熱い災い

ゆず、こっちであってたっけ?


『そうです。そこを右に行くと奏さんの家に着きます。』


分かった、ここを右に曲がると着くか。


俺はゆずの言っていたほうに歩いて行った。頭の片隅にかすかに残っている道の記憶を当てはめながら歩いている。


なぜ俺が奏さんの家に向かっているかというと


******


~先日~


俺はゆずと次の作戦に向けて計画を立てていた。


ここはやはり徐々に中を深めていくほうがいいと思うが。


『いえ、ここはもう攻めに行きましょう。』


ゆず、俺は高校は陰キャで女性とまともに話したこともないんだぞ。


『大丈夫ですよ。マスターが成長すればいいだけですから。』


でも、いきなりそれは


『大丈夫です。いけます。やりましょう。』


わかったよ。


<奏さん、明日って時間ありますか?>


<朝にバイトが入っていて、それが終わったら大丈夫ですよ。>


ゆず、どうする?


『いつも通っている小枝がいいと思います。あそこは話しやすい場所ですし、おしゃれとは言えないですが宇宙マニア感が伝わってくるお店も良さの一つだと思いますし。』


確かにな。俺も一回行ったことがあるけどあそこのコーヒーはおいしかったし。


<わかりました。近くにおいしいカフェがあるんでそこに行きましょう。僕が昼過ぎに迎えに行きます。>


<じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます。#^.^#)>


これはオッケーってことで言いのか?


『そうじゃないですか?』


俺は人生初のお誘いに成功して、興奮冷めやらぬ状態だった。俺の心はマグマが煮えたぎるようにドキドキしていた。


***


まあこう言うことがあって今俺は奏の家に向かっている感じだ。


ちょうど奏さんの家の前に行くと奏さんが手を振ってきた。


「あ、ここです。廉さん。」


「すいません、少し待たせてしまったかもしれません。」


「いえ、ちょうど今来たところです。」


「じゃあ、行きましょう。ここからちょっと歩いたところです。」


そう言って、俺らは歩き出した。


******


「ここです。」


「小枝ですか?すごい趣がありますね。」


奏さんは少し言葉に困ったかのように言っていた。


「ははは、初めて来る方はだれだってそう思います。けど味は絶品なんですよ。まあ、ここに立ち止まっているのもなんですし、、早速入っていきましょう。」


俺らは古臭い、いや趣のあるカフェ小枝に入り、俺はコーヒーとサンドウィッチを頼み、奏さんは真剣に悩んで結局俺と同じものを頼んだ。


「奏さん昨日の話の続きをしてください。」


「いいんですか?じゃあ次は私の第二のお父さんの話を・・・次はお兄ちゃんの・・・次は弟の・・・」


最近は新しいことの発見ばっかりだ。


今日新たに発見したことを言おうと思う。それは女子はおしゃべりということだ。


なぜかって?今日俺がカフェを頼んでから話した言葉は


・奏さん昨日の話を教えてください


・そうですよね


・いい方なんですね


の三つだけだなのに今の時刻は午後5時


カフェに入ったのは午後1時四時間で発した言葉はこれだけだぞ。


まあ俺のきょうの発見はどうでもいいか。


「奏さんもう日が暮れてきたので帰りましょうか。」


「そうですね。気づいたらこんな時間になってしまいましたね。」


俺らは小枝を後にし、奏さんの家へ歩いて行った。


もうすっかり闇に包まれたこの道路をしばらく歩いていると、ある地点を中心にほのかに明るくなっていった。


「あの右のところがやけに明るくなっていませんか?確かあそこには」


俺は今までの歩いてきた道を頭の中で振り返っていた。その時ふとあそこに何があったかを思い出した。


「奏さん」


「私の」


「「家」」


俺らはすぐに走り出した。俺らが走り出すと同時に空に煙が舞ってきた。


「パチパチパチ」


俺らはアパートに向かって走っていると木材が燃えるような音が聞こえてきた。


俺の額に汗が走った。家一つまたいでも感じてくる暑さ。


奏さんも暑さが伝わったのかどんどん顔色が悪くなっていっていた。


俺らがアパートに着いた時には火が全体を覆っていた。


その横にはそのアパートから逃げ出した人たちがただ茫然と燃えているアパートを見ていた。


すると奏がその人たちのもとへ走っていき


「みんな、無事に逃げることはできましたか?」


彼女の声から不安が伝わった。


「俺たちは無事逃げれたけど、幸子おばあちゃんがまだ中にいるんだ。幸子おばあちゃんがまだあの中に」


男の人が奏にそう話していた。


すると奏がアパートのほうへ走っていった。


「待て、奏」


俺は急いで止めるために声を荒らげ、俺は奏の手をつかんだ。


「話してください、幸子おばあちゃんを助けに行くんです。おばあちゃんはまだ生きています。」


「お前がいいたところで無駄だ、どうせ死ぬ人が一人増えるだけだ。」


「じゃあ、諦めろというんですか!」


「ああ」


「そんな」


奏は絶望した顔をしていた。


「奏は諦めろ、俺が助けに行く。そこのおじちゃん、水はどこで組むことができる?早く教えてくれ。」


「そこじゃ」と言って彼は指をさした。


俺はすぐにそこへ行って自分の体に水をぶちまけた。自分の体すべてを濡らし、


「奏、おばあちゃんはどこにいる?」


「一階の一番奥です。」


「わかった。ありがとう、ちょっとだけ待ってろ。俺が助けてくるから。」


そう言って俺は中へと走り出した。


「ゆずナビを頼む。」


『わかりました。現在の火の状況を見るとタイムリミットは2分です。おばあさんがどういった体制でいるかによって残り時間は変わりますがどれだけ多く見積もっても5分です。』


分かった。この奥の右の部屋か?


『そうだと思います。急いでください。先ほどよりも火の広がりが早くなってきました。このままだと戻れなくなります。』


言われなくてもわかってるよ。


俺は一番奥の部屋にたどり着きドアを開けようとしドアノブに触れようとすると、


「熱っ」


火事の影響でドアノブが熱られ、握ることすらできなくなっていた。


『マスター、今火事の影響で金具が暖められ、開けやすくなっています。思いっきり蹴とばしてください。』


わかった。おばあさん頼むからドアの前にはいないでくれ、そう思いながら俺はドアを思いっきりけった。


「バコッ」


俺はドアをぶっ壊し中に侵入することができた。


「おばあさん、おばあさん」


俺は必死に叫んだが返事が返ってくることはなく、探していくと、床でうずくまっていたおばあさんを見つけた。


おばあさんに意識はなく俺はおばあちゃんを背負い、部屋を出て、戻ろうとしたとき、火はあたりを埋め尽くしていた。


「まずい、どうすれば」


俺が諦めかけようとしているとき


『マスター、諦めるのはまだ早いですよ。さっきおばあさんの部屋に窓がありました。ここは一階です窓を割って外に脱出しましょう。』


ゆずの言葉で不意に正気に戻り、部屋の中に走っていった。ちょうどリビングのところに窓があった。


俺は外に出るためにドアを開けようとすると


『マスター、そのまま触ってしまうとやけどになってしまいます。』


危ねっ、もう少しで触る所だった。ありがとう。


俺はすぐに後ろに振り向き、ガラスを壊せるものを探した。


花瓶?テレビ?本?椅子これだと思い、俺はすぐに椅子をとり思いっきりガラスをたたいた。


『マスター急いでください。もう少しでこの建物ごと崩れてしまいます。』


分かっているよ。


「おばあちゃん、ちょっとだけ衝撃が来るけど気を付けてね。」


そう言って俺はおばあちゃんをおんぶし、窓に向かって走り出した。


『崩壊まで五』


やばいもう無理かも


『四』


いや急げ諦めるな。

俺は全速力で走った。


『三』


あとちょっと


『二』


俺は間を潜り抜けられるように姿勢をかがめてジャンプした。


『一』


「とどけー!」


『0』


俺はきれいに着地をした。

と同時に崩れていった。


「ガシャーン」


******


奏の目には涙があふれていた。


「おばあちゃんと廉さんはもう・・・」


私はただ流れてくる涙を止めることができなかった。


懐かしいおばあちゃん、助けてくれた廉さん、私は大切な人を二人もなくしてしまったのかもしれない。


「勝手に僕らを殺そうとしないでください。」


「廉さん?おばあちゃん?」


この先の私はどうなったか覚えていない。


いや、私は正確には覚えているけど、思い出したくない。廉さんの胸元に鼻水をつけてしまったことなんて思い出したくもない。


「いや、そんなことはなかった。」


私たちはあの後救急車で運ばれ、検査を受けた。おばあちゃんは重症ではなく、軽傷で、今安静にしているらしい。廉さんは以外にも重傷だったらしい。ちょっとやけどの跡ができていしまったらしい。


廉さんは女性に傷ができるのはまずいと思って、変わってくれたのかもしれない。


「奏ちゃんご飯できたよ。あと廉ちゃんも起こしてきてくれない?」


「はーい、わかりました。」


今、私はどこにいるのかってそれは


「起きてください。廉さん」


「う、ん?」


「奏?」


「ご飯できたらしいですよ。」


「わかった。ぐぅーぐぅー」


「起きろー」


私は今、廉さんの家に居候中です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る