第29話 東京へ
「じゃあまずは作戦会議だね! 私、いいこと思いついたの!」
リンはそう言うと自分の部屋に走って行き、科学館で開催している『夏休み
「これ、昨日図書館の
「「「「おおお!」」」」
「自由研究、もちろん私はもう終わってるけど、お兄ちゃんはまだだろうし、ここに子供だけの参加も大丈夫って書いてあるでしょ?」
「でもリン、これに行くって言うと、帰ってきた時に何か出来上がってないとまずいんじゃないのか?」
「お兄ちゃん」と、リンは僕の方を向き、「もう、そこは諦めて欲しい」と言った。
やっぱりそう来るか!
「だな!
「リーくん、スマホで
「リンリン、ガチそんなん簡単だぜ!」
リーくんがスマホで国立競技場までの行き先を調べる。どうやら国立競技場へ行くには、新幹線に乗り、
「乗り換え……子供だけで大丈夫かな……」
まさやんが不安そうに言う。
「大丈夫だって! ガッくん達、去年まで東京に住んでたんだし! な! ガっくん!」
「お、おう……」
リーくんに背中をバシバシ叩かれながら答えるけれど、僕だって本当は不安だ。東京に住んでいたとはいえ、電車に子どもだけで乗ることはあまりなかった気がする……。リーくんがスマホで調べた結果、僕の家から
「今調べた感じだと、出発の時間なんだけど、えっと、科学館の
リンが
「やるっきゃねえな」
リーくんが
「そうと決まれば! 俺っちコンビニでお金おろしてくるぜ!」
リーくんがコンビニに行っている間、僕たちは明日に向けての作戦会議を続けた。きっと僕たちならできる。そう信じて。明日、僕たちはいよいよ怪盗キューピーと対決する。
*
——決戦当日。
リンの作戦通り、お母さんは僕たちが科学館に行くことを
「本当に行くんだよね、東京」
まさやんが不安そうに僕に聞いてくる。僕は「うん」とだけ答えて駅までの道を歩いた。誰も
電車に乗って三つ目の駅。いよいよ新幹線の駅までついた僕たちは、駅の
「ガチで
リーくんが五人分の新幹線のチケットを僕たちに見せながらいうのを聞いて、もう、
僕たちはできるだけ目立たないように
「ガチ、子供だけで行くのな」と、
「ガチ、こんな
「うん」
「ガチ、楽しみな。ありがとな、ガッくん。東京行こうって言ってくれて」
「え?」
「いやさ、俺っちほぼほぼ家でゲームしてるか
「リーくん」
「あの頭のおかしい怪盗キューピーにぜってぇ勝って、みんなで帰ってこような」
「だね!」
いつの間にか僕たちのそばによって会話を聞いていた他のメンバーも、「うん」と笑顔で
僕とリンは入り口すぐそばの二人席へ。こうちゃんとまさやん、リーくんはちょうど家族連れが降りた後の三人席に離れて座る。東京まではだいたい一時間十五分。
「
僕の横を通り過ぎるときにリーくんがそう言ったのが聞こえたけど、僕はしないでおくことにした。僕までゲームをすると、僕の隣の
「お兄ちゃんもみんなとゲームしていいのに」
「べっつに。今そんな気分じゃないしってだけだし」
「ふうん」
「それよりも、なんでお父さんの作ってるシステムが悪いものなのか、結局わかんないままだな」
怪盗キューピーが言った「お前の作っているシステムは社会を
「そうなんだよね。いっぱい考えているんだけど。お兄ちゃんは、どう思う?」
探偵手帳をリュックの中から取り出して広げながらリンが僕に聞く。僕も昨日の夜、ずっと考えていたけれど、その答えは全然わからない。
「
「ふうん。でもさ、そんなに頭がいい人工知能があるなら勉強自体しなくて良くね?」
「え?」
「だって、計算ドリルとかやっても意味ないじゃん。そんなの自分で考えるより人工知能が計算すればいいんだし」
「お兄ちゃん……。もしかして、バカなの?」
「ああ、はいはい。どうせ僕はバカですよ」
「バカすぎて、思いつかなかった……多分、それが答えなんだと思う!」
「へ……?」
「そう言うことだよお兄ちゃん! 人工知能の頭が良くなりすぎると、人間は自分で考えなくてもいいんだよ! きっとそれを言いたいんだよ、怪盗キューピーは! そう考えると、
僕は金ピカピンの
「デジタル化が進めば人が少なくて
「なるほど〜。って、え? でも、それが
「なんでそんなものを悪って言うのか、そこまではわかんないけど。でも、今わかる答えは、それだよ。きっと。あっ! お兄ちゃん、あれ見て!」
リンが
「お兄ちゃん、富士山今日はあんなにきれいに見えるよ! これは絶対いいことがあるってことだよ! だってお母さんいつも言ってるもんね、富士山が見えたから今日はきっといい日になるねって! だからやっぱりさっきの答えはきっと合ってるよね!」
リンは僕に
「絶対そうだよ。大丈夫。お父さんの会社のシステムは僕たちで守ろう」
新幹線はヒューッと風を切り、僕たちを乗せて東京まで運んだ。
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