第9話 さらなる手がかり

 リンの部屋に僕たちがまた集合できたのは午後9時を過ぎていて、僕たちに残されたタイムリミットは66時間を切っていた。


「残り時間は66時間だけど、それももう半分過ぎちゃった! はやくこの先に進まなきゃ間に合わないよ」


「でもリンリン、この箱とそのポケベル、それ以外に何にも手がかりなんてないぜ?」


「うん」


「でも、これしかないんだから、絶対この二つの中に何かヒントがあるはずなんだよね。謎解なぞとき脱出ゲームとかもだいたい紙が何枚かあるだけでくタイプが多いし……」


 リンが箱を手にして考え込むと、それを見たまさやんが、「もっかいリーくんの動画を見たらどうかな?」と言った。


「天才! まさやん! 確かに動画をもっかいみて、何かヒントがないか探してみようよ!」


「おけまる! すぐにスマホのその動画出すわ!」


 リーくんがスマホに保存されている動画を再生してからみんなの真ん中に置く。のぞきこむ僕たち。時々リーくんのCtuberシーチューバー風の実況中継じっきょうちゅうけいが流れる中、画面の中にヒントはないかを探す。


「ガチでウケる。ガッくんびびりすぎじゃね?」


「うっ、うるさいなぁ。まさやんだって泣きそうな顔してるしっ!」


「だってこわかったんだもん」


「ヤッベ、こうちゃんメガネずれてね?」


「うん」


「もう! 真剣しんけんに見ててよね! あ……。そういえば、ここで光ってるけど……。これって、どうやって光らせてるんだろ? 箱がれる理由も音が出る理由もポケベルってことはわかるけど、この青い光が出るのはポケベルのせいじゃないよね?」


「箱に仕掛しかけがあるんじゃない?」


「それだ! まさやんえてる!」


 リンにほめめられてうれしいまさやんを横目よこめに僕は箱を手にとった。この箱に何か光る仕掛けがあるってこと? どっから見ても普通の箱にしか見えないや。


「お兄ちゃん何かわかる?」


「ううむ?」


「光ったって事はライトとかあると思うんだけどなぁ」


 リンにそう言われ、箱のふたを開けて中を見ているけれど、ただの白い内側があるだけで、何にもおかしなところはない。リーくんが「俺っちにも貸して」と言って見ているけど、リーくんも何も見つけれなかった。


「絶対何かあるはずなんだけどな」


 リンも箱を手に取って調べ始めるけど、今まで何回も調べた箱におかしなところは見つからない。


 そんな僕たちをだまって見ていたこうちゃんが、「めくれるんじゃない?」と声を出した。


「めくれる?」


「うん、箱の表紙みたいなとこ、めくってみるとか?」


「そうかっ! きっとそれだ! こうちゃん器用きようだし、めくってみてよ!」


 リンに言われ、こうちゃんが慎重しんちょうに箱の内側をめくり始める。つめではじっこを何回かひっかいていると、ペリッと内側の紙と箱の間に隙間すきまができた。


「あ……めくれそう」


 こうちゃんの手作業てさぎょうを静かに見つめる僕たち。


 こうちゃんは器用に、内側の紙を全部がした。できた紙は合計で7枚。真四角の紙が5枚に、半分に切れた蓋の部分の紙が2枚だった。リンが剥がした紙に何かメモのようなものを小さく書き込んでいる。


「こうしてどこの部分の紙かわかるようにしておかなきゃね!」


「「「「なるほど〜」」」」


「きっと、この紙の中に何かヒントがあるはずだよ! それに見てよお兄ちゃん達! 表の紙も剥がれそうだよ? こうちゃん、こっちもお願い! で、こうやって私が書いたみたいに書いておいてね!」


「うん」


「それにどうやって光らせたのかも、私、なんとなくわかっちゃった!」


「え? すごいなリン! どうやってなんだ?」


「ほら、この箱、少し厚みがあるでしょ? この中にLEDライトみたいな薄い電気が入っていて、きっと何かのセンサーで光るようになってたんだよ」


「「「「なるほど〜」」」」


「ふっ! 手の込んだことしてくれるじゃない! 怪盗キューピー!」


 リンが嬉しそうに言うと、僕たちもつられて笑顔になった。いつもはゲームをしてる時間だけど、そんなことよりもっと楽しいや!


「こんな手の込んだことするなんて、本当、見つけて欲しいかまってちゃんね!」







 

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