埋もれた天才

俺はすぐに悲鳴が聞こえたほうに走っていった。


そして路地裏に入るとそこには1000年に一人の美女とまでは言わないが100年に一人の美女が柄の悪いお兄さん達に絡まれていた。


一瞬見て見ぬふりをしようかと迷ったけれど、自身を鼓舞し。男らの方へ向かって歩いていった。


「おい、お前らなにじているんだ!」


・・・なんでそこで噛むんだよ。せっかく頑張って声をはっていったっていうのに。


「お前には関係ない話だから大丈夫ですよ。」


ヤン、いや柄の悪いお兄さんに言われた。


良かった。かんだ事を笑わなかったから、特別になんとか丁寧に返そうとしているけど自分の本性を隠しきれずお前って言っていることは許してやる。


「いや、でもそこの女性は明らかに嫌がっているじゃないですか。やめてあげたほうがいいんじゃないですか?」


噛んだ俺に怖いものは何もない。そう思いながら話しかけた。


「チィッ、いちいちうるせーな、おいどうするこいつ」


「まあとりあえず喋られないようにすればいいっしょ」


わざとらしく舌打ちをして、俺のほうに近づいてきた。


「そうだな。ちょっと痛い目にあわせるか。」


二人は俺めがけて殴りにこようとしていた。けれど、不思議と怖さを感じなかった。


二人はゴブリンのように俺を殺しに来るような目ではないし、そんな威圧感も感じなかった。


しかも殴りかかってきたとき想像以上に拳がゆっくり動いているように・・・見えなかった。


「うがぁ」


俺は思いっきり腹パンをくらい、後ろによろけてしまった。けれど毎日トレーニングした成果が出たのか尻もちはつくことはなく、何とか持ちこたえることができた。


「なんだ、調子こいてきた割には随分弱いな。」


一人のチンピラがそういってきた。


俺はそのことに目もくれず


ステータスオープン


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


[名前]小林 廉

[年齢]23

[身長]160

[職業]無職

[称号]討伐者

[レベル]5

[力]12

[知力]20

[速さ]8

[防御]7

[魔力]0

[SP]60

[ユニークスキル]鑑定[極] ダンジョンマスター

[スキル]棒術 冷静


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


そうだ、今になって言うけど防御が二つ上がっていたんだ。まあ今はそんなことどうでもいいか。


ゆずステータスポイントを速さに20力に10防御に5振り分けてくれ。


『わかりました。SPを振り分けました。』


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


[名前]小林 廉

[年齢]30

[身長]160

[職業]無職

[称号]討伐者

[レベル]5

[力]22

[知力]20

[速さ]28

[防御]12

[魔力]0

[SP]25

[ユニークスキル]鑑定[極] ダンジョンマスター

[スキル]棒術 冷静


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


ここからが俺の反撃だ。


「俺はまだ死んでいないぞ。」


俺はあいつらのもとへ走り出した。そして慌てて殴ってくるチンピラの攻撃をよけ続けた。


「クソが、どうしてあたらないんだよ。ふざけんなよ、この雑魚が」


何度も殴りに来たがすべて躱すことができた。いい加減鬱陶しくなってきた俺はあいつらの溝を狙いフルスイングでぶん殴ってやった。


「バコッ」


「ドカァ」


そいつらは一発でダウンし、もう大丈夫だろうとしばらく待っていると生まれたての小鹿のように立ち上がり、逃げるかと思ったけれど、そいつらは逃げようとせず、その場に立ち止まり俺たちに向かって話しかけてきた。


「俺たちは戦い抜くそれが例えみじめだとしても、それがプロソネチスの決まり、いやボスとの約束だ。」


「なんだ?プロソネタス?なんかギリシャの偉人みたいな名前だけど?まあそんなグループ?組織?の名前なんかどうでもいいんだけど?もう女性に危害を加えるな。」


「・・・お前らは死んでも許さない。例え自分の身が滅びたとしても。」


あいつらはそういうと走り去って逃げていった。


あいつらが見えなくなると美女が俺のもとへ歩いてきて。


「あの大丈夫ですか?」


俺に話しかけてきた。


「あ、はい、全然大丈夫です。そちらこそ大丈夫ですか?」


「はい、わざわざ助けてくださりありがとうございました。」


表通りまで歩いていった。


俺はダメもとでその美女に鑑定をした。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


[名前] 佐藤 奏

[年齢]21

[身長]164

[称号] 一年に一人の美女 埋もれた天才

[レベル]1

[力]15

[知力]25

[速さ]45

[防御]15

[魔力]0

[運]45

[ユニークスキル] 極:作曲 極:歌唱

[スキル]


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


俺は思わず息をのんだ。


ゆず、どうしようこんな人材見たことないよ。


『眷属にしましょう。』


ゆずは俺に向かってそう話しかけてきた。


ゆず、そんな急に言われても絶対無理、いやできる限りの事はやってみる。


「あの、もしよければ家まで一緒に行きましょうか?べっ、別にやましい意味で言っているわけではないんです。さっき話しかけられたのを見るといろんな人からあんな風にされているんだと思います。なので男が一人いたほうがいいかな~っと思って、いや別にやましいわけじゃないですよ。」


俺はすべての力を振り絞り、話しかけた。


沈黙が続いた。もう諦めかけていたとき


「ありがとうございます。ぜひお願いします。」


と奏が笑顔で返事をしてくれた。


俺初めて女性と一対一で帰るかもしれない。ゆずどうしよう


『データにありません。何かデータがあったらよかったんですが、マスターの頭の中にはそのような情報はありません。』


頼むって、何とか、ドラマの記憶とかでもいいから引っ張りだしてくれって。


『何とかなります。流れに身を任せていきましょう。すいません少し眠くなってきたので。スリープモードに入ります。』


おやすみ・・・って違うって、どうしよう?もう流れに身を任せるしかないのか。


「じゃあ行きましょう。」


「はい」


もうそれでいこう、がんばれ俺


「お名前はなんて言うのですか?」


「私は小林廉と言います。廉と呼んでください。あなたは?」


「私は佐藤奏と言います。奏と呼んでください。」


「奏さんって何か悩みないんですか?」


「どうしてですか?」


「いや、さっきナンパされていて、あんな風にナンパされたらストレスとかたまるんじゃないかなって思って。」


「そうですね、ナンパは全然大丈夫です。もう慣れましたから。

そんなことは私には微塵もストレスにはなりません。

ただ悩みはあります。私は母に女で一つで育ててもらいました。

父は小さいころにどこかに行ってしまい、今もどこにいるかわかりません。父との思い出はこの今かけているネックレスだけです。そして3か月前今まで一緒に暮らしていた母が原因不明の病気になり、大学をやめて、アルバイトをして治療費を稼いでいます。今まで母と一緒にいたからここまで来ることができたんです。私はなんとしてでもお母さんを助けたいんで」


俺はあまりに壮絶な人生だと思い、気づけば歩くのを忘れていた。


「す。すいません、いきなりこんな話してしまって。けど少しすっきりしました。」


そう言って僕に併せて歩くのをやめて立ち止まった。


「奏さんはすごいですね。」


「どういう意味ですか?」


「俺なんかよりも強い信念をもって、一歩ずつ前に踏み出していて」


「そんなことありません。廉さんも人を助けようという信念をもって私を助けてくれたじゃないですか、もうすぐここを曲がったところが私の家です。」


「そうなんですか、すいません。いきなり立ち止まってしまって。行きましょう。」


そう言って俺らは歩き始めた。俺らが右を曲がってすぐ、奏さんが話し始めた。


「ここが私の家です。ここに住んでいる方はみんな優しい方ばかりなんですよ。

特に私の第二の親と言っても過言ではない幸子さんです。小さいころから母がいないとき、私の世話をしてくれて、私の大切な家族の一人です。他にもたくさんいるんですけど、今から話し始めると、日が昇ってきちゃうので、次合うときに紹介しますね。じゃあ、今日はありがとうございました。また、なんかあったら連絡しますのでTINE交換しましょう。」


「わかりました。」


そうして俺は奏さんと連絡先を交換して、自宅に向かって歩き始めた。


奏さんの姿を見ると、なんだか自分がちっぽけに感じてしまう。


俺は今まで逃げ続けていた。ミスを引きづり、今までずっと間違った方向に進んでいた。


今日から、いや今からは一歩ずつ正しい方向に進んでいきたい。


そういって家に帰ろうとして歩き始めてしばらくたった時


「がさ」


不意に後ろから物音がなった。


「ん、何の音だ?」


『私の音じゃないですか?』 


何だゆずかってか起きていたのか?


『スリープモードは1分48秒で済むので、だいぶ前から起きていましたよ。』


騙したのか?ゆずは


『そんなことありません。それよりさっきまで正しい方向に進んでいくって言っていたのにまさか帰る道を間違うとは、早速道を間違えているんじゃないんですか?』


今から間違わないんだよ。今はセーフ。ゆずはナビをしてくれ。


『わかりました。まずまっすぐ行って右でそのあとは・・・』


*****


廉が迷子になっているとき、一つの倉庫で不穏な二つの影がうごめきあっていた。


「お前、ほんとにこんなことするのか?お前、こんなことしたらボスに迷惑がかかるぞ。俺らはボスに拾えてもらって今ここにいるんだぞ。ボスの期待に応えねえと。」


「ああ、そのことは十二分に理解している。ただあいつらは俺らのいや、ボスの最も大切なものと言っても過言ではない、組織の名前を馬鹿にしたんだぞ。それだけは許せない。お前には申し訳ないけれど、昨日俺はあいつらの後を尾行して、女の家を特定した。俺はそこを燃やす。」


男の目は狂気に満ちていた。

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