第64話 予行練習その1
西蓮寺さんとの約束の二日前。俺は自宅でまったりしていた。
「ねぇ、このお菓子食べちゃっていいよね?」
「いいけど、なんでお前がここにいるんだよ」
侑李は無造作に足を伸ばして寛いでいた。
「別にいいじゃないの。幼馴染なんだから」
「今日、大事な予定があるんだけど」
「どうぞお構いなく」
侑李は居座る気満々の様子だ。
「本当はお前も興味あるんだろ。本当、スケベなやつだな」
「は、はぁ? 何よ。あんたにだけは言われたくないわよ。私のどこがスケベだっていうのよ。いつもそういう目でしか見られないあんたの方がスケベよ。いや、むっつりスケベよ」
「むっつりスケベなんて生温い。俺は貪欲なスケベだ」
「何を威張っているのよ。あんたには恥はないのか」
「はぁ、うるさい口だな。そんな悪い口は塞いでやるよ」
「ちょ、何を」
俺は侑李の顎を掴んで自分の唇に持っていく。
キスをする寸前のところでインターフォンが鳴ってしまう。
「あ、来ちゃった。迎えに行ってくる」
キスをされそうに鳴った侑李は力なく転げ落ちた。
「全く。心臓に悪いわ」
侑李が落ち着く間も無く俺の部屋にはゾロゾロと人が入り乱れることになる。
「お邪魔します。あ、侑李ちゃん来ていたんだ」
「ど、どうも。彩葉さん」
「やっぱり気になっちゃったんだね。分かるよ。その気持ち」
「そ、そんなんじゃありません」
「まぁ、見学という意味ではいいかもしれないけど」
「それよりも彩葉さんの後ろにいる人って……」
百合先輩が連れて来た人物。それは甘栗朱音である。
「また知らない人がいるじゃないの」
「俺の幼なじみです。さぁ、座って、座って」
侑李、百合先輩、甘栗さんという美少女が俺の部屋に集合した。
「ちょっと。高嗣。甘栗さんって西蓮寺さんの横にいる生徒会の書記の人でしょ? なんであんたと知り合いなのよ」
「まぁ、色々ありまして」
「色々って何よ。まさか手を出したりしていないでしょうね?」
俺は黙った。侑李は俺の胸ぐらを掴んで揺さぶった。
「ところで彩葉さん。あなた、今日私になんと言って誘ったかもう一度言ってもらえる?」
「この間のパーティーのお礼にホームパーティーをしようって誘ったけど?」
「私はてっきり彩葉さんの家でやるものだと思ったけど、どうしてよりにもよって佐伯くんの家に来る羽目になったのか説明してくれないかな?」
「その割には素直に来たじゃない。今更説明する必要ある?」
「ありません。この男がいるとロクな目にあいません。害悪です」
「甘栗さん。そんな褒めなくても」
「褒めていませんから。まぁ、これだけ人がいるならあなたも変なことしませんよね」
今から変なことをしようとしていることは言えなかった。
「ねぇ、高嗣。甘栗さんってこんなキャラだっけ? 私のイメージだと無口でクールなイメージだったと思うんだけど」
「人見知りなんだよ。慣れたらこんなもの」
「へ、へぇ。そうなんだ」
「それよりもお腹が空きました! 早くホームパーティーをしましょう。まさか何も用意していないなんてことはないですよね?」
甘栗さんの剣幕に俺は「もちろんだよ」とキッチンへ走った。
「タコはないけど、タコパくらいならできそうだな」
たこ焼き器を持って俺は部屋に戻る。
四人で細やかなタコパを始めた。
何も知らない甘栗さんは呑気にたこ焼きを食べる。
「なんですか?」
「いや、別に。それより美味しいですか?」
「タコが入っていないのはあれだけど美味しいわよ。それよりもこの部屋、やけに暗くない?」
「そうですか? 電気はつけていますけど」
「そう、なんでだろう。ずっと暗いような……」
パタリと甘栗さんは倒れこむように寝てしまった。
「え? なに? 甘栗さんどうしちゃったの?」
「寝ましたね」
「うん。寝た」
俺と百合先輩は不敵な笑みを浮かべた。
「ちょっと、あんたたち。何かしたの?」
「睡眠薬を少々」
「あんたまたそんなことを」
「入れたのは百合先輩だよ」
「彩葉さんが? どうしてそんなことを」
「いやー暴れられると困るかなって思って」
「いや、やることエグすぎでしょ」
「侑李ちゃんは見学してね。佐伯くん」
「ラジャー!」
俺は押し入れからあるものを取り出して行動に移した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます