テレビ出演

「今日呼んだ理由はお金の配分をどうするかを決めるために集まってもらった。」


「それは半々でいいんじゃないんですか?」


「けれどおれはたいしてなにもやっていないからせっぱんではだめだ、だから7対3にしようと思っている。」


「廉さんがそれでいいならいいです。」と案外すぐに決まった。


この数日後俺らに重要な転機がやってきた。


「何ですかまた呼び出して?」


「地方のテレビ局からテレビに出演して歌ってほしいという依頼がきた。」


奏は嬉しそうに答えた。「いいですね。これにでたらみんなに知ってもらえますね。」


「俺はこれを断ろうか悩んでいる。」そう言うと奏はすぐに反論してきた。


「これはわたしたちにとってい大事な一歩です。ここで見逃したらまたいつ来るかわかりません。」


「たしかに奏の言っていることもわかるけれど今顔を出してしまうと印象が大きく残らない。十分人気が出たら顔を出してテレビに出てほしい。」


「私の顔を出したくないんだったら仮面でもして出たらいいじゃこれはでたほうがいいです。」


俺はその単純な考えが思いつかなかった。


「それ、めちゃくちゃいいね。じゃあ何の仮面にするか決めよう。」


「俺はトマトがいいと思う。」


この軽率な発言で場の空気が変わった。


奏を見ると鬼の形相をしてこっちを見ていた背筋が自然と伸びた。


「私はトマトはよくないと思います。他のにしましょう」


「はい」


「私はキツネがいいと思います。廉さんはいいと思いますよね?」


「はい」


「ではまたテレビの日に会いましょう朝七時に集合でいいですよね?」


「はい」


「では、また今度」


「はい」そう言って奏は帰っていった。


今日一つ気づいたことがある奏はトマトが大嫌いだ。これからは言わないようにしよう。


どうしてトマトが嫌いなんだろう、あんなにおいしい食べ物はこの世に100個ぐらいしか存在しないぞ。


そう頭の片隅で考えながら一緒に家に帰っていった。


そしていろいろな作業をしているうちにテレビに出演する日になってしまった。


俺は何もしないのになぜか緊張していた。そして当の本人は楽しそうに口笛を吹いてきて言った。


「あっ、廉さん仮面買ってきてくれましたか?」


そういろいろな用事とはこのことである。


色々見て回っていたので時間がかかってしまった。けれど奏に合う不思議だけれどどこか惹かれるきれいな仮面をみつけた。なぜそんなことがわかるかって?それはね鑑定を使ったんだよ


それで見つけたのがこれさ






キツネの仮面


[レア度] 希少


[スキル] 魅了 精神安定 能力向上(少)






どうだすごいだろ。おれがジャングルのような困難な道のりを乗り越えてついに見つけることができた代物だ。


これをかぶればミスをする心配もない。本番が待ち遠しい。


おっとこんな話をしているうちにバスが来る時間だ


「仮面は後で渡すよ」


「わかりました。じゃあのっていきましょう」


そうしてバスに乗車し三時間くらいかかって地方のテレビ局に到着した。


そして奏はリハーサルなどをしてついに本番となった。


「さあ始まりました。第46回歌唱祭、今回も司会は私が勤めさせて頂きます。まず最初の曲はレッドの「燃える」です。どうぞ」


司会者の司会とともに番組が始まった。緊張で汗が止まらないこんなことならあの仮面俺がつけておけばよかった。もうそんなことも言っていられない司会の腕がいいのか気づけば奏の番になっていた。絶対に奏も緊張しているんだろうなと思われている奏は


「これからどんな歌作ろうかなー」全然緊張していなかった。


そして間もなく始まる。


「さあ、ここでこれから絶対有名になるといっても過言ではない歌手、正体不明すべてが謎に包まれているフェカリスでメモリー」


そう言われると準備をしていた。私の舞台に光が集まり私が照らされた。


おっと皆メモリーってなんだって思う人もいると思う。それはな今日この日のために奏が一から作った初めての曲だ。この後この放送が終わった後にその動画も公開される予定だ。


奏の歌声はとてもきれいだった。その歌声から当時の状況など奏の悲しい思い、うれしい思いが込められていて観客も泣いていた。異次元だった。あまりのすごさに司会すらも泣いていた。


「ありがとうございました。本当に思いが込められていて私も泣いてしまいました。それぐらい素晴らしかったです。必ず売れますね。フェカリスさんありがとうございました。」


奏の曲を聞いた後から出てくる人はうまいんだと思うんだけど、あまり上手だと感じなくなってしまった。その後は特に何もなく終わっていった。


「どうでしたか廉さん」


帰っている途中俺に訪ねてきた。


「異次元だった。俺も泣いた。」


俺は正直に答えた。


「そうですか、とてもうれしいです。やっぱりテレビに出演してよかったですね。」


「ああ、テレビに出てよかったと思う。不思議に思ったんだけどこれから作曲のペースはどうするの?」


「そうですね。一週間に一本ペースで作っていってできれば二個作るみたいな感じです。早速アイデアが思いついたんで三日ぐらいで完成できます。」


「結構ハイペースで作るんだなもっとゆっくり時間をかけて作ってもいいんじゃないか?」


「大丈夫です。私音楽好きなんで」


「そうか、ならいっか」


これからの事について話し合っていた。この時はテレビの影響力がどれだけすごいか知らなかった。けれど帰りのバスで掲示板の反応を見ると思わず笑みが生まれた。


01


異次元の歌手現る。


02


俺、歌声聞いて泣いてしまった。わかるやついる?


03


02大丈夫俺も泣いた。


04


フェカリス、絶対推す


05


なぜか、顔が悪くてもあの歌声ですべてがプラスになっていく、最強歌姫現る。


06


なんか、音を操っているのかっていうぐらいえぐかった。


07


皆、その人のチャンネルを見つけてきた。


08


07マジでナイス


・・・


やっぱり、自分の身内が褒められているのを見ると思わず笑みがこぼれてしまう。


皆に残念だけど本当の古参第一号は俺なんだよなと優越感を浸りながら、景色を眺めていた。

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