第52話 解放
監禁部屋と言っても監禁されているという感覚は全くない。
仮眠を取ったり、軽食をしたり、トイレも不十なく行ける。
まるでホテルの一室のような快適さだった。
ただ、娯楽が全くないので時間の経過はゆっくり進むことがネックだ。
何もやることがなくなって時間を持て余すことになっていた。
「この部屋に入って三時間くらいか。パーティーはそろそろ終わっている頃かな?」
「今は丁度、片付けに入った頃です。間も無く終わる頃かと」
「じゃ、俺もそろそろ帰らないとな。北条さん、ここから出してもらえる?」
「それは無理な相談ですね。出たいというのであればギブアップと捉えてよろしいですか?」
「いや、ギブアップはしないよ。帰りたいから出してくれって言っているだけだ」
「そんな都合のいい話があると思いますか?」
「でも、このまま日を跨いだりしたら都合が悪いのはそっちじゃないんですか? 行方不明として捜索願を出されたら北条さんは監禁容疑で捕まります」
「それでも私は琴吹様のプライドを守りたい。その覚悟で私はここにいます」
「なるほど。俺の覚悟もそうだが、北条さんの覚悟も相当なものってことか。恐れ入ったよ」
さて。ここからどうすればいいだろうか。
お互いの決意は硬い。防戦一方な分、同じ展開がずっと続いていた。
ここから大きく展開する方法はあるのだろうか。
「北条さん。琴吹様がお呼びです」
北条さんの背後に別のメイドが声を掛ける。
「分かりました。すぐに向かいます。佐伯さん。少し席を外します。その間にギブアップの覚悟を決めて下さいよ」
そう言い残して北条さんはモニターから席を外した。
さて。俺はいつまでここにいればいいのだろうか。
当然、ギブアップするつもりはない。だが、それだと永遠と出られないことになる。
「まいったな」
ゴロッと俺はベッドに寝転んだ。
天井を見続けるしかない。
そうか。快適な空間という分、この監禁は何もすることがないというのが俺の精神を崩壊する方法なのかもしれない。
こんなところに永遠に居続ければ頭がおかしくなるのは目に見えていた。
「最悪だ」
北条さんが席を外して三十分後のことであった。
カシャンと扉の鍵が外れた音が聞こえた。
まさかと思い、扉の方に向かうと開いていた。
「佐伯さん。解放です。今すぐ出てきて下さい」
北条さんが戻ってきた。
解放? 一体、どういう風の吹き回しだろうか。
だが、出られるに越したことはない。
俺は階段を登り、地上に続く入口に向かう。
すると、そこには北条さんと西蓮寺さんが待っていたのだ。
「西蓮寺さん?」
「佐伯くん。私のメイドが勝手な真似をしたようで申し訳なかったわね。全部聞いたわ。私からお詫びをさせてもらうわ」
「いえ、別にたいしたことをされたわけじゃないので問題ないです」
「パーティーが終わる前に約束の日程を提示するって約束だったわね。スケジュールを確認した結果、次の祝日の昼から空いています」
「本当ですか。充分です」
「そう。じゃ、そういうことで日程を組みましょう。ちなみにどんなプレイをするのか決めてあるの?」
「いえ。まだ調整中です。でもとっておきのものを用意しますので楽しみにしていて下さい」
「私は全然楽しくないけど。どちらかと言えばあなたの方が楽しみなのでは?」
「そうかもしれませんね。でも安心して下さい。手荒な真似はしませんから。するとしても少し恥ずかしい思いをするだけです」
「その恥ずかしい思いが嫌なんだけど? まぁ、いいわ。一度約束をした私にも落ち度はある。そこは潔く受け入れます」
「ありがとうございます。西蓮寺さん。俺、凄く感激です」
「呉々もこの話は他言無用ですから。もし、誰かに言えば約束違反になりますから」
「はい。勿論です……あ」
しまった。甘栗さんに約束のことを話したままだ。
「どうしましたか?」
「いえ、なんでもありません。勿論、このことは二人の秘密です。じゃ、俺はそろそろお暇させていただきますんで」
部屋を出るまでの間、俺は終始北条さんに睨まれていた。
一番、よく思っていないのは彼女ではないだろうか。
約束が遂行されるまでヒヤヒヤが収まらない日が続くことだろう。
それでも俺はどんな困難が待ち受けようと必ず西蓮寺さんとの約束を果たそうと誓う。
西蓮寺邸からようやく解放された俺は肩を凝りつつ、帰っていく。
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