には電波発信器を搭載する以外に方法はないのだな。私もそれ以外は思いつかなかったが、戦闘機の重量が増える要因になるので搭乗員はいやがるだろうなあ。たぶん、出力は小さくて単純な超短波の送受信機になるはずだから、機器の開発としてはあまり手間はかからないだろう。それよりも小型軽量化がどこまで可能になるかだね。向上の艦艇の探知については、解決法はあるのかね?」
「海上の目標探知のためには、波長を短くすることが必要です。波長が30センチや10センチの電探を開発できれば、海面の反射と艦船の反射を分離して海上の目標も探知できるようになるはずです。まあ艦艇の探知はもう少し波長が長くても探知可能と思えますが、どの程度の波長まで大丈夫かはわかりません。1メートル程度でも対艦艇の電探は可能な気もします」
「艦船の探知もセンチ波になるのだね。それも想定した範囲内だな。我々の手元には既にセンチ波を発信できるマグネトロンがあるから、技術としては実現が可能な範疇に入っているように思う。早速、実験装置を作って実験してみよう」
技研の技術者たちは、まずは航空機に搭載する識別装置の試作を開始した。大掛かりな装置ではないので、想定通り短時間で実験用の機材が完成した。実験で機能の確認はできたが、単座戦闘機にも搭載するための小型軽量化は継続開発となった。
並行して、センチ波長の探知機の実験が開始された。波長50センチと波長10センチのパルスを送信する実験用の送信回路をバラックで作って、アルミ板を加工したパラボラ形状のアンテナからパルス電波を送信して、海上や空中の目標の反射波を検出する実験を行った。対策に時間のかかる機械装置の試験と違って、部品さえあれば、短期間で回路を修正して実験が可能なことが、電子回路のいいところだ。センチ波による実験を開始して、すぐに超短波を安定的に受信できる回路が意外に難しいことが判明した。マグネトロンにより大電力の極超短波を発生することは可能となったが、意外にも安定した受信が難しかったのだ。
私のところにも受信の安定化方法について、伊藤中佐から相談が来た。
「鈴木くん、受信回路の安定化になにかいい方法はないですかねぇ?」
かつて電気系大学生の頃の知識を思い出してみる。
「相談されても、極超短波の受信回路と言うのは、あまりに専門的過ぎて、さすがに回路の構成などの細かなことはわかりませんよ。確か、受信回路には検波とヘテロダインによる受信回路があるはずですけど、どのあたりが不安定なのですか?」
「どうも検波回路が安定していないらしい。今の回路は真空管を使って検波をさせてから受信波の増幅をしているだが、その部分の動作が安定しないように思える」
「2つの機能を受信管で実現しようとしないで、それぞれ最適な部品で構成するように機能を分離すればいいじゃないですか。検波だったら鉱石を使用するとか、いくつかの実現方法があるはずです」
「鉱石の検波器は私も考えたのだが、艦政本部がいい顔をしないのだよ。鉱石検波器を使うと、かなり振動などに敏感になってしまうことがわかっている。しかしそれでは武人の蛮用に耐えられないだろうと言われているのだ。まあ、私自身も鉱石検波器を使うと少し敏感になりすぎるのではないかなとは思っている」
私は未来の知識から、半導体は将来性があり、信頼性は高いという思いがある。
「いやいや、それはおかしい。鉱石検波器をもっと真剣に開発すれば、真空管よりも信頼性があるはずですよ。なんと言っても基本が石なのですから、真空管のようにヒータが切れたり振動で電極の位置がずれたりしませんよ。絶対に鉱石検波で進めるべきだと思います」
「鉱石が石だからいいのか? あまり論理的な意見に聞こえないな。しかし、君がそれほど主張するならば、とりあえず実験してみよう。このままでは、開発が進展しないのも事実だ」
私もあまり強い根拠がないのだが、伊藤中佐も私に負けず劣らず論拠が薄弱なので、とにかく鉱石検波の回路をやってみようということになった。
ところが、実際に回路を作ろうにも鉱石の材料として、どのような金属が適しているのか判然としない。私自身の知識からはゲルマニウムやシリコンが候補になるのだが、この時期の日本での入手性を考慮すると何が望ましいのかがわからない。従来のラジオなどで使用されていた、方鉛鉱は基礎実験をしてみると極超短波の領域では性能が悪いことが分かった。技研に出入りしていた中島技師の人脈から、最終的に帝大の理学部に助けを求めることになった。
伊藤中佐が東大理学部を訪問すると、霜田という学生が既に鉱石検波器について研究していることが判明した。各種材料の実験を行っており、その研究データから黄鉄鉱とシリコンが良い特性を示して、候補となっているとのことだった。但し、高純度シリコンは入手困難であったため、必然的に黄鉄鉱を鉱石検波用に使用することが良いとの見解だった。
鉱石検波を使用した受信機は昭和15年9月に完成した。今まで使用してきた受信回路の検波回路を鉱石に変更して実験が直ちに開始された。受信回路は安定して、センチ波長により対象物の連続的な探知が可能となった。実験の結果、10センチ波と50センチ波長の電波が利用可能との結果が出た。当初の実験では、送受信アンテナとして、構造の簡単なラッパ型のアンテナが使用されていたが、私の意見に従って、直径2メートルのおわん型の軽合金製アンテナが作成された。やはり、パラボラ型アンテナにより大きく感度が向上することが確認できた。実験結果に基づき、海上の艦船の検知実験として、昭和15年10月には、50センチと10センチ波を利用して、東京湾に停泊していた赤城を目標として検出実験が行われて、検知に成功した。しかし、艦政本部は電波応用に対してきわめて反応が鈍く、それらの機器の搭載についても積極的ではなかった。
一方、センチ波を使用した航空機に対する探知実験も並行して実施され、お椀型のアンテナの角度を上下に首振りすることにより、航空機の概略高度が測定可能であることがわかった。この時の実験ではアンテナ専門の操作員を配置して、高角砲の旋回と上下動と同じ要領で手動により角度と方位角を変えていた。メートル波による長距離での電波探知機と30センチ波による高度と精密距離判定機能付き電波探知機を航空基地や空母に搭載すれば、敵機の要撃がかなり効率的になる。
この実験をしている最中に、漢口基地の迎撃戦の電探を利用した戦果が報告された。現実の戦果を前にして、誰も電探の有効性に疑念を抱くことはなくなった。航空本部長であった豊田中将の判断により、電探の開発を大幅に加速することが決定された。特に航空母艦や空母の直衛艦への搭載により、効果的な防空戦闘を行うことが目標とされた。これに対しては、艦政本部も異論を挟むわけにはいかない。
それから数カ月の間、航空機の探知実験を繰り返して、30センチ波による高度と距離測定の電探として完成度を増していった。パラボラアンテナは探知距離を延長するために、直径2.5メートルアンテナが作成されて、アンテナ台座は、25ミリ3連装機銃の銃座を流用して、機銃の代わりにアンテナを搭載した。電動モーターにより射撃指揮装置から機銃座を電動で回転、仰角制御できる機構も流用したので、アンテナ側の操作員が椅子に座って電探要員からのメータ指示に合わせるようにハンドルで操作することもできる。加えて、精度は悪くなるが電探室から電探要員がアンテナの向きを遠隔操作することも可能になった。
また水平線上の艦船もアンテナを向ければ、見通し範囲内であれば方位と距離を精密に測定できた。つまり艦砲の射撃照準にも使用できることになる。実際の使用法としては、一号一型で、目標を探知すると、探知した方位にパラボラアンテナを向ける。次に想定される目標の方位から、電探のスコープを見ながらアンテナを上下左右に振って、反射が大きくなる位置を探す。その時の迎え角と距離から高度を判定するわけだ。実際には、この方式では編隊飛行する目標に対しては、複数のポイントから反射波が戻ってきて、単純に最大のポイントが探せないなど、電探要員の操作の熟練が必要であった。
昭和16年1月になると、センチ波電探の各種の実験も完了して、試作装置から量産可能な装置と判定されて、一号二型電探という名称が付与された。同時に一号一型電探も改良された装置が実戦で使用可能と判定されて、小型軽量化と出力の増加により探知距離が増加していた。このメートル波を使用した電探の名称は改修版ということで、一号一型改二とされた。英国やドイツの警戒レーダーとこの装置の差異は、海外のレーダーが都市などの防衛のために、きわめて大きなアンテナを備えて遠距離で目標を探知することを目的としたのに対して、本機は基地の配備も可能として、分解すれば船や鉄道などにより、前線基地への輸送を可能としたことである。これも漢口基地での戦闘経験の結果、真っ先に狙われるのは前線基地だと当たり前のことが証明された結果だ。なお、従来の漢口基地で使用された型の電探は、一号一型改一と呼称されることになった。
味方機の識別装置も小型版が完成して目的通りの機能を確認できるようになった。空母での要撃戦を想定して、艦載機への搭載が優先された。但し、多数が配備されている既存の機体に対してはなかなか配備が進まなかった。
電探の開発が行われている間に、ちょっとした出来事があった。伊藤中佐が、ドイツに派遣される視察団に参加して訪独することになったのだ。
視察が決まると、伊藤中佐から呼び出しがあった。
「わざわざ来てもらってありがとう。僕も急な話で時間があまりないのだ。不在にする間の電探開発については、技術研究所の技師たちに、君の意見に従うように話しておいたから、君も自分の部下のつもりで彼らを指導してほしい。技術研究所でも君の予言はよく当たると話題になっているよ」
「いやいや、技研の技師は私の部下じゃないですから。まあ、中佐の留守の間に電探開発を進めておきますよ。最近の私の課題は、ジェットエンジンで飛ぶ高速機の実現なのですが、その高速機に小型の電探を載せて夜間でも昼間と同じように戦闘させることを考えています」
「なるほど、機載の電探で夜間行動か。可能性はありそうだね。ところで、私がドイツに行って、見てくるべきものについては、君からの助言は何かあるかい?」
ドイツに行ってくるとなれば当然、想定された質問だ。
「そんなことになると思って、メモを書いてきました。大きく分けて、まずは伊藤さんの専門の電探と電波の逆探の情報、それに電波で位置を計測する航法装置、電波で無人の機体を誘導する技術も進んでいるはずです。当然ですが、ドイツの電探は我々の一号電探よりも進んでいますよ。学ぶべきところがたくさんあると思います。特にウルツブルグという電探は一号二型の先を行っていると思います。しかし、ドイツはマグネトロンを持っていないので、センチ波の送信回路については遅れていると思います。一方、航空機に載せる小型電探はかなり進んでいます。欧州では夜間爆撃が盛んですからね。夜戦のための電波による航法装置もできていると思います。電探は英国が進んでいるはずなので、英国の情報が入手できればいいのですが、それはちょっと無理でしょう」
「なるほど、メモを作ってもらって助かったよ。ウルツブルグというのはドイツでも先端の電探だな。航空機搭載の小型電探は夜戦に使うことになるのか。他にも何かあるかね?」
「敵の電探が放射した電波をとらえて、電波発信源の位置をとらえる逆探知機はメトックスという装置があるはずです。間違いなく我が国よりも進歩しています。これも是非とも情報が欲しい装置です。あとは、潜水艦の音波探信儀ですね。まあ、今は音響技術研究部の仕事かもしれませんが、音波関係の技術も圧倒的にドイツが進んでいます。誘導爆弾も研究がされているはずです。発光信号を見ながら遠隔操作で有翼爆弾の落下方向を上下左右に制御して、目標を命中させる爆弾があるはずです。もっとも日本人に見せてくれる可能性はほとんどないでしょうね」
伊藤中佐が、私のメモを舐めるように読んでいる。
「やはり、君に話を聞いてよかった。こんなにも調べられることがあるのだな。改めて奮い立ったよ。それと、君が苦労しているジェットエンジンの情報も集めてみるよ」
最後に言っておくべき大切なことがある。
「ご存知のように昨年から欧州は戦争のまっ最中です。フランスはドイツに占領されましたが、英国とドイツの戦いは続いています。くれぐれも気をつけてください。恐らくヒトラーは、英国の侵略が行き詰まると、次は東ヨーロッパ方面へと侵略の方向を変える可能性があります。既に併合したチェコやポーランドの更なる先へと進むのです。東部方面がきな臭くなると、ソビエト経由で帰ってくることは難しいでしょう」
「やはり、ソ連から帰国できなくなる可能性もあるということなのか? 最後の帰国手段については、何か考えはあるかね?」
オタクの記憶をさらってみる。今回のドイツ視察団は、山下奉文大将を中心とする陸軍の訪問団は、要領よくシベリア鉄道で先に帰って、出遅れた海軍は随分苦労してスペインからアルゼンチン経由で帰ったはずだ。
「今回、陸軍もドイツに行くことになっていると思いますが、陸軍の視察団は山下大将を中心に、ドイツ国防軍からいろいろな情報を入手できる人脈があります。それでドイツ軍のソ連侵攻に対する軍事行動の前兆を察知できます。ところが海軍は情報の入手が遅れがちなのです。くれぐれも我が国の陸サンが帰る時に遅れを取らないように、注意してください。それで、最後の帰国手段ですが、大西洋を渡って南米に行く道が残ります。スペインから船か航空機を乗り継いで南米まで行ければ、そこから先は我が国の船が見つかるでしょう。アメリカ大陸から太平洋を船で渡るので時間がかかりますが、帰ってこられないことはないでしょう。まあ、陸軍と一緒にシベリア鉄道で帰るのが圧倒的に早道でしょうけど。とにかく、ドイツがソ連に牙をむく前の時期に、ソ連経由で帰ることができる時に帰ってきてください」
伊藤中佐がびっくりしたように顔を上げる。
「君は、当たり前のように言っているけど、今の話が事実ならば、ドイツのソ連への進攻なんてとんでもない軍事機密を喋っていることになるよ。まあ、君の予言は結構当たるということで、これ以上は詮索しないけどね。もちろん、今の話は覚えておく。ドイツから帰るときに苦労するのはごめんだからね」
伊藤中佐が欧州に旅立ったおかげで、私の電探開発への関与もしばらくは休憩になるだろう。もともと本職でもなく、専門知識があるわけでもないので、これからは技研や大学の専門家に頑張ってもらうことにしよう。
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