第28話 子供だけの限界
「リン! これっ!?」
「うん……」
「東京まで行かなきゃいけないってことだろ?!」
「うん、そうだよお兄ちゃん! もう、無理だよ。こんなの。ここまでたどり着いたのに、
いつもは強気なリンが、まるで小さな子供みたいに泣き出してしまった。いや、小さな子供みたいじゃない、リンはまだ小学二年生で、まだ、小さな子供なんだ……。でも、だからって、僕にはどうすることもできない。だって、子供だけで東京にいくだなんて絶対に無理だ……。
「わたしたちがっ……わたしたちがっ……子供って知ってて、こんな
僕たちはリンが泣くのをただ
くそっ! せっかくここまできたのに! くそっ! くそっ! くそっ!
みんなを巻き込んで、お母さんたちに
リンのすすり泣く声だけが聞こえるリビングで、僕たちは誰も何も言わないでしばらくそのままでいた。
その
「あのさぁ。もしかして、それ、俺っち何とかできるかもだぜ?」
「え?」
思わずリーくんの方を見て聞き返す僕に、リーくんは信じられないことを話し始めた。
「えっと、誰にも言わないで欲しいんだけどさ、俺っち実は
「「「「え……?」」」」
「いや、だからさ、俺っち、ゲーム
「てきな? って、リーくんそんなこと僕たちに一回も言ったことなかったじゃん!」
「あ、だって、ガッくん。ほら、俺っちでもちょっと恥ずかしいし、てきな? ガッくんも見てるっぽいしさ」
「え? ちょっと待って! 僕も見てるって?! なんでわかるの?!」
「や、オンラインでボイチャしながらフラバトしてる時、俺っちの
「うそ……。それって!? まさか!? リーリー?! いや、でも、リーリーは女の人だし……」
「ガッくん、それはボイスチェンジャーアプリ使ってんだわ。恥ずかしいじゃん、自分の声って」
リーくんはたまに通っているフリースクールの先生に
「リーリーって、あれでしょ?
「お、
「「「ガチで?!」」」
「お兄ちゃんたち、
ゲームを全くしないリンのために、リーくんは超人気なゲーム実況Ctuberで、とにかくすごく登録者数がいる、すごい人なんだと教える。
「登録者がいっぱいいると、どうして東京に行けるの?」
「リン、よく聞け。登録者数が多いと、
「最初にCtubeに登録した時とかはフリースクールの先生と
確かに、そんなに登録者がいれば広告収入だって
「行こうぜ! 東京。行って、怪盗キューピーのやつをやっつけようぜ! だってここまできたんだぜ? ここで
「リーくん……」
「それにガッくんも俺っちのCtube見てるし、俺っちの広告収入はガッくんが見た分も入ってんだぜ?」
「それなら、僕もリーリーチャンネル登録してる」
「僕も」
「ほら、まさやんも、こうちゃんもだし。だからさ! こりゃいくっきゃねぇだろ? 東京まで! ま、べつにぃ? やだって言うなら、俺っちひとりで国立競技場まで行くだけだし、いいんだけどさ。でも、みんなで行きたいじゃん! ここまできたんだし!」
「リーくん……」
僕はみんなの顔をみた。こうちゃんは、リーくんの言葉に「うんうん」
「リン、どうする?」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんが決めて」
僕はもう一度、みんなの顔を
僕は……。
そうだ、僕もここまできて、引き下がることなんて、できないよ!
「よし! 行こう! 東京国立競技場に! みんなで! そして怪盗キューピーをやっつけて、お父さんのシステムを守るんだ!」
僕たちは誰からともなく
「ようし! 待ってろよ! 怪盗キューピー! みんなで東京に行くぞ! セーノ!」
「「「「「ガッチーズ!」」」」」
僕たちは明日、子供だけで東京の国立競技場に向かい、そして必ず怪盗キューピーに打ち勝って見せる!
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