第6話 津波と防波堤

「真理さんは今何をされてるんですか?」

起きた時にかなりいい時間だったので昼食にカップラーメンを食べていた時、そんな質問をされた。

その質問は唐突……かもしれないけど、多分今までずっと思ってきたものなんだろう。

夜遅くまで海見てたし、女の子保護するし、昼間まで寝てるし。

まぁ、当然の疑問

まだ続いているであろう麺を無理やり歯で食いちぎって、無機質に答える。

「何も。ただタイミングを待ってただけ」

「何のです?」





「自殺のタイミングよ」


こんなこと自殺しようとしていた少女に言うべきことじゃないけど、今のうち言っておかなければならない。


何事にもタイミングがあって、それは私たちが望んだものとは限らない。

タイミングなんてのは勝手にやってくる。


でもそんなのはつまらない。

だから私は仕事を辞めて、自由に過ごして、「死」のタイミングを見つける。


では、「死」のタイミングはいつだろうと考えた時に思いついたのが、幸せな時だ。

幸せが最高潮、今までもこれからもこれ以上幸せなことは無い、そう思った時に死んでしまえば—— 幸せは永遠になる

幸せは私に固定されてどこまでも深く沈んで行けるのだ。


だから私の自殺は他の人が考えているものとは全然違う。

だから、言う。

「あなたはなんで死のうとしたの?」

「……振られたから」

少女、水城が少し怯えているのがわかる。

まぁ、こんなに変な人が目の前にいたらそれもそうなるのかもしれない。

でも、怯えて小さくなってる少女とは関係なしに私の感情は大きくなっていく。


この子はなんにも分かっていない


「あのね、あなたはで死んでいたとしたら後悔したと思うの。自殺を舐めないで。寂しさに駆られて死んでしまうのなんてつまらないし面白くないでしょ?それも他人の影響で死ぬなんて、バカバカしいわ。好きな子に振られたから?ネタにされたから?それがどうしたのよ。あなた多分人に依存するタイプでしょ?だがら捨てられた時悲しくなるのよ。人はどこまでも他人でそれ以上でもそれ以下でもないの。あなたはあなたよ。死ぬ時は他人に揺れ動かされた感情じゃなく、自分の感情で死にたいと思った時に死になさい。」

ああ、言ってることがぐちゃぐちゃだし、なんでこのタイミングで言ってしまったのだろう—— なんでこんな感情になっているのだろうか。

でも、続ける。

「あなたはまだ若いわ。これから初めてのことだって沢山あるし、楽しいことだって沢山あるの。その機会を放棄して今死んでしまうなんてありえないわ。私はね、自分の幸せを追求しない人は馬鹿だと思っているわ。なんのための人生?なんのために生きているの?人は誰しもが幸福になるべきなの、そしてその時になってから死になさい。そうでなければあなたは人じゃないわ。」

今まで私が私の耳元で騒いでいたせいか、周りがより一層静かになる。

少しの間の静寂。

それを切り裂いたのは少女の笑い声だった。

「ふふっ。真理さん頭おかしい」

「あっ。ごめんなんか熱くなっちゃって」

自分の意見をこうも堂々と言ったのは初めてかもしれない。私もまだ、初めてのことはあるんだと思えた。

でもなぜこの少女にはこんなにも素直に言えたのだろうという疑問が浮かんだが、すぐに理解する。


この少女が昔の私にすごく似ているから


「私あなたの目標手伝いますよ」

「っていうか、私と一緒にいる時が幸せって思えるようにします。」


少女が言った言葉はどこまで純粋で、眩しくて、辛い。


私はその言葉の意味を知っているけれど、それを口に出して問うのは怖い。


だからそれは私の奥の深いところまで閉じ込めておこう。



ずっと

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