第59話 彩葉の過去② ※百合先輩視点


 気を失っていた私に呼びかける声が耳に入った。


「いろちゃん。いろちゃんってば!」


 誰? 私を呼ぶ声がする。


「起きて! いろちゃん」


 ボーッと目を薄っすら開けるとそこには里帆ちゃんの姿があった。


「里帆ちゃん?」


「良かった。大丈夫?」


「あれ? 私、今までどうして」


 自分の身体を見ると服を着ていないことに気付く。

 それに口の中や下半身にドロッとした感触を感じる。


「あ、夢じゃなかったのね」


「いろちゃん。これってレイプだよね。誰がこんなことを?」


「サッカー部の連中よ。私、坂本くんに騙されたみたい」


「あの坂本くんが? 許せない。私、先生に言ってくる」


 里帆ちゃんが部室を出ようとしたが、私は腕を掴んだ。


「待って」


「いろちゃん?」


「私を一人にしないでよ」


「う、うん。とにかくタオル持って来る。早く洗った方がいいと思うから」


「ありがとう」


 里帆ちゃんは私の全身を綺麗に拭いてくれた。

 男の体液を余すことなく脱ぎ払ってくれたのだ。


「よし。身体の外は何とか取れたよ。問題は中のやつだけど」


「入っちゃったものは仕方がないよ。出来ないことを祈るしか……」


 その時だった。里帆ちゃんは私の股間に自身の舌を挿れたのだ。


「ちょ、里帆ちゃん。何を?」


「中に入ったやつを私が外に出してあげる」


「ちょ、いいって。そんなことをしても意味ないよ」


「でもやらないよりかはマシだよ。妊娠したら後が大変だよ」


「で、でも……」


 この瞬間、私は壊れた。

 男子から舐められた時は不快でしかなかったが、里帆ちゃんに舐められたこの瞬間は心地いいものに感じられたのだ。


「あ、あぁ。ダメ。イく!」


 プシャッと私の体液が股から放出された。それは里帆ちゃんの顔面に掛かってしまった。


「あ、ごめん。里帆ちゃん」


「大丈夫。でも、これで外に押し出せたよね?」


 里帆ちゃんは体液を掛けられながらもニッコリと笑ってくれた。その笑顔が堪らず愛おしかった。


「好き……」


「え?」


「里帆ちゃん。好きだよ」


「あ、ありがとう。私も好きだよ」


 この時からだった。

 私が男好きから女好きに変わった瞬間は。

 それからというものの里帆ちゃんの見る目が変わってしまう。

 ただの親友だったはずが恋愛対象として好きになっていく自分がいた。

 全てが可愛く見えていたのだ。

 それは私だけではなく里帆ちゃんにも変化があったようで人目を盗んで私たちはコッソリとキスをするようになった。

 それは学校内で場所を選ばずにするようになるほど。

 トイレでは勿論のこと、体育の授業中や登下校の最中など。

 多くのクラスメイトがいる教室内であろうとカーテンで顔を隠して唇を交わす。

 隠れてすることが刺激を感じていたのだ。

 そしてお互いの家に行き来するようになれば身体の関係にだって及んだ。


「里帆ちゃんの胸大きい」


「辞めてよ。恥ずかしい。いろちゃんだっていいサイズ感だよ?」


「私、まだまだだよ。ちょっと舐めさせてね。ペロ!」


「ヒャン。いきなり辞めてよ。もう、お返しだ」


 そう言って里帆ちゃんは私を押し倒して口の中に舌を入れた。


「ンフ。最高!」


 百合行為を楽しんで自分はもう普通の恋は戻れないと錯覚した。

 男なんてけがわらしいチンパンジーだ。

 そんなものより綺麗な女の子と恋を楽しんだ方が嬉しく感じる。

 裸同士で身体を重ねて女の子と愛し合う私は幸福感を覚えた。


「ねぇ、里帆ちゃん。私たちずっと一緒だよ」


「うん。私もいろちゃんとずっと一緒にいる」


 私たちは手を重ねあって愛を確かめ合う。

 この恋は永遠なんだと誓い合った。


「ねぇ、里帆ちゃん。一つ相談なんだけど、いいかな?」


「相談?」


「うん。実は復讐したいの。私をレイプしたオスチンパンジーたちに」


「そうだね。いろちゃんを虐めた罪は大きいよ。うん。私も協力する。それでどうするの?」


「ふふ。ちょっと面白いことを閃いちゃったんだよね。こんなことなんてどうかな?」


 私は自分の考えを里帆ちゃんに話した。


「へぇ、それは面白そうだね。それくらいしなきゃ割りに合わないし、良いと思うよ」


「ありがとう。じゃ、色々準備が必要だね」

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