敵か味方か

「最近、日本は事件が多いな。」


俺は今ニュースを見ていた。


「交通事故も増えてきているし、」


「え~続いてのニュースです。一週間前に〇〇県〇〇市で起こった放火事件の犯人が○〇警察署に自首をしてきました。放火の罪で今朝送検されたのは○○県○○市の自称フリーターの片宮 秀樹容疑者23歳です。警察によりますと有馬容疑者は先週の午後6時ごろに○○市のアパートに火をつけそのまま逃げ去った疑いがもたれています。調べに対し片宮被告は放火は認める一方動機については黙秘をしていたといいます。警察はアパートの住民と何らかのトラブルがあったのではと詳しく調べています。」


俺はこのニュースを見たとき目を疑った。


「これって、奏の住んでいた家のところじゃない?」


「何ですか?」


そう言って奏はテレビに目を移した。


「そうです。ここは私のアパートが燃やされたところです。しかもこの人私が助けてもらったときに廉さんが倒した人じゃないですか?」


「本当だ。あの時、俺が組織の名前を馬鹿にしていなきゃ、こんなことには。」


俺は今になって過去の行動を後悔していた。


「大丈夫です。アパートが燃えてしまった後どうなったか、すぐ病院に行ったので、あんまり覚えていないので、今日、見に行きませんか?」


「いいね。じゃあ昼ごろに向かおうか。」


******


俺は今奏が昔住んでいたアパートの跡地に向かって歩いている。ちょうど右を回った先にあるアパートの空き地に13人くらいの男がいた。


「あいつらはだれだ?」俺は思わず、体を隠してしまった。隣を見ると奏も同じように体を隠していた。


「あの方たちはどなたでしょう?」


「俺にもわかんないけど、すごい悪そうな人たちに見えるのは俺だけ?」


「大丈夫です。私も同じこと考えていました。あの人たちは何をしているんでしょう?」


こんなのわかるわけないだろうと思いながら


「わかんないけど、なぜか俺らに関係してそうだなとは思う。どうする、このまま今日はお暇する?」


「私もその考えには賛成です。じゃあ」帰りましょうと奏が言おうとしたとき


跡地にいる一人の男が俺らに気づき、


「ボス、いました。この二人組じゃないですか?」


「おい、勝規、こいつらであっているか?」


「はい、間違えないです。」


「お前ら、ちょっとこっちに来てくれないか?」とボスのような人に言われて俺らは言われるがままに跡地のほうへ歩いて行った。


「何ですか?」俺は恐る恐る尋ねた。


するといきなり総勢13人の男たちが俺たちに向かって頭を下げてきた。


「うちの部下が本当に申し訳ありませんでした。」


「「へっ?」」



******


~片宮視点~


俺は真っ赤に燃えているアパートを見ていた。


「俺はどうしてこんなことを」


ただただ後悔しか残っていなかった。自分の衝動にかられ行動し、他人の人生を壊した。


俺はこの光景を見ることができず、一目散に逃げ出してしまった。


ただただ走り続けた。


ただあの場から逃げるために、自分の罪から逃げるために走り続けた。


死ぬほど走り続け、目の前の公園のベンチに腰掛けた。


俺はただ呼吸を整えることも忘れるほど追い込まれていた。


すると一つの足音が聞こえてきた、


「コツコツコツコツ」


「ここにいたか、秀樹」


「ボス」そこにいたのは俺らプロソネチスのボス、郷本剛だった。


「話はすべて勝規に聞いた。お前はやってはやってはいけないことをした。平凡に生きている人たちの暮らしを奪ったんだ。これは許すことができない行いだ。」


「・・・」


「ただ、自分の信念を貫こうとする意志それは何一つ間違っちゃいない。ただ一つこんなちっぽけなことで仕返そうとしたことがお前の間違えだ。俺らの組織はどこにでもあるちっぽけなものと変わらねえ、そんなちっぽけなものを馬鹿にされて怒るやつにはなるな。本当に大切なものを馬鹿にされたときにだけ、仕返しが許されるんだ。


そしてそっとやちょっとの事では変わったりはしない自分の信念を持つ者だけが明日を生きていけるんだ。今お前にはするべきことがあるだろ。前に進め、俺らが先に行っている。たとえ俺らのとこへ来るのが一年いや100年たっても俺らはお前を必ず迎え入れてやる。」


「はい。」


俺は静かに泣いていた。


こんなことをしても、許しくれるボス。これからも必ずついていく、俺は改めてそう決心した。


******


~廉視点~


「このようなことがあったのだ。そして翌日あいつは自ら自首していったんだ。あいつの信念をみて俺らが動かないわけにはいかない。だからここに来たんだ。最初にうちの子分が本当に申し訳なかった。」


と言って男達は頭を下げた。そしてなんちゃらかんちゃらの後ろにいる人たちも一緒に頭を下げた。


「顔を上げてください。」


そう言うと男たちが顔を上げた。


「私のほうこそあなた方の組織を馬鹿にした非があります。本当にすいませんでした。」


そう言って俺は顔を下げた。


「顔を上げてください。」


そう言われ俺は顔を上げた。


「次に私たちもアパートの復興に協力させてください。お金もいりません。これは私たちなりの皆さんの償いです。そして今まで一緒に生きていてくれていた片宮への恩返しです。」


「奏、どうする?」


俺には決定権などないから奏に聞いた。


「わかりました。私から幸子おばあちゃんへお願いをします。」


「本当にありがとうございます。そして・・・本当にすいませんでした。もし何かあったらこちらに電話してください。ではして失礼します。」


そういって男達は帰っていった。


「めちゃくちゃ怖かった。」俺は急に気が抜けたのかその場に立ち伏せてしまった。


「けれどあの方たちの思いは伝わりました。幸子さんに話に行きましょう。」


そういって俺らは病院に行き、なんちゃらかんちゃら達の話をした。


「あたしゃあ、もうあそこに家を建てるつもりはないよ。ただ、あんたたちの好きにしな。私はお前らにあそこを譲るよ。好きに使いな。」


「幸子さん、いいのんですか?」


「ああ、あたしももう年だからね。若い子に未来を託していかないと、でも家を建てるんだったらあたしも住んでいいかね?」


「「ぜひ」」


俺たちはそう返事して部屋を出ていった。


「じゃあ、あの方たちに全部任せますか?」


「いや、ときどき俺らも手伝いに行こう。大本はあの人たちにやってもらうとして、じゃあかえって連絡するか。」


「そうですね。そろそろ廉さんのお母様がご飯を作ってくれている時間だと思うので帰りましょうか。」


俺は奏の言っていることに耳を傾け、俺らは家へ帰っていった。

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