第2話 フラッグ・ウィン・ザ・バトル
玄関でリーくんと合流し家の中に入ると、もうすでに
「ガッくん遅かったね。こうちゃんとまだかなって話してたんだ」
「マジよかったぁ! もう少し遅かったら僕だけみんなとゲームできてなかった気がするわ! だってリーくんがゲーム始めたらキリがいいとこまで入れてくれなさそうだもん! 」
「ガチでそうかも! 俺っちもうゲームする気満々でコーラはママに持たせなかったし」
「やっぱり! ふう、めっちゃ走って帰ってきてまじで良かった!」
「うん」
こうちゃんの「うん」の声を聞きながら、僕は
あれ? そういえば?
「ママーズたちは?」
リビングには最近めっきり背が伸びて
「なんか、夕飯の買い出しに行きながら最近できたおしゃれなカフェに行くって言ってたよ?」
「うん」
「マジで!? 超ラッキーじゃん! 早速フラバト始めようぜっ!」
リーくんが言ってるフラバトというのは、僕たちがいつも遊んでいるオンラインゲーム『フラッグ・ウィン・ザ・バトル』のことで、まぁ、簡単に言えば頭についている
「あのね、それがね、実は、僕……。ごめん! 新シリーズダウンロードしてくるの忘れちゃった!」
「うそだろ!? あんなに昨日俺っちがダウンロード
「ほんとごめん〜! ほら、これ見てよ。残り時間三十分って……」
「うん」
「あああ、それはもうしょうがない。まさやんはダウンロードができるまでは見学だね!」
フラバトは新シリーズが始まるとダウンロードを完了させなくては遊ぶことができない。昨日の夜ボイスチャットであんなにモリーくんがうるさく言ってたのに、まさやんはたまーに、こういうドジをする。
「ガッくんのお母さんがWi-Fiをつなげてくれたから、きっとすぐダウンロードできると思ってるんだけど、あ、ダメだ。まだ二十九分かかるって……」
残念そうなまさやんは仕方ないとして、僕たち三人は早速ゲーム機を立ち上げた。
*
オンラインゲーム『フラッグ・ウィン・ザ・バトル』へようこそ!
これは、『世界で最も平和な国フラッグブル』の新しい王様になるための大会『デザイドキングトーナメント』です!
プレイヤーは、マイハンドボールという手の形をしたボールをアイテムを使って相手の頭の上に浮いているフラッグを取ります。取られた人は退場。だんだんプレイヤーが減っていく中、最後の一人となって、毎回場所が変わる
新たに未来シティも加わった新シリーズ!君こそが新しいKINGだ!
*
新シリーズのオープニング映像がはやく終わらないかなと待っている僕のゲーム機をのぞき込んで、「僕もみんなとティーしたかったな」とまさやんが残念そうにつぶやいた。
まさやんが言った『ティー』とは、フラッグを相手から取ることで、英語の『
「ドンマイ、まさやん! 大丈夫、お泊まり会は始まったばっかりだから!」
僕はまさやんに優しく声をかけたけれど、それでもまさやんは残念そうだった。
オープニング映像が終了して、リーくんの青いクマと、こうちゃんのクールなサムライと、僕のかっこいい戦士はスタート地点に降り立つ。ここからいよいよ新シリーズのバトルが始まる!
「ウヒョー! むっちゃ楽しみ!」
「うん」
「僕も今日みんなとやるのを楽しみにしてて、昨日ダウンロードしてからやってないんだ!」
今回のゴール地点、玉座はどうやら
「よっしいくかー!」
ゲームがスタートし、どんどん敵のフラッグをとっていくリーくん。さすが学校に行かずにゲームをしてるだけのことはある。でも、実は最強なのはこうちゃんだ。基本、こうちゃんは「うん」しか言わない。だがしかし、こうちゃんはプロ仕様のコントローラーを手にすると性格が変わって、むっちゃ最強こうちゃんに変身する。今日はまだ普通のコントローラーだからノーマルこうちゃんだ。
「ティーティーティー! ヒョー俺っち今日調子いいぜ!」
「あぶねあぶね、今のはガチで危なかったよね、助かったわこうちゃん!」
「うん」
青いクマが相手のフラッグを狙う。
超かっこいい戦士が
サムライは
なかなかの
「ダイビングアイテム」
「うおー! 俺っちすっかり忘れてた!」
「僕も!」
「うん」とだけまた言ったこうちゃんは、サムライの
こうちゃんすげぇ、いつの間に!?
リーくんの青いクマと僕の戦士は急いでそれをひろう。
画面に出ている残りプレーヤーは10人。
僕たちが3人だから、後7人だ。
僕たちは玉座のある滝壺へ急いだ。
この玉座の近くはものすごく危ない。ゴールが玉座ってわかってるから、終わりが近づくとプレーヤーがみんなここに集まるんだ。
隠れアイテムを上手に使って、相手を
青いクマが狙いを定めて、戦士がそれを上手に隠す。サムライは敵を見つけるとサクっとフラッグを取る。
「はいゲットー! これいけるんじゃね俺ら!」
「うん! いけるいける!」
「うん」
画面のプレーヤー数残り5。ということは後二人じゃないか!?
僕たちは
どこだどこだ、どこにいるんだあと二人!?
「ちょまっ!あと二人ということは、きっとそいつらチームだからこれは最終決戦じゃないか!」
リーくんの言葉に、僕の胸も
こうちゃんの指の動きも止まってる。
来る最終決戦のために、指に全集中をこめて、画面をくいいるように見てる。
どこだどこだ、あと二人、あと二人?!
僕も画面に集中する。
どこだどこだあと二人、あと二人……。
ゴクリと
僕のフラッグがどこからか飛んできたハンドで取られてしまった!
えぇ! ここまできたのに残念すぎるっ!!
「気をつけて、どっからきたか分かんなかった!」
すかさず二人に声をかける僕。
「うん」
二人にさらなる
「あっちはこっちをもう見つけてるってことだよなぁ。絶対ティーしてやるぜ!」
「うん」
「どこだどこだ、どっからきた?」
「うん」
僕たちはすごい
敵は僕たちの
くそっ!全然見つけれない!
背中を丸め、コントローラーを
「ティーーー!」
すげぇこうちゃん取ったよフラッグ、今日一番のティーじゃん!
「はい俺っちもティーーー!」
こうちゃんの動きにつられたリーくんも、もう一人のフラッグを取った。
ゲーム画面に『 KING 』の文字と共に青いクマとサムライが踊ってる。
くぅ! うらやましいっ!
僕も一緒にKINGになりたかったな、と思ったその時、玄関の呼び鈴がピンポーンとなった。
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